• 公開日:2026.04.10
「どんな社会が美しいか?」 4社の女性リーダーと考えるウェルビーイング
  • 横田 伸治

「美しく生きるウェルビーイング社会をいかに創るべきか」。この壮大なテーマを掲げたサステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内のセッションでは、EVOLの前野マドカ氏がファシリテーターを務め、カンタス航空の上村祐美子氏、SOMPOホールディングスの小坂佳世子氏、オカムラの古賀麻衣氏が登壇した。

「私たちは今日、たまたま登壇者全員が女性となった。皆さん、どうかご自身の心に『どんな社会を美しいと感じるのか』『自分は何を実践していくのか』と問いかけながら聞いてみてほしい」。前野氏の投げかけから、対話がスタートした。

Day2 ブレイクアウト

ファシリテーター
前野マドカ・EVOL 代表取締役 CEO / 武蔵野大学 ウェルビーイング学部 客員教授

パネリスト
上村祐美子・カンタス航空 日本地区営業本部 スーパーバイザーフィールドセールス
小坂佳世子・SOMPOホールディングス 執行役員 グループ Deputy CSuO / 損害保険ジャパン 執行役員 CSuO
古賀麻衣・オカムラ お店のみらいを創造する研究所(“みせいくラボ”)

多様性と文化を尊重するオーストラリアの精神

上村祐美子氏

カンタス航空の上村氏は、世界の人や文化をつなぐ航空会社由来の視点からウェルビーイングを語った。同社は「プラネタリー(地球環境)」「ヒューマン(人権・多様性)」「カルチュラル(文化)」の3つの軸でウェルビーイングを整理し、バランスよくアプローチしている。

本社を置くオーストラリアのグレートバリアリーフの保全支援はもちろんのこと、特筆すべきはヒューマンとカルチュラル領域の取り組みだ。LGBTQIA+への支援を示すべく、機体の赤いロゴをレインボーカラーに変更した「プライドフライト」の運航や、先住民(アボリジナルピープル)のアーティストとコラボレーションした特別塗装機「Flying Art Series」を1994年から継続している。上村氏は「オーストラリアには、多様なバックグラウンドを持つ人々が違いを尊重し、共生する文化が根付いている。カンタス航空の取り組みは、このオーストラリアの精神そのもの」と語った。

130年のDNAで超高齢社会のウェルビーイングを

小坂佳世子氏

SOMPOホールディングスの小坂氏は、1888年創業の日本最古の火災保険会社「東京火災」を起源とする同社の歴史からひも解き、「江戸の火消しのように、お客さまを守り、街の課題を解決するDNAが私たちにはある」と述べた。

同グループは「”安心・安全・健康”であふれる未来へ」というパーパスを掲げ、2025年秋には超高齢社会における「健康・介護・老後資金」に関する課題解消を目指す新会社「SOMPOウェルビーイング」を設立。また、環境・福祉・美術の3つの公益財団法人を通じた人づくりなど社会関係資本の構築にも力を注いでおり、小坂氏は「これからも人の育成を大切にしながら、安心できる未来をつくっていきたい」と力を込めた。

「人を想い、場を創る」未来の店舗デザイン

古賀麻衣氏

オフィスや商業施設の空間づくりを手掛けるオカムラの古賀氏は、「お店のみらいを創造する研究所(みせいくラボ)」の活動を紹介。「お店は単にモノを売り買いする場所ではなく、人の暮らしをつくり、人と人がつながる場であるべき。そのために、お店づくりを通して未来の幸せな暮らしをつくりたい」と語った。

同ラボは現状の世間のトレンドを分析した上で、未来の店舗像について、店舗で働く人・消費者・商品の作り手・地域社会の4つの視点から、それぞれの行動仮説を描き出している。例えば、「買い物のついでに芝生でリラックスできる空間をつくる」、「AIへの代替によって労働時間を短縮した従業員が、特技を生かして店舗内で教室を開く」といった、まだ見ぬウェルビーイングのアイデアが膨らんでいる。

不完全さこそ価値になる時代

前野マドカ氏

後半のディスカッションでファシリテーターの前野氏は、「皆さんに、それぞれ『幸せですか?』とお聞きしたい」と直球の問いを投げかけた。上村氏は「仕事と生活のバランスを取り、自分らしさを見出せている今は幸せ」、小坂氏は「忙しくてバランスが悪い時期もあったが、50歳を過ぎても学ぶ機会に恵まれ、今の生活に満足している」、古賀氏も「家族が健康で、自分の機嫌の取り方が分かってきた今は幸せだ」と、三者三様の等身大の幸せを語った。

また会場の学生からは、「効率化や完璧さが求められる現代において、日本人が本来持っていた豊かな感性や余白をどう広げるか」と質問が飛んだ。これに対し古賀氏は「生成AIの台頭により、今後は『人間らしい不完全さ』や『失敗の積み重ね』こそがその人の価値になる時代が来る。だから安心して未来を迎えてほしい」と温かいエールを送った。

最後に前野氏が「当たり前にある幸せに気付くこと。そして、自分自身をご機嫌に保ちながら、世の中の全ての命が幸せな世界を目指して、自分たちにできることをやっていこう」と締めくくった。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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