• 公開日:2024.05.08
それぞれがIHRP2023を完走、これからも「大きすぎる」目標を掲げる
  • IHRP

2023年度の研究テーマ「青い、地球の、課題。」を発見し、探究し、本気で解決を目指した約40人の高校生が、それぞれ研究を完成させ、2月21、22日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内」で成果を発表しました。ついに参加者全員が、IHRP2023(全国高校生異分野融合型研究プログラム)を完走しました。(本文寄稿・IHRP=小林りこ)

SB国際会議2024東京・丸の内の会場でひときわ目を引いたのが、「段ボール製の折り紙チェア」です。折り紙に着想を得て椅子の開発に至った中辻知代さんは、130キロ以上の重さにも耐えられるこの椅子を世界中の多様な人々に使ってほしいと語りました。IHRPの展示ブースのあるACTIVATION HUBでは、「段ボール製の折り紙チェア」が並べられ、実際に来場者が腰かけていました。最初は恐る恐る腰を下ろしてみるものの、すぐにその丈夫さに気づき、安心して大人も子どもも快適に座れることが分かっていただけたようです。椅子に座りながら研究内容をまとめたポスターを見たり、高校生と話したりする光景が何度も見られました。

「段ボール製の折り紙チェア」に座る来場者

半年間の奮闘を通し、研究成果の出た高校生もいれば、ひたすら悩み抜いた高校生もいました。星野将来さんは、発達障害を切り口に、哲学と脳科学を横断した研究テーマを練り続けました。壮大な構想を研究の形に落とし込むために、本を何冊も読みながら、何度も何度も研究計画書を書き直しました。IHRPは、短期的な研究成果よりも「探究の過程」を重視しています。そしてSB国際会議2024東京・丸の内では、その模索の過程で考えたことを発表しました。

企業ブースも含めて社会課題への具体的な施策の紹介が多い中、星野さんのひと味違う研究報告ポスターに目をとめる大人も少なくありませんでした。「むしろ早急な課題解決で見落とされがちな視点を問題提起しているのではないか」と感想を伝えてくださる企業の方もいらっしゃいました。自分の中の問いに向き合い、じっくりと学んで、分からない中でも考え続けること。そんな姿勢を示してくれた研究だったように思います。

ACTIVATION HUBのIHRPの展示

「さまざまな学びを得たものの、もしかしたら自分のやりたいことは、大きすぎる目標なのかもしれない」

最終発表で、そう語る高校生がいました。

そもそも今年の研究テーマは「青い、地球の、課題。」でした。この時点で地球規模なわけで、すでに「大きすぎる」のかもしれません。しかし半年間のプログラムを経て、ひと回りもふた回りも成長していく高校生たちの姿を見て、「『大きすぎる』と言われてしまうような目標こそ、IHRPは掲げていかなければいけないのではないか」。そんな気持ちにさせられました。

海洋プラスチックごみを無くすこと、すべての人が安全な水を飲めるようになること、移民やLGBTQ+の人々も暮らしやすい社会にしていくこと。たしかにこれらは、一朝一夕では解決し得ない、複雑な社会課題です。さまざまな要因が絡み合って起きていて、自分ひとりの努力で変わるものでもなければ、一つの研究成果によってたちまち解決するわけでもありません。

しかし「自分にとって大きすぎる目標かもしれない」という言葉を聞いて、後援企業の方から「その大きすぎる目標こそが大事なのだよ」と応答がありました。

私は、思わず膝を打ちました!
誰も「大きすぎる」目標を語らなくなれば、誰がより良い社会を築いていくのでしょうか。私たちIHRPは、これからも、「大きすぎる」目標を持った高校生たちが存分に悩み、挑戦し、失敗し、羽ばたいていける場所であり続けたいと決意しました。

そして「大きすぎる」目標を持ち、研究を続けていくために必要不可欠なのが、仲間の存在です。ある高校生は「全国から夢のある学生が集まって、一緒に話したり研究したりできたこと」、また別の高校生も「自分と同じように、あるいはそれ以上に探究活動に熱心に取り組んでいる仲間に出会えたこと」が、かけがえのない経験だったと語ってくれました。出身や学校は異なれど、志を同じくする仲間や大人に出会える機会として、IHRPは、これからもこうした場をつくり続けていきます。

2024年度もIHRPは、全国各地の高校生が切磋琢磨し合える場を準備しています。地球規模の課題に関心を持ち、文系・理系の枠組みを超えて研究にチャレンジしてみたい高校生を募ります。「研究費と東京への交通費、宿泊費の支援制度のおかげで、自分たちのしたい研究をすることができました」という高校生の声は、私たちの励みであり、首都圏以外の参加者へのサポートにも引き続き力を入れていきたいと思います。

募集やプログラム内容は、6月頃に発表する予定です。

「IHRP2023(全国高校生異分野融合型研究プログラム)最終報告書」
(2024年4月 NPO法人IHRP)

https://drive.google.com/file/d/1ut3bW2h5Udj7kRl47e_hnn7w8sOnrf5x/view?usp=sharing

written by

IHRP(Interdisciplinary High School Research Program)

IHRP(Interdisciplinary Highschool Research Program)は、世界各地で活動する大学生が、高校生の異分野融合の研究を支援する、特定非営利活動法人です。「社会課題解決のための研究」「異分野融合」「多様な高校生にチャンスを」をコンセプトに、高校生同士、高校生と研究者・企業の“新結合“をもって、社会問題へ斬新な解決策を創造することを目標にしています。

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