
ハッと息をのむメガソーラーの支援終了発表で年を越したエネルギー関係者は、明けた2026年、石油などの資源大国ベネズエラ、グリーンランドを巡るトランプ騒動に恐怖すら感じ、最後は、脱炭素に反する公約が並ぶ、納得しがたい総選挙にまで直面させられた。
こと脱炭素の実現に的(まと)を絞れば、今年のメインテーマはごくシンプルである。国や地方自治体、そしてカーボンニュートラル化を進める民間企業も合わせて、『地域共生』が前面に立つ。日本の脱炭素もやっと地域が主役の時代となった。
環境省の訴えから、政府方針に格上げ
2025年末に次々明らかにされた、政府のいわゆる「メガソーラー対策パッケージ」や環境省の「環境配慮契約法の基本方針の改訂」は、いずれも地域共生という観点で規制を強めている。
特に環境省は何年も前から、環境破壊につながるような再生可能エネルギー発電所の是正を各種の資料などで発信してきた。特設のWebサイトでは、「環境省は、地域における合意形成が図られ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する、地域共生型の再エネ導入を支援していきます。」と明言している。

こうした経緯を踏まえ、メガソーラー対策パッケージでは、「法令に違反する発電施設で発電された電力の調達を避けること」と明記。釧路や鴨川などで地元の反対運動を呼んでいる開発に対し、地域共生の観点からNOを突き付ける施策となっている。テレビのワイドショーなどで盛んに取り上げられるメガソーラーの「乱行」であるが、開発時の規制の難しさを背景に、電気を使う需要家としてのお役所サイドからも締め付けようというのが今回の狙いである。
実施の法的根拠としては、環境配慮契約法基本方針の変更を3月に閣議決定するとスケジュールを示している。変更には、国や地方自治体などの電力供給の入札を原則「総合評価落札方式」として、脱炭素や地域共生に資する発電所からの電力の評価を上げる支援も含まれる。
地域共生重視の方針に、さっそく地方自治体も呼応した。
北海道の鈴木直道知事が年初の会見で「法令に違反する施設で発電された電気は買わない」と表明したのである。釧路で問題を抱えるご当地でもあり、道の環境配慮契約法への対応の基本方針を書き換えるという。
「地域共生チェック」がもたらす民間への波及効果
今回、政府の本気度が見えるのは、民間での扱いにも言及しているところである。「再エネ電気の調達を行う民間企業や資金供給を行う金融機関に対しても、その社会的責任として、同様の対応を促していく」(対策パッケージ6ページ)と強い言葉で記載されている。「われわれ(政府)もやるから、民間さんも分かっているね」と言ったところであろうか。
これに対して、日本生命が購入する再生エネ電力について、自然環境の悪化など地域の住民などとのトラブルがある事業者を除く方針を決めた、と報じられた。国や自治体が、「法律違反」を基準とするのに対して、民間はその前の「トラブル」レベルでも動くことができる。ビジネスの観点から見れば、会社の評判や商品の売れ行きなどに直接響くリスクになりかねないからである。
報道では、大手企業では初めての対応とされているが、実際には、かなり前から地域共生への取り組みを行っている企業もある。

その一つが富士通だ。
同社は、2018年にRE100に加盟した脱炭素での先進企業であり、2020年には他の企業に先駆け、グループとして「再生可能エネルギー調達原則」を作成、発表している。
その中で以下のように、再生エネ電力調達における推奨条件が明記されている。
◆地域が賛同して開発・建設した発電設備であること:
発電設備のある地域に著しい環境影響を与えていないこと
(富士通、再生可能エネルギー調達原則 推奨要件)
まさに、今回の地域共生型が示されていると言ってよい。
実は、この他にも条件があるのだが、特に次のものは大変重要である。
◆地域社会に貢献できるような再エネ電源を選択すること:
例)再エネ電源を立地する地域の電力網から選択することによる電力の地産地消、再エネ電力の拡大に努めている発電事業者の支援
地域で作られた電源を使うことや地域の発電事業者から購入することを勧めている。ネガティブな電気を買わないことから一歩も二歩も進んで、『積極的な地域共生』といえる素晴らしい方針である。
原発にも求められる地域共生
再生エネの「地域共生」は、一気に民間に波及する可能性が高い。なぜなら、企業が再生エネを選ぶ際の基準そのものが厳格化しているからだ。
これは、今、脱炭素の取り組みを行っている企業の間の最大の関心事である「GHGプロトコルの改定」とも関連している。改定の主たるテーマは、スコープ2(自社の電力利用などによるCO2排出)の算出方法の見直しだ。FIT非化石証書の利用やアワリーマッチング(再生可能エネルギー由来の電力需給を1時間ごとに一致させること)の導入などが検討されており、改訂内容をテーマにしたセミナーに1000人単位の企業の担当者が集まっているほど注目されている。
特にアワリーマッチングは地域との親和性が重要とされる。日本生命が今回表明したように、地域共生に反する電気を買ったり、使ったりすることは、企業の評価を大きく下げるリスクとなる。
官民ともに地域共生で一致した2026年。例えば、こんなことが起きるだろう。
| ・電気がどこで作られ、施設設置で何があったかなどの情報が必ず求められること ・問題のある発電施設や事業者からの電気の価値が下がること ・需要側の責任もチェックされ、場合によって、企業の評価や製品へ影響すること ・電気の調達先に関して、小売電気事業者も需要側などから責任を追及されること |
ここで一つ、どうしても気になることがある。
地域共生の観点は、メガソーラーや再生エネ電源だけに課せられるものなのかということである。普通に考えれば、他の電源も含め、広く問われるのが自然である。
対策パッケージなどでは、確かに、地域共生を求める対象に、再生エネが冠(かんむり)として付いている。しかし、地域に暮らす人々にとって、再生エネの迷惑だけが、日々の生活などに望ましくない影響を与えるものではない。
こう考えると、いまだに広い範囲を、迷惑どころか、住むことさえできなくし、地震のたびに不安を感じさせ、稼働の賛否で地元をかき回す、そんな原発こそ、究極の地域共生チェックの対象となるべきではないであろうか。
脱炭素の取り組みが地域共生と連動する局面に転換した今、主役たる地域こそ我慢から脱して、強く自立する時代となったと言える。
| 【参照サイト】 地域共生型再エネと環境省の取組 https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/re_energy.html 富士通 広報note みんなでつくろう再エネの日!富士通の再生可能エネルギー利用に向けた取り組みをご紹介 https://note.com/fujitsu_pr/n/n8e30df069c8d |
北村 和也(きたむら・かずや)
日本再生可能エネルギー総合研究所代表、日本再生エネリンク代表取締役、埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授
民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作した後、1998年にドイツに留学。帰国後、バイオマス関係のベンチャービジネスなどに携わる。2011年に日本再生可能エネルギー総合研究所、2013年に日本再生エネリンクを設立。2019年、地域活性エネルギーリンク協議会の代表理事に就任。エネルギージャーナリストとして講演や執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作を手がけ、再生エネ普及のための情報収集と発信を行う。また再生エネや脱炭素化に関する民間企業へのコンサルティングや自治体のアドバイザーとなるほか、地域や自治体新電力の設立や事業支援など地域活性化のサポートを行う。














