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LIXIL、2020年までに1億人の衛生環境を改善へ

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ルワンダでSaToを紹介するジム・マクヘール・ソーシャルトイレット部SaTo事業開発統括責任者

LIXILグループはトイレ事業を通した社会課題解決ビジネスを本格化させた。今年10月にはソーシャルトイレット部を新設した。LIXILの調査では、2015年のトイレの不備による経済・人的損失は約22兆円で、国際的な衛生環境への対策が遅れている。同社は2020年までに1億人の衛生環境の改善を目指し、UNICEFなどと協働して東南アジアや東アフリカで積極的に事業を進める方針だ。

UNICEFによると、下痢性疾患で亡くなる乳幼児の数は1日に800人以上にのぼる。トイレの不整備による問題は健康問題だけにとどまらず、学校にトイレが整備されてないことが教育の機会を奪うこともある。

月経時に学校を休んだり、場合によっては退学を選ぶ女生徒もいる。遠くのトイレに行く際に暴行を受ける事例もある。下痢などによる生産性の低下や医療費の増大は途上国の発展を遅らせる要因だ。

衛生環境の未整備による人的・経済的損失が最も多い地域はアジア太平洋地域といわれ、金額にすると17兆円に及ぶ。国際協力機構(JICA)南アジア部の松本勝男・次長は、「世界で最も衛生問題で損失の多いインドでは、野外排泄が文化やコミュニケーションの場となっており対策が容易ではない」と話す。

LIXILはBOP層へのビジネス展開に本腰を入れており、2013年にグローバルコンパクトに署名したことをきっかけに今年、12名の社員が所属するソーシャルトイレット部を新設。現在、簡易式トイレ「SaTo(Safe Toilet/安全なトイレ)」の途上国での普及に力を入れている。

SaToはプラスチック製で10年ほどの耐久年数があり、バングラデシュなどで現地生産されている。同国での販売価格は1台あたり2ドル。SaToは最初にビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成で開発され、現在はインドやウガンダ、ハイチなど世界14カ国で累計100万台が使用されている。

衛生課題の解決は同社のCSRの柱の一つでもある。LIXILの富田健介・常務役員渉外担当兼ソーシャルトイレット部部長は、「単なる社会貢献ではなくビジネスとして同事業を進めることで、持続可能な取り組みとなる」と強く語った。

衛生問題は、これまで国際会議においても致死率や感染率の高いエイズ対策などに比べて中心議題になることが少なく、ミレニアム開発目標でも未達成のままとなった。衛生分野の取り組みを進めるには、何よりも当事者である国や地域レベルでの意識改革が必要とされる。企業や先進国には、コミュニティと連携した衛生課題への対策が求められる。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。