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音のバリアフリーを目指す「ミライスピーカー」とは

JALは1月から、国内14空港のアナウンス用スピーカーとして「ミライスピーカー」を導入した。同スピーカーは特殊な内部構造と形状により、耳が聴こえにくい高齢者などにも声が届きやすい。近年、空港だけでなく、銀行や企業、介護施設などにも採用されている。開発したサウンドファン(東京・台東)の佐藤和則代表は「『音』による情報を損なわず伝えることができ、災害時や緊急時にも有効だと考えている」と話す。(オルタナ編集部=沖本啓一)

左手前がミライスピーカー(福岡空港JALカウンター)

日本補聴器工業会2015調査報告によれば、日本人の9人に一人が、毎日の暮らしの中で「聴こえにくい」という困難を抱えている。「ミライスピーカー」は、既存の音を押し出すスピーカーとは異なり、内部の湾曲した板から音が飛び出すよう特殊な設計がされている。これにより「聴こえ」の問題を抱える人にも音が届きやすい。

JALは2016年、羽田空港に「ミライスピーカー」を設置し、2018年1月には福岡空港や熊本空港など、国内14空港へと導入を拡大した。「聴こえ」に不安を持つ利用者に対して、筆談では複数への案内が難しい。また、耳が不自由な人は外見で判断することができないので、能動的な手助けがしにくいなど、同社は音に関する課題を抱えていた。「ミライスピーカー」はそのような場面でも「声が耳に飛び込んできて聞き取りやすい」と好評だ。

「実際に運用する中で、雑踏の中でもアナウンスが遠くまで届くと実感しています。一方でスピーカーの近くでも音量感が一定で、不快に感じません。全ての空港利用者にメリットがあります」と、同社は説明する。

羽田での2年間の実用を経て、JALが追加導入の判断を下した、その効果は確かなものだ。現在は、りそな銀行、野村證券のセミナー会場、第一生命の会議室、教会や福祉施設などにも普及している。小型化、大型化、軽量化、発券機やロボットへの組み込みなど、今後の展開にも意欲的だ。「音のバリアフリー社会を広めることで、音による情報を損なうことなく多くの人に伝えることができます。落語や漫才などのエンターテインメントの提供、災害時や緊急時にも有効だと考えています」(佐藤代表)

「良い音」とはどのような音だろうか。ピュアオーディオの世界なら「高音が伸びる」「音場が広い」などの答えが返ってくる。これらは「マイクで拾った音を如何に忠実にスピーカー等で再現し、綺麗に聴こえるか」という基準で語られている。

佐藤代表は「従来は、人間の耳が良いという前提で機材開発をしていました。しかし私たちは、人間の耳を基準にして、どうすれば明瞭に音が聞こえるかというように、180度視点を変えたのです」と説明する。

開発のきっかけは、佐藤代表が「老人性難聴の方には蓄音機の音が聴こえやすい」と知ったことだった。蓄音機をヒントに作った試作機で老人性難聴の実父に音を聴かせたところ、補聴器なしでも良く聴こえた。

個々の人を中心として、アイデアと技術で多様化に対応する社会づくりを推進する。「ミライスピーカー」が目指す「良い音」は、人と人の生活に寄り添った優しい音だ。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

オルタナ編集部
好きな食べ物は鯖の味噌煮。