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福島・浪江町で進む「EV×自然エネ」のまちづくり

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SB2019Tokyo

セッション「次世代モビリティが担う"地方創生"への貢献」

福島県浪江町では、東日本大震災からの復興計画の大きな柱として、電気自動車(以下:EV)と自然エネルギーを活用したスマートコミュニティ計画が進む。自然エネでEVを充電し浪江町の公共交通として活用するほか、公共施設の電源として活用するなどEVが交通とエネルギーをつなぐ。企業とも連携し、日産自動車の使用済みEV蓄電池を再製品化するフォーアールエナジー(横浜市)が昨年、浪江事業所を開設するなど、産業・雇用の創出も期待されている。(箕輪弥生)

EVがつなぐスマートコミュニティを目指して――福島・浪江町

経済産業省は昨年、2050年までに日本の自動車メーカーが国内外で販売する乗用車の新車を、全てEVなど「電動車」とする目標を打ち出した。「次世代モビリティが担う"地方創生"への貢献」をテーマに行われた「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」のセッション進行役を務めた田中信康ESGプロデューサーは、これを「100年に1度の変革期」と表現し、次世代のモビリティをどう地方創生につなげていくか浪江町の事例を紹介しながら議論したいと口火を切った。

東日本大震災前の浪江町は21,000人の人口を抱える町だったが、現在はそのうち5%程度しか戻ってきておらず、高齢化や公共交通がないなどの多くの問題を抱える。そこで町では地域課題を解決する方法として、中心部に町の主要インフラを集中させてEVを使ってつなぐ街づくりを展開する。「大規模なシステムで需給を調整して電力の最適化をはかるスマートコミュニティは浪江にはなじまず、町民に理解されない」(本間茂行 浪江町副町長)と考えたからだ。

浪江町の復興計画では、太陽光などの自然エネルギーでEVを充電して、EVによるカーシェアリングや乗り合いタクシー、町の拠点をつなぐ自動運転を計画するほか、EVから公共施設へ給電を行い、非常時の電源としても活用する。

この計画は、福島の浜通り地域の産業基盤の構築を目指す経済産業省の「福島イノベーション・コースト構想」を背景に、EVに力を入れる日産自動車や、EVの蓄電池の二次利用を進めるフォーアールエナジー(日産と住友商事の合弁会社)などのパートナーが連携して進めている。

諸永裕一 経済産業省 福島新産業・雇用創出推進室 室長は「将来の街の姿を一緒になって考えてくれる企業と一緒になって進めることが重要」と話す。

新たなモビリティの可能性が作り出す1歩先の未来を実現

「浪江町の故・馬場有前町長が横浜の日産自動車本社に来た時のことは忘れない」と、牧野英治フォーアールエナジー社長は振り返る。「原発に依存しない自然エネのまちづくり」という町の未来像が自社の方向性とぴったりと一致し、協力体制がスタートした。

同社は日産自動車「リーフ」の使用済み蓄電池の再製品化を進めており、今年3月には世界初となる日産自動車の使用済バッテリーを活用した50kwの急速充電器も町内に設置する。

同社は2018年に浪江町に自社工場を作り、製造だけでなく開発拠点も担う。同社の牧野社長は「今後EVが拡大してくると、バッテリーの原材料が不足し電池の二次使用をしないとEV業界がなりたたない」と話す。同社では浪江出身の若者を含め10名を雇用し、今後も事業の拡大と共に雇用も増やしていく意向だ。

日産自動車も浪江町の職員と話し合いを重ね、町での交通とエネルギーを統合したプラットフォーム作りを模索する。豊増俊一 日産自動車フェローは「電動化、自動化、通信の進化などをとらえた新たなモビリティの可能性を提案したい」と話す。

「復興は元に戻すのではなく、新しいエネルギー・まちづくり計画をたて、世界に発信していきたい」と本間副町長が言うように、浪江町は進化するモビリティが作る未来を発信する先進的拠点になりつつある。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

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