• サステナブル・ブランド国際会議2017~2020
  • ニュース
  • SB国際会議
  • 公開日:2018.05.01
  • 最終更新日: 2025.03.28
ソーシャル・ファイナンス新時代へ
  • 辻 陽一郎

SB 2018 Tokyo

社会的インパクト投資の一つである「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」やベンチャーフィランソロピーなどが始まり、社会のお金の流れが変わりつつある。「社会課題解決のためのソーシャル・ファイナンスの新時代をどう創るのか」のセッションでは、日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事を進行役に、社会的投資推進財団の工藤七子常務理事、ソーシャル・インベストメント・パートナーズの白石智哉共同代表理事、三井住友銀行の上遠野宏成長産業クラスターグループ長がソーシャル・ファイナンスをテーマに議論を深めた。(辻 陽一郎)

社会課題の解決を図るとともに経済的利益も追求する投資行動が社会的インパクト投資。工藤常務理事は、「どちらも追求するところに資金提供をする人が社会的インパクト投資家で、世界では12兆円くらいのマーケットがある。日本では718億円くらいだが成長してきている」と話した。これまで助成金を渡しているだけではなかなか社会が良くなっていかなかった。社会課題解決に投資的にお金が流れていく仕組みをつくることを目指しているという。

三井住友銀行は昨年7月、神戸市の糖尿病患者が人工透析に至るのを予防する事業を対象にSIBの取り組みを開始した。SIBとは、成果連動型で公共サービスの提供をする仕組みだ。仕様書通りにやればお金が出るのでなく、成果連動型にしようというもの。受注する事業者はリスクが高いので、お金のリスクは投資家がとる。上遠野グループ長は「成果を上げるところを監視するのは、お金を出した金融機関が担う。社会貢献したい個人投資家もお金を出している」という。

ベンチャーフィランソロピーを始めた白石代表は「これまでのベンチャーキャピタルが、投資家からファンドとしてお金を預かり事業リスクをとって会社を助けるものであれば、フィランソロピーは社会課題の解決を行う団体に寄付するものだ」と話した。成長性の高い非営利組織や社会的企業へ、中長期で資金提供と経営支援を行う。事業の成長を促し、社会課題解決を加速させるモデルだ。

重要なのは社会にどのような成果が出たのか、計測可能な成果を見える化すること。「従来のベンチャーキャピタルと違うのは、測定可能なインパンクトがあること。いかに数値化できるか、定性をウォッチできるかというところをみている。スケールも大事で、一定の地域よりもいいモデルを使って展開していく」

子どもの放課後支援を行うNPOには、ロジックモデルを整理して、事業計画をつくったところ、企業と協働するプログラムが大幅に増えた。予算規模も拡大し、寄付金がほとんどなくてもまわるモデルになったという。

written by

辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

Related
この記事に関連するニュース

政治情勢が変化しても持続可能性に向けた歩みは止めない――米国の3つのサステナビリティ調査から明らかになったCFOの責務
2025.04.09
  • ワールドニュース
  • #ファイナンス
  • #ESG投資
【コラム細田悦弘の新スクール】 第9回 SX時代の「経営の視座」 
2024.05.20
  • コラム
  • #ファイナンス
  • #ESG投資
ESG市場の発展や拡大をけん引、JRTTが交通事業でサステナブルな未来社会を切り開く
2024.03.26
  • ニュース
  • スポンサー記事
Sponsored by 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
  • #ファイナンス
  • #ESG投資
【コラム細田悦弘の新スクール】 第7回 「CSRからCSVへ」を熟慮する
2024.03.19
  • コラム
  • #ファイナンス
  • #ESG投資

News
SB JAPAN 新着記事

フードテックで一次産業を支援し、食料自給率を上げる
2025.04.30
  • ニュース
  • #DX/デジタル
  • #テクノロジー
  • #AI
  • #資源循環
AIの環境負荷を評価する「AIエネルギースコア」が登場 
2025.04.30
  • ワールドニュース
  • #テクノロジー
  • #AI
循環型経済に向けて、企業に求められることとは
2025.04.28
  • ニュース
  • #サーキュラーエコノミー
  • #プラスチック
「RE100」が「石炭混焼発電を禁止」に基準変更――日本の脱炭素戦略へ影響必至か
2025.04.28
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

Ranking
アクセスランキング