
サステナブルな未来の担い手となる“チェンジメーカーの卵”が集う共創コミュニティ「nest」が、今年もいよいよ始動した。その名の通り、若者が仲間と共に成長し、卒業後も安心して戻ってこられる「巣」のような場を目指す活動だ。4年目を迎えた今期は、審査を経て選ばれた国内外の15歳から25歳までの高校生、大学生、社会人の計23名が集う。自分と社会を探究し、自分たちなりのソーシャル・アクションの実行に挑む、熱気に満ちた1年が幕を開けた。
新たな「巣」から、未来へ羽ばたく

第4期nestは、メンバーが自らの興味・関心を知る「自己探究」と、アプローチしたいと思う社会課題への理解を深める「社会課題探究」を往復しながら、約10カ月間の活動を行う。議論や調査、フィールドワークのほか、関心分野が近いメンバーでグループをつくり、実際にアクションを実行することも重視する。2026年2月のサステナブル・ブランド国際会議にも参加し、それまでの活動を大舞台で報告する予定だ。
2025年6月21日、そんな第4期のキックオフが東京での対面会場とオンライン会場のハイブリッドで開催された。冒頭、第4期プロデューサーの岡田羽湖氏は、「皆さんとお会いできたことがとても嬉しい。私たちプロデュースチームだけでなく、メンバーも含めてnestをつくっていきたい」と、熱意を込めて挨拶。

会場には、初対面の緊張感とこれから始まる活動への期待感が入り混じり、ある参加者は「ずっと楽しみにしていて、昨日も眠れなかった」と高揚した表情で話すなど、心地よい熱気が漂っていた。
対話でそれぞれの価値観を深堀りする
4時間に及ぶキックオフ。空気が一気に和んだのは、一人ひとりの価値観を可視化し、お互いに共有するアイスブレイクだ。「安定」「挑戦」「家族」などといった言葉が書かれたカードの中から、自分にとって大切な価値観だと思う5枚を選び、その理由を語り合う。最初は少し遠慮がちだったメンバーも、対話を通じてすぐに打ち解けていった。

「『ユーモア』を選んだのは、どんな状況でも楽しさを見つけたいから」「『挑戦』は、今の自分に一番必要な言葉だと思った」など、それぞれの価値観の背景にあるストーリーが語られるたびに共感の頷きが広がり、会場では「わかる!」「それ、いいね」という声が飛び交った。オンライン参加者も活発に対話し、距離を感じさせない、心理的な近さが生まれていた。
「自分らしさ」を探究し、社会と向き合う1年へ
この日の後半では、より深く自己を探究するワークが続いた。今期のブランドディレクターを務める村瀬悠氏は、今期のnestが目指す方向性について「自分らしい社会課題への関わり方を見つけていくこと」と説明。社会には多くの課題が存在するが、「その課題をどのような切り口で捉え、どのように解決を目指すのか」を決めるのが、「自分らしさ」だと村瀬氏は言う。
そこで提示されたのが、自分自身のこれまでの人生の浮き沈みをグラフに書き起こしながら、自分らしさを作ってきたポイントを探る「ライフチャート」だ。メンバーたちはペンを片手に、うんうんと唸(うな)りながら自身の過去と真剣に向き合う時間を過ごした。ライフチャートが完成すると、メンバーは互いの人生を見比べながら、「この落ち込んでいる時期があったから、今の自分がある」「この経験が、社会課題への関心につながったのかも」と、小さな発見を共有し合った。

続く「自己探究シート」では、「社会への違和感」や「自分の武器」といった、核心に迫る問いに挑んだ。ある参加者は「自分が役に立ちたい相手を『属性』で考えるのが難しかった。もっと『思い』で繋がりたいのかもしれない」と、新たな自己理解への気づきを口にした。これらのワークは、単に自分を知るだけでなく、社会との関わり方を見つめ直し、これから始まる「nestアクション」のための重要な土台となるものだ。
若者たちによる、若者たちのための活動

nestは「大人に助けてもらうもの」でも「アクションを押し付けられるもの」でもない。岡田氏、村瀬氏、またこの日はオンライン参加となったカリキュラムディレクターの吉田悠馬氏のほか、第1期から関わる「サポーター」など、企画・運営体制は全て20代前半の若者たちによって担われている。
主役は、nestに関わる一人ひとりの若者たちだ。これから来年3月までの間、メンバーそれぞれが自身の「問い」を育て、社会課題解決に向けたユニークなアクションを生み出していく。その挑戦の始まりを告げる、熱意と希望に満ちた一日となった。
横田 伸治(よこた・しんじ)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。