
大型イベントや展示会の施工には、大量消費と大量廃棄の問題が付きまとう。「サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内」のランチセッションでは、本会議全体の会場設計・施工を統括したアートフリークと、会場の装飾制作を手掛けたユタカワンファブリカシステム、そして資源循環の推進支援を行うレコテックの3社が登壇。イベント業界の最前線で、いかに資源循環を実装していくのか、実践事例と直面する壁について議論が交わされた。
| DAY1 ランチセッション ファシリテーター 白川陽一・レコテック 事業開発 マネージャー パネリスト 小塩俊介・アートフリーク クリエイティブ統括本部 本部長 / 執行役員 野上慎介・ユタカワンファブリカシステム 営業部 Project Manager |
ごみの再利用にはトレーサビリティが必須

セッションの冒頭、レコテックの白川陽一氏は「温室効果ガス排出量の約半分は、資源の採取や採掘に由来している」と指摘し、脱炭素にはエネルギーと資源の両面からのアプローチが不可欠だと語った。世界では欧州のELV(使用済み自動車)規則案など、製品への再生材利用を義務化する動きが加速しており、トヨタ自動車が新型車への再生材利用率の目標を発表するなど、素材の再生技術が企業の新たな競争軸になりつつある。
しかし、企業がごみを確かな資源として再利用するには、ごみの品質、コスト、調達量といった情報に加え、「どこから来たごみか」というトレーサビリティ情報が必須となる。レコテックは、ごみの発生場所や重量、種類をデータ化し地図上で可視化するシステムを通じて、捨てる側と使う側をつなぎ、ごみを循環資源へと変えるインフラ構築に挑んでいるという。
空間デザインにおける再利用の挑戦

本会議の会場設計・施工を担ったアートフリークの小塩俊介氏は、企業の展示会など年間800件以上の仮設空間を制作する中で、業界特有の廃棄物課題に向き合ってきた。同社は、紙を積層した構造体を複数回の展示会で再利用する取り組みを実践しているが、安全確保上「(素材は)不燃材でなければならない」という厳しいルールの壁に直面したという。紙であっても不燃コーティングを施すとリサイクル工程で溶けなくなり、産業廃棄物として処理せざるを得ないジレンマがある。これを乗り越えるためには、独自の技術を持つ処理業者との出会いなど、新たなパートナーシップが鍵になるという。
また、アートフリークは今回のSB国際会議の「アクティベーションハブ」において、工事現場用の「単管」をスタイリッシュに活用した展示ブースを展開した。空間づくりにおけるリユース材の使用率や、イベント終了後の再利用率を数値化して提示することで、クライアントとの共通言語を生み出し、サーキュラリティを高める次なるアクションへとつなげている。
素材のシンプル化が生み出す循環

本会議の装飾を手掛けたユタカワンファブリカシステムの野上慎介氏は、アルミフレームに布を被せる施工方法「Onefabrica」を紹介した。強みは、製作したアイテムが完全にリユース可能であることに加え、構成素材がアルミニウム、ポリアセタール樹脂、ポリエステルファブリックの3種類のみと非常にシンプルである点だ。
アルミニウムは再生され、ファブリックは製鉄工程でのフォーミング抑制剤(添加物の一種)としてケミカルリサイクルされるほか、テーブルの天板へアップサイクルする実験も進んでいる。一方で、事業規模が拡大するにつれ、フレームと樹脂パーツを分離・解体する現場の作業負荷が高まり、リサイクル工程のボトルネックになりつつあるというリアルな課題も共有された。
ビジネス上のメリットにも直結
資源循環の取り組みがもたらす副次的な効果についても議論が深められた。白川氏は、リユースを前提としたシンプルな構造や事前の組み立て検証の徹底が、結果的に現場での作業時間を短縮し、作業員の肉体的な負荷軽減につながると指摘。野上氏や小塩氏もうなずき、環境への配慮が、コスト削減や労働環境の改善といったビジネス上のメリットにも直結することが強調された。
さらに小塩氏は、「多様な参加者が集うイベント会場は、新しい社会の在り方を試す絶好の実証実験の場だ」と語る。事実、今回の会場では資源循環だけでなく、色の識別が難しい色覚障がいのある人にも情報が伝わりやすいポスターデザインの検証など、インクルーシブなアプローチも導入された。
最後に白川氏が「SB国際会議という非日常の空間で試された資源循環や多様性への挑戦が、いずれ日常のサプライチェーンへと広がり、社会全体の仕組みを変えていく原動力になる」と期待を込め、セッションは幕を閉じた。
横田 伸治(よこた・しんじ)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。














