• 公開日:2026.03.03
「温暖化の影響」は本当か? 生成AIと環境省評価報告書で検証
  • 北村 和也
image credit: Unsplash

極端な暑さやドカ雪からホタテやカキの大量死や米の減収まで、「原因は地球温暖化の影響」と聞くことがよくある。しかし、実際はどうなのであろうか。

この興味深いテーマに対して、環境省とSOMPOインスティチュート・プラスは2026年2月、膨大な数の気候変動に関する文献を元にリポートを発表。気になる22の事象の約7割で、現在そして将来共に影響があるとされた。

気候変動の深刻な影響の連鎖を評価

リポートの元となった資料は、環境省が「最新でより広範な科学的知見を反映させた」とする、気候変動の総合的な影響評価をまとめた「第3次気候変動影響評価報告書」である。ほぼ5年に一度の作成であるが、今回引用された文献は前回の1.7倍に当たる過去最高の2186件となった。

第3次報告書では、「農業・林業・水産業」 、「水環境・水資源」、「自然生態系」 、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「国民生活・都市生活」の7つの分野で気候変動の影響を評価している。

気候変動に関する各要素の変化の関係の概要
(出典:環境省、第3次気候変動影響評価報告書)

温暖化の影響とは具体的に何であろうか。

上図では、左中段の「気温上昇」をきっかけに、それぞれ緑の矢印に沿って各種の事象が引き起こされている。海水温や海面水位の上昇や大気中の水蒸気増加につながり、高潮・高波・浸水リスクや台風の強度の上昇へ続く流れが見て取れる。

図の右側では、強い日射が、温室効果ガスを拡大させ、猛暑日を増やし、極端な大雨の増加の一方で、少雨やドカ雪を招いている。

これらの事象は、相互に作用、変化し、連鎖しているのがよくわかる。

中でも、特に影響が大きく、優先的に対応が必要な項目として、以下の項目が例として挙げられている。

◆農業分野:水稲の収量・品質低下や果樹の栽培適地の変化

◆水環境:渇水の増加や農業用水の不足

◆健康面:熱中症による救急搬送者数や死亡者数の増加

確かに、最近ニュースとしてよく登場するものばかりである。

生成AIで「温暖化の影響?」を整理・可視化

一方、大手損害保険会社シンクタンクであるSOMPOインスティチュート・プラスは、この環境省の評価報告書を使い、巷間(こうかん)取り上げられる「温暖化の影響」の科学的評価を整理して、分かりやすく可視化した。

面白いのは温暖化の影響の選び方で、生成AIを使って22の影響をそろえた。少し詳しく言うと、同一の指示文を3種類の生成AIに2回ずつ入力し、得られた回答を候補として整理した、とその選定過程を明らかにしている。

興味がある向きもいるはずなので、以下に3つの生成AIを明示しておく。

【使用したAI】 ChatGPT、Gemini、Copilot

この結果を、ネタ元の環境省の報告書に当てたわけで、「報告書の関連記載箇所を検索・抽出し、内容を整理・統合した。」とある。

結果は、以下の表になった。

「温暖化の影響?」と言われがちな22の事象に対する評価のまとめ
(SOMPOインスティチュート・プラス作成)

カテゴリーは環境省と違っているが、影響を見やすく分類したためである。

薄い空色のパートが「現在・将来とも肯定的」評価で、15の項目が当てはまる。つまり、温暖化の影響であると文献などでほぼ認められていることを意味する。これは全部で22の影響のうち7割弱になる。肯定的と言っても、もちろん良い影響ではなく、地球にとっては大半が困ったことである。

山火事や四季の変化との関連は未確定?

