• 公開日:2018.04.19
「ネスレ スペシャルトラック CSVアイデアソン」part2レポート(前編)

サステナブル・ブランド国際会議2018東京で開催された「ネスレ スペシャルトラック アイデアソン 人生100年時代のGood Life」。Part2は「持続可能な社会を担う子どもたちの健康づくりを考える」がテーマだ。Part1の参加者から多くの問題提起があったように、「人生100年時代」を考えるときにはシニア世代だけではなく、ライフステージ全体で課題を抽出することが必要だ。27人の参加者は、未来の社会を担う子どもたちの健康という切り口から、社会課題を分析、特定し、その解決方法を提案した。(SB-J編集局)

ファシリテーターの青木 茂樹氏のデータ発表と解説に耳を傾ける会場の参加者

ファシリテーターの青木 茂樹・サステナブル・ブランド国際会議東京アカデミックプロデューサーは冒頭、国内の6歳から12歳の児童に関するデータを示した。現代の肥満傾向が進行しているだけでなく、運動が「できる子」と「できない子」の差が大きく広がっている。自転車の購入台数も減り、運動の機会が減っている。デジタル化により、情報が絶え間なくインプットされるため、脳が休息状態になりにくいことにも言及した。

運動+食育の取り組みで心のケアも

第一部と同じく、アイデアソンに先立って実際の事例紹介が行われた。登壇したのは株式会社朝日エルの岡山慶子会長で、ニュートリション運動推進会議子どもの健康づくり委員会理事。同委員会はネスレ日本と協働し「ネスレ ヘルシーキッズプログラム」を日本で展開している。岡山氏は「日本の子どもたちは、自分たちの健康のことを考える機会が少ない」 と調査結果を明らかにした。運動コンテンツの取組みを通じて身体を動かすことの大切さを、そして栄養コンテンツを通じて、栄養についての知識や理解を深め、食べることに関心を持ってもらい、子ども自身が「自分のからだは自分でつくる」ということを意識し行動してもらうため、2011年のスタートからこれまでに延べ約8500校の小学校、約160万人の児童に健康に関する教材を提供している。

岡山氏は「文部科学省が2017年3月に発表した新学習指導要領でも、ESD(持続可能な開発のための教育)が推進されており、子どもたちの未来は『サステナビリティ』という概念抜きに考えられない」とした上で、「WHOが健康の定義として挙げている4つの要素、フィジカル、メンタル、ソーシャルに加え、スピリチュアル面(人間の尊厳などの意味)のケアも必要だ」と語った。
同委員会とネスレ日本の取り組みは、地域の健康づくりにも及んでいる。運動コンテンツの1つである食育を取り入れた「ヘルシーキッズ健康卓球」のコンテンツがその一例だ。ゲーム感覚で楽しめるよう工夫し、子どもたちと地域のコミュニケーションを促進し、心のケアまで踏み込んで社会課題の解決を狙う。

「デジタル化」から多様なニーズと提案

アイデアソンでは、データや事例を踏まえて、現在の子どもたちを取り巻く環境、その中でどのようなニーズが見つかるか、そして参加者それぞれの視点から、課題解決のアイデアをグループごとに出し合う。ファシリテーターの青木氏は「皆さんには、既存の常識にとらわれず自由な発想のアイデアをシェアしてほしい」とアイデアソンへの期待を話した。

ディスカッション後の発表では、子どもを取り巻く環境について「デジタル化」という認識は多くのグループで一致していた。一方、環境から見える課題、ニーズの模索に関しては「アナログのコミュニケーションが不足し、多様性が欠如するのでは」「モノはあふれているが見て、触れて、感じるという経験が貧困になる」などの他、「家庭環境の変化により栄養の偏りが大きい」といった分析が聞かれた。

ユニークな発表では「運動と栄養にフォーカスが当たることが多いが、休養が不足しているのでは」といった課題提起をするグループもあった。情報過多などにより、子どもたちは意識的に休養を取らなければ、休めない環境にある。そこで、学校教育の中に「睡眠教育」を取り入れてはという提案がされた。

NPO関係者からは「子ども食堂などの取り組みが日本中に行き渡るには、もっと企業の関わりが必要」との声もあり、食の課題では、特に企業の役割が大きいことが明らかになった。

立場超えて知識と知恵を共有するアイデアソン

発表はその場でイラストにまとめられた

これらの発表内容は、Part1に続き清水 淳子さんがグラフィックレコーディングの手法で、イラストで記録した。アイデアソン終了と同時に見やすくまとめられたイラストはまさに「集合知」。参加者は感嘆の声と惜しみない拍手を送った。

「高齢化社会」と「子どもの健康」をテーマに、2セッションに渡って開催された「ネスレ CSVアイデアソン 人生100年時代のGood Life」。その参加者数は延べ50人。会場では「ネスカフェ ドルチェグスト」で淹れたコーヒー、抹茶、抹茶ラテと、「キットカット」が振る舞われ、終止リラックスした雰囲気で、活発な意見交換と忌憚ない発表が繰り広げられた。専門分野や世代、立場を超えて、多くの人が知識や知恵を共有したことに、参加者からは「刺激を受けた。とても興味深く、楽しい場だった」との声も。時間的な制約で具体的なアイデアが出せなかった参加者も、今後の生活の中で、この日共有したテーマについて考え続けるのではないだろうか。

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