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地方創生と観光――新たな関係を考える

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SB 2018 Tokyo

モア・トゥリーズの水谷氏、日本エコツーリズム協会の辻野氏、JTBの池田氏、美瑛町の佐竹氏

サステナブル・ブランド国際会議2018東京では旅と観光の専門家3人が、「2030年に向けてあるべきGood Destinationを考える 地方創生と観光――新たな関係を考える」をテーマに語り合った。ファシリテーターは、一般社団法人モア・トゥリーズの水谷伸吉事務局長が務めた。(瀬戸内千代)

ヤフーに勤め、現在、美瑛町政策調整課に出向し課長補佐として働く佐竹正範氏は、美瑛町で積極的に町の人と交流して、地域の宝を探っている。町全域で無秩序な開発を禁止するなど観光資源としての「美しい景観」の保全に熱心な美瑛町だが、観光客の属性や人数といった詳細には無関心だった。そこで佐竹氏は今、データ収集と分析に力を入れている。

迎え入れる側の幸せも「良い旅」の条件

NPO日本エコツーリズム協会の辻野啓一事務局長はハワイ在住の経験がある。ハワイでは徹底したヒアリングやデータ解析と同時に、重要な指標として「住民幸福度」も測っていたと語った。その、旅行者と住民の利害バランスを最重視する姿勢には、登壇者からも感嘆の声が上がった。

佐竹氏の暮らす美瑛町では、農地にたたずむ美しい大木に観光客が殺到した結果、仕事に支障が出て、木を切らざるを得なかった住民がいたという。

JTBグループ本社観光戦略チームの池田伸之氏は、海外観光客数ランキングを約10年で20位以上駆け上がり昨年4位となった日本のインバウンドに期待を込めた。日本では、2019年の釜石のラグビーワールドカップを皮切りに、東京五輪、関西ワールドマスターズゲームズと3年連続でビッグイベントが開催される。ただ池田氏も「沢山の人が来れば良いというものではない」と強調し、環境共生型の観光で地域に貢献する構想を語った。

辻野氏は、青森・奥入瀬渓流のコケ愛好家向けツアーや三重県鳥羽市の海女小屋の海女ランチなどエコツアーの成功事例を紹介し、環境の魅力に加えて、ガイドの力量や海女さんの人柄など、人の魅力も大切な要素であることを語った。

瀬戸内 千代 (せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。