例えば、『健康・生活』で、

□暑熱による疾病や死亡率が増加

については、「まあそうだろう」と想像がつく。しかし、

□感染症が拡大 □メンタルや日常の健康状態に影響

に至ると、聞くだけで憂鬱(ゆううつ)にもなって来る。

また、『災害・防災』の

□洪水・河川氾濫が増加 □都市型水害・内水氾濫が増加 □土砂災害が増加

 『水・エネルギー』の

□渇水や水不足が増加

と続くと、すでに最近よくニュースで見ていながらも大変なことだと再確認することになる。

この他、やっぱりそうだったかと納得するのは、次の2つである。

□家畜の生産性が低下、□漁場変化や不漁が起きる

なぜなのかと理由を知りたくなるのは、こちらかもしれない。

□シカやイノシシが増加・生息領域が拡大

他のカテゴリーとして、「現在は未確定/将来は肯定的」と「現在将来とも未確定または不明」があり、それぞれ2項目と5項目が当てはまる。特に興味深いのは後者である。科学的に支持されているとはいえないカテゴリーになる。

あえて筆者の感覚でいえば、当然、温暖化の影響と思っていた次の2つ、

□山火事・森林火災の増加、□季節感が変化(四季を感じにくいなど)

に科学的な支持がないとは、少し驚いた。

□クマ被害が増加

では、温暖化の影響でドングリが不作になってクマが里に下りてきて、と勝手に想像を膨らませる。ぜひ今後の研究に注目したい。

災害報道に欠けている「気候変動の視点」

最後に、温暖化の影響が肯定的な2つの項目を環境省の評価書に立ち戻って確認しておきたい。(いずれも環境省の第3次気候変動影響評価報告書より引用)

左:2090~2099の暑熱による死亡率(2010~2019年に対する比)の増加

右:温度上昇と水稲の相対収量推定値

左図は、高温による死亡率の増加で、色が濃い(ここでは赤)ほどリスクが高くなっている。比率が現在から跳ね上がる多くが人口減少県で、高齢者の割合が高くなると顕著に死亡率が増えるとされる。高齢化が急速に進む日本では深刻な事態が予想される。

右図は、米の収穫量への影響である。産業革命前から1~2℃の上昇では大きな落ち込みは見られないが、2℃を越えると急速に収穫量が減り、3~4℃で半減することがわかる。現状の温度変化では何とか耐えているが、閾(しきい)値を超えると急落する可能性が高い。

日本人の命と主食は温暖化に強く影響を受けるのである。

今回、このテーマを取り上げたのには訳がある。

日頃のニュースや報道で、災害などが取り上げられる際、海外に比べ、温暖化の影響というコメントがあまりに少ないと感じるからである。かつてない猛暑、最大の台風被害、初の記録的豪雨などと伝えながら、温暖化が影響しているとほとんど言及していない。

災害慣れしていると言われる日本ではあるが、原因に触れなければ、ただ天災として諦めるだけになってしまう。日本で温暖化対策が海外に比べて盛り上がらず進まない原因の一つに、災害と温暖化が結び付いていないことがあるのではと危惧さえする。

今回の環境省とフォローする形のSOMPOインスティチュート・プラスの分析は、たいへん面白くもあり、ためにもなると評価をしたい。膨大な文献による根拠もあって信頼性も高いヒット作である。

深刻な事態は現在進行形で私たちの生死にさえ関わる。科学的なベースにのっとり、自信を持って温暖化との関連性を積極的に知らせてもらいたいと願う。

参照:

環境省
第3次気候変動影響評価報告書
https://www.env.go.jp/content/000377713.pdf

SOMPOインスティチュート・プラス
「温暖化の影響?」と言われがちな事象に、最新の評価報告書はどう答えているか
https://www.sompo-ri.co.jp/2026/02/18/21980
written by

北村 和也(きたむら・かずや)

日本再生可能エネルギー総合研究所代表、日本再生エネリンク代表取締役、埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作した後、1998年にドイツに留学。帰国後、バイオマス関係のベンチャービジネスなどに携わる。2011年に日本再生可能エネルギー総合研究所、2013年に日本再生エネリンクを設立。2019年、地域活性エネルギーリンク協議会の代表理事に就任。エネルギージャーナリストとして講演や執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作を手がけ、再生エネ普及のための情報収集と発信を行う。また再生エネや脱炭素化に関する民間企業へのコンサルティングや自治体のアドバイザーとなるほか、地域や自治体新電力の設立や事業支援など地域活性化のサポートを行う。

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