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ビジネスでサステナブルな地方創生に取り組む

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SB2019Tokyo

セッション「地域内連携・地域間連携によるサステナブル・レボリューションとは」

一過性の地方創生にはしない――社会の課題と地方にある素材を組み合わせてサステナブルな地方創生に取り組む企業がある。地域内でのサステナブル・レボリューションのセッションには、旅籠屋(東京・台東)の甲斐真社長、データドック(新潟県長岡市)の宇佐美浩一社長、里山デザイン(京都市)の中山慶共同創業者が登壇した。それぞれアプローチは異なるが、地方に人を呼び、仕事を生み出すことで持続可能な地域活性につなげている。(辻陽一郎)

ファミリーロッジ旅籠屋は、地方や郊外を中心に約70店舗を展開する小規模宿泊施設だ。地方では人口減・後継者不足もあり民宿などの宿泊施設が減ってきている。「地域の祭りに観光客が来ても、宿泊は大きな都市に行ってしまう」と甲斐さんは課題を語る。

「旅籠屋は素泊まりでレストランもない。町に出て食事をとり、買い物や遊びをすることで、地域にお金が落ちていく」。14室ほどと小規模のためニーズの少ない地方にも出せる。「地方創生には人がそこに滞在できることが大切。宿泊ができれば、一過性でない地域経済の活性になる」。

7割が首都圏にあるというデータセンターを、データドックは新潟県長岡市で始めた。「東京都では消費する総電力の約12%をデータセンターが使っている。コンピューターを冷やすのに冷房を使うためだ。エネルギーの観点だけでなく、首都圏にあることで災害リスクの問題もある」と宇佐美さんは指摘する。

そこで寒冷地ならではの雪を活用した空調設備を作った。寒い時期は外気を使い、残りの時期は保存した雪を使うことで冷房の代わりとなる。空調費が8割くらい安くなるという。「地域ならではの資産、特長を生かすことが必要だ」。

里山デザインは、人口が毎年100人減っている京都の北「京北地域」で、暮らしと近いツーリズムを行う。対象は98%が外国人だ。民家訪問や田舎の食事体験など観光コンテンツではなかったものに価値を与えて人を呼ぶ。

さらに中山さんはツーリズムと教育を結び付ける。「移住者が増えない要因に、子どもの教育への不安がある。田舎にいながら都市でも世界でもやっていける教育プログラムを作っている」。外国人観光客に高校生がボランティアガイドをするなど、英語教室に通わなくても、本当にグローバルなマインドを育てることができるという。

地域というとネガティブな情報ばかりが見え隠れするが、地方だからこそ潜在的な可能性が埋もれていることに目をつけて、地方創生の掛け声だけでなく、事業の発展につなげている事例だ。

辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

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