• 公開日:2025.06.13
  • 最終更新日: 2025.06.12
イオントップバリュ、2025年度末までに環境配慮100%へ 代替チョコなど新商品も 
  • 眞崎 裕史

イオンは6月10日、千葉市のイオンモール幕張新都心で開いた新商品発表会で、プライベートブランド「トップバリュ」を巡り、2025年度末までに、その100%を環境に配慮した商品とする見通しを明らかにした。合わせて、ヒマワリの種を原料に使った代替チョコレートや国際フェアトレード認証のバラなど、ブランドビジョン「人と地球とハーモニー」の実現に向けた新商品を発表。コストパフォーマンスも意識したラインナップで、環境への関心が高い若者らのニーズに応える。 

環境配慮が商品選ぶ基準になれば

環境に配慮した新商品を発表する土谷美津子氏

「環境配慮の取り組みを具体的に表記している商品に対しては、『安心・信頼できる』という声がたくさん届いている」。イオントップバリュの土谷美津子・代表取締役社長は、発表会でそのように述べ、環境配慮商品への切り替えを進めていると強調した。 

同社はISO 14021(環境ラベル及び宣言―自己宣言による環境主張)の要求事項を満たしていることを条件に、化石由来資源を削減した商品の目印として「環境配慮3Rマーク」を設定。それらが付いた「脱炭素商品」と、「海のエコラベル」とされるMSC認証を取得するなどした「自然保護商品」を合わせて「環境配慮商品」と規定している。 

土谷氏によると、2025年4月末時点で環境配慮商品は計6027点。これはトップバリュの全商品の半数以上を占め、「2025年度中に全ての商品を環境配慮型に切り替えられそうだ」という。その上で土谷氏は「環境に配慮しているかどうかが、選ぶ基準になってもらえるとありがたい」と消費者の行動変容に期待を込めた。 

カカオ危機に挑む「チョコか?」

気候変動による不作や高騰、児童労働など、チョコレートの原料であるカカオが抱える課題は深刻だ。こうした中、イオンはPlanet A Food社(ドイツ)開発の「ChoViva(チョビバ)」を使った代替チョコレート「チョコか?」を商品化した。チョビバはカカオに代わる原材料として、ヒマワリの種を使用。カカオ同様に発酵・焙煎(ばいせん)の工程を経ることで、チョコのような香りと口どけを実現したという。 

ターゲットは、環境への関心が高い若い世代だ。ヒマワリの種の栽培はカカオ栽培と比較して、CO2排出量を最大90%、水の使用量を最大94%、栽培面積を最大95%低減できるといい、イオントップバリュの高橋幹夫・取締役商品開発本部長は「環境に大きく貢献する商品だ。そのことを消費者にしっかり伝えていきたい」と意気込んだ。 

シリーズ第1弾として、ビスケットにチョビバをかけた「チョコか?WITH BISCUIT」を発売。6月10日から「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」など全国約2200店舗で、数量限定で販売している。今秋以降、ラインナップの拡充を進める。 

これまで廃棄されていたサツマイモの皮や周辺部分を使った「さつまいもクッキー」

食品関連では、食品ロスに光を当てたアップサイクルの菓子「さつまいもクッキー」も紹介された。これまで干し芋を製造する際、サツマイモの中央部分だけが使用され、皮や皮の周辺部分は廃棄されていた。イオンの製造委託先では、その量は年間600トン。今回、それらをペースト化して練り込み、クッキーとして商品化した。 

バラでフェアトレード認証の取得も 

また5月末には、国際フェアトレード認証を取得したケニア産のバラを発売。切り花のカテゴリーとしては、国内プライベートブランド初の認証という。花卉(かき)業界は、世界的に見ると農薬や化学肥料の過剰使用、それに伴う環境破壊や生産者の健康被害が懸念されていることから、「持続可能な生産と消費を実現」するために、サプライチェーンの整備に注力したものだ。 

高橋氏によると、海外産地で花束を加工・急速冷却し、国内倉庫を経て店頭に並べる。タッチポイントを最少化する独自のコールドチェーンを構築することで、鮮度とコスト削減を両立した。包装材はバイオマスプラスチックを使用。ベトナム産のブーケも2025年度内にフェアトレード認証を取得見込みで、6月中旬に発売する計画だ。 

国際フェアトレード認証を取得したケニア産のバラ

暮らしに身近な商品でも、環境に配慮した商品化が進む。ソフトパックのティッシュペーパーの包装は、フィルムから紙に切り替えた。製造時のCO2排出を約30%、プラスチック使用量を年間1.4トン削減できるという。 

発表会の冒頭、土谷氏は消費者の環境意識に関する調査結果を紹介し、「環境にも財布にも優しいことが大事」と強調。「コツコツコスパ」と表現する価格を抑える取り組みと、環境に配慮した商品開発の両立を目指す考えを示した。 

発表会後、土谷氏はサステナブル・ブランド ジャパンの取材に対し、「サステナビリティは、言わばわれわれのポリシーだ。それを体現化するには、商品の形は非常に分かりやすい」と答えた。「環境配慮100%」はイオンが進めるサステナビリティの取り組みの一部だが、小売最大手の挑戦だけに、そのインパクトは大きい。「100%の先」にも期待しつつ、他企業への波及を注視したい。 

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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