• 公開日:2018.04.24
収益も社会問題も「笑い」も、よしもと流社会貢献
  • 池田 真隆

ユヌス・よしもとソーシャルアクションの立ち上げに関する記者会見で。ユヌス氏(左から3番目)と小林社長(右から3番目)

その会社のらしさが出ている社会貢献活動は、広く世の中に浸透するが、その好事例の一社になりそうなのが、吉本興業だ。 地域活性に一役買っている「住みます芸人」やSDGsの17目標をテーマにした漫才コンテストなど 得意の「笑い」を生かして、SDGsやソーシャルビジネスなどの専門用語をお茶の間に広げていく。ソーシャルビジネスに特化したファンドを運営するユヌス・よしもとソーシャルアクション(以下yySA)の社長に就任した小林ゆか氏に今後の戦略を聞いた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

yySAが行うSDGsの推進活動は実に多彩だ。国連広報センターと組み、SDGsの17目標ごとに、よしもと芸人がアフレコを務めたオリジナル動画の制作や漫才のネタに各目標を取り入れ、メッセージ性を競い合う「SDGs-1」グランプリなど、笑いを生かして、お茶の間に浸透させている。

3月には、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏と組み、同氏が提唱する「ユヌス・ソーシャルビジネス」を支援する「yySAファンド」を立ち上げた。同ファンドを運営する事業会社ユヌス・よしもとソーシャルアクションの小林社長によると、ファンドの規模は非公開だが、「1億円以上」とのことだ。

小林社長は、「日本の笑いは分かち合うもの。ユヌス・ソーシャルビジネスに似ている」とし、「ソーシャルビジネスの仕組みをお茶の間のおばちゃん、おじちゃんにも知ってもらいたい」と強調。

yySAがこれらの活動を行う背景には、「住みます芸人」のインフラがある。住みます芸人とは、同社が2011年から始めたプロジェクト。その名の通り、芸人が都道府県に移住し、地域の盛り上げ役として一役買うもの。

現在は47都道府県に172人(2017年1月時点)がおり、地方自治体と連携して、観光プロモーションや移住促進事業など700以上のイベントを実施してきた。494の自治体で「観光大使」として活躍中だ。

小林社長は、「住みます芸人は地域のローカル番組にレギュラーとして出演している。8年かけて積み上げてきた、よしもと独自のインフラを使って、公益的な事業をつくりたい」と話した。

ユヌス・よしもとソーシャルアクションでは、各地域の住みます芸人が地域課題を挙げて、協力体制を組むスタートアップ企業が解決策を考え、事業化する。yySAファンドで資金提供を行う仕組みだ。今後はビジネスコンテストなどを通じて、メディアを巻き込みながら、ソーシャルビジネスを広げていくという。

「社会問題」を笑いのネタに

自治体との包括連携やSDGs推進事業など行政・自治体をクライアントにした案件は、民間企業の案件と比べて増えているのかという問いには、「答えられない」(小林社長)としたが、民間の大手企業が新商品をPRする際に必ずしもマスメディアに広告を打たなくなったように、お笑い芸人のあり方も確実に変わっているようだ。

かつては、芸能人が社会問題について意見することは、「色が付く」として、避けられてきた。しかし、近年では、社会問題をネタにして笑いを取る芸人は少なくない。同社に所属するウーマンラッシュアワーの村本大輔さんやロンドンブーツ1号2号の田村淳さんらがそうだ。

この傾向について、小林社長は、「お笑い芸人は、お客さんが社会に感じている疑問やストレスを触媒的に発信する役割を求められているかもしれない。社会を変える新しい興行が続々と生まれていくだろう」と話した。

written by

池田 真隆(いけだ・まさたか)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナS編集長

1989年東京都生まれ。立教大学文学部文芸思想学科卒業。大学3年から「オルタナS」に特派員・インターンとして参画する。その後、編集長に就任し現在に至る。オルタナSの編集及び執筆、管理全般を担当。企業やNPOなどとの共同企画などを担当している。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。

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