SB2019Tokyo

セッション「ビジネスのリ・デザインで本当の姿が見える」。左からレンチングのピーター・バッシュ氏、エルステッドのラスムス・スコフ氏、フィリップモリスジャパンの井上哲氏、ファシリテーターの足立直樹氏。

より良い生活、より良い社会を実現していくために、どうビジネスを変革していけばよいのか――。「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」のセッション「ビジネスのリ・デザインで本当の姿が見える」では、変革を達成した3つの企業の具体例を手掛かりに、そのきっかけやプロセスを議論し、重要な要因が何かを探った。(オルタナ編集部=堀理雄)

登壇したのはフィリップモリスジャパンの井上哲副社長、エルステッドのラスムス・スコフ サステナビリティ部門長、レンチングのピーター・バッシュ コーポレート・サステナビリティ部門長の3人だ。SB東京の足立直樹サステナビリティ・プロデューサーがファシリテーターを務めた。

足立プロデューサーは各登壇者に、ビジネスを変革した理由、そこにどんなチャレンジがあったのか、そして今後変革を進めようとする企業に向けてどのようなアドバイスがあるかと質問した。

フィリップモリスは、20年近くに渡りタバコの有害物質を減らすための研究開発を継続。タバコを燃焼させないことで有害物質を低減する可能性のある加熱式タバコ「アイコス」を開発した。

井上副社長は、製品自体の変革(プロダクト・トランスフォーメーション)を踏まえたうえで、紙巻きタバコ喫煙者の加熱式タバコへの切り替えという社外の変革と、社内の仕事の進め方の変革という、社内外の変革(エクスターナル/インターナル・トランスフォーメーション)を進めていると述べ、そのポイントについて以下のように指摘した。

「会社のビジョンや理念を各従業員一人ひとりが理解することで、自らがドライバー(推進力)となって進めていこうという企業文化をつくっていくことが重要だ」

エルステッドはデンマークに本社を置く電力会社だ。元々、石油やガスなど化石燃料の事業を行っていたが、それを転換し、現在では洋上風力発電や太陽光発電などのクリーンエネルギーで世界最高の事業利益を出している。

同社のスコフ氏は、こうした事業転換を推進した背景には、ガスの卸売りなど既存の事業が経営不振に陥っていたことがあり、さらに2009年にデンマークで開かれたCOP15(第15回気候変動枠組条約締約国会議)での脱化石燃料に向けた動きも事業転換を加速させたと振り返る。

スコフ氏は「財務的な利益が出ていなければ、社会に有益な変容をつくりだすことは難しい」と指摘した上で、事業変革のポイントについて「明確な目標設定をして、会社を長期的な価値創造の方向に進ませること。さらにその結果を追跡し、パフォーマンスの計測をすることも重要だ」と述べた。

レンチングは、木材パルプに由来するセルロースから繊維をつくる革新的な技術を開発し、繊維生産をはじめエンジニアリングやプラント建設などの事業をグローバルに展開する。

同社のバッシュ氏によれば、変革のきっかけの一つは1970年代、オーストリアにある同社工場からの環境汚染の問題にある。地域住民や同国政府から、工場を閉鎖するか技術変革をするよう求められ、イノベーションの必要性に迫られたという。

バッシュ氏は、リサイクルを進め、バリューチェーンを通じた循環型のビジネスを進める同社のサステナビリティ戦略を紹介。その上で「透明性が重要。情報開示を行い、顧客やサプライヤーとの信頼性の高い関係を構築していく。目標や進捗状況を伝えていくことも必要だ」と話した。

足立プロデューサーは、「ビジネスを変革していくことを通じて、自分たちの会社が何のためにあるのかというパーパス(存在意義)が改めてクリアになり、それをいまリ・デザインしていくべきかが明らかになるのでないか」と分析した。

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