• 公開日:2026.01.27
「奪い合わずシェアする地方創生へ」 2025年度SB-Japanフォーラム最終回
  • 横田 伸治

企業のサステナブル戦略を支援し、議論と実践の場を提供する法人コミュニティ「SB-Japanフォーラム」の2025年度最終回となる第5回が2026年1月20日に開催された。今回は「地方創生」をメインテーマに据え、トークセッションやグループワークが展開された。

都市と地方の人材交流を

フォーラム本編のテーマセッション「地方創生」では、サステナブル・ブランド国際会議で「地方創生カタリスト」を務めるエコッツェリア協会の田口真司氏がモデレーターとなり、東京大学先端科学技術研究センター特任専門員の日根(ひね)かがり氏、LINEヤフーコミュニケーションズの依田所花(よだ・じょはな)氏が登壇した。

田口真司氏

最初に、モデレーターの田口氏が自身の活動を紹介。エコッツェリア協会がフィールドとする東京駅周辺の「大丸有(大手町・丸の内・有楽町)」エリアは、就業人口35万人の「東京一極集中」の象徴的な場所だ。だからこそ、地方自治体から職員を受け入れたり、社会人向け講座「丸の内プラチナ大学」を通して都市部の人材を地域に派遣したりするなど、さまざまな地域とつながるための取り組みを行っているという。

(左から)日根かがり氏、依田所花氏

続いて日根氏は、「奪い合う地方創生からシェアする地方創生へ」と題してプレゼンテーションした。和歌山県東京事務所長として15年間、首都圏でのネットワーキング構築に尽力した経験から、自治体が苦手とする3つの“S”として「Social」「Seamless」「Share」を指摘。これらを乗り越えるためには、都市のデジタル人材が持つ多様な視座やスキルとの連携が不可欠だと語った。

店主との関係構築が鍵となった福岡「屋台DX」

LINEヤフーコミュニケーションズの依田氏は、福岡の屋台文化をデジタルでアップデートする「屋台DX」プロジェクトを紹介した。100以上ある屋台の「営業しているかわからない」「店を選びにくい」という課題に対し、LINE公式アカウント『FUKUOKA GUIDE』を開発。AIチャットボット「AIおいちゃん」が博多弁でおすすめの屋台を提案するサービスや、IoT電球の通電状況から、店主が明かりをつけるだけでリアルタイムの営業情報を可視化する仕組みを構築した。プロジェクトの成功の鍵は、店主に負担をかけない設計と、全ての屋台を回って直接説明する「地に足のついた地道な声かけ」にあったという。

パネルディスカッションでは、田口氏が依田氏の事例について「まさに日根さんが課題として挙げた3つのSが詰まっている」と指摘。日根氏も「丁寧な関係性の上で、技術で課題を乗り越える素晴らしい事例」と称賛した。議論は、デジタル技術の活用と、人間的なコミュニケーションとの両立の重要性や、地方ならではのチャレンジのしやすさ、都市と地方が互いの強みを生かして連携していくことの可能性へと発展した。

楽しいことが、おのずとつながっていく

フォーラム後半、参加者によるグループワークでは、「地方創生に関する感想・課題」と「自身・自社の関わり方」の2テーマで議論が行われた。

各グループからは「行政は前例がないと前に進まない」といった課題が指摘される一方、「全国に拠点を持つ企業のインフラを横串で活用できないか」「ペットボトルリサイクルで築いた自治体との関係性を生かし、新たな協働にチャレンジしたい」などのアイデアも出された。また、「地方と都市の境界とは何か?」「楽しいことをやっていくとおのずとつながっていくのではないか?」といった問いや仮説も投げかけられた。

こうした議論を受け、SB国際会議アカデミック・プロデューサーの青木茂樹氏は「『テロワール』(農産物の個性を決める、地域固有の自然環境)こそが差別化のポイント。東京にないものを各地域が見つけて」とコメント。SB国際会議DEIプロデューサーの山岡仁美氏は「地方創生に正解はなく、100箇所あれば100通り。だからこそ、いろいろな立場の皆さんがシェアする機会はとても重要」と締めくくった。

議論と学びの成果を国際会議につなげる

同日、今年度から新たに始まった2つの分科会も最終回を迎えた。

SSBJ分科会では、柏原総合環境会計事務所の柏原岳人氏がゲスト講師を務めた。ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が提示する開示基準の背景には、「自己創設のれん」(ブランド価値や人的資本など)を、非財務資本としていかに適切に評価・計上するかという財務会計上の長年の課題があると解説。その上で、内部炭素価格(ICP)などを活用し、サステナビリティ情報を財務情報とリンケージさせる具体的なアプローチが共有された。

マーケティング分科会では、青木氏がSNSにおけるサステナブル・コミュニケーションについて解説。企業からの一方的な発信(Homepage)、双方向性を意識した発信(SNS Trial)から、多様なステークホルダーとの対話(SNS Dialog)へと進化させる3ステップを提示。さらに、ユーザーが主体的にコンテンツを生成・共有するUGC(User Generated Content)の重要性を強調し、パタゴニアの「#wornwear」といった企業の成功事例を紹介した。

またフォーラムの最後には、2026年2月18日、19日に東京国際フォーラムで開催される「サステナブル・ブランド国際会議2026東京・丸の内」のプログラムが紹介された。

今年度のフォーラムは最終回となるが、サステナビリティの各分野に関する一連の議論の集大成は、国際会議で示されることになる。今回で10周年となる節目の舞台で、本フォーラムからは、SSBJ分科会で行われてきた議論の成果がトークセッション形式で発表される予定だ。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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