• 公開日:2018.04.18
  • 最終更新日: 2025.03.02
「ネスレ スペシャルトラック CSVアイデアソン」Part1レポート(前編)

一説によれば2007年に生まれた人が107歳まで生きる割合は50%を超えるという。人の寿命が長くなるにつれ、社会の在り方も問い直される。「人生100年時代」を迎えて、私たちは多くの課題に直面する。それは企業やブランドにとっては大きなビジネスチャンスでもある。サステナブル・ブランド国際会議2018東京2日目のセッションでは、参加者の様々なアイデアによって「人生100年時代」を切り拓くアイデアソンを開催した。(SB-J 編集局)

参加者からは積極的で柔軟な発表が行われた

サステナブル・ブランド国際会議のテーマは「REDEFINING THE GOOD LIFE(グッド・ライフの再定義)」。様々な分野の視点から「グッド・ライフ」とは何かを問い直し、そこにどのようなビジネスチャンスが創出されるのかが50以上のセッションで話された。このうち、「ネスレ スペシャルトラック CSV アイデアソン」では、企業人、学生、専門家、団体、自治体関係者など多彩な参加者が集まり、「人生100年時代のGood Life」について意見やアイデアを出し合った。part1は「高齢化社会の取り組み」が議題だ。

ファシリテーターを務めたのはサステナブル・ブランド国際会議東京の森 摂・総合プロデューサー。アイデアソン開催にあたり、長野県小谷村(おたりむら)役場から特産推進室の細澤 恵一・おたり54(ごし)プロジェクトリーダーが登壇し、高齢化という社会課題の先進地域の取り組み事例を紹介。CSV(共通価値の創造)を提唱するネスレ日本から津田 匡保・Eコマース本部 部長が取り組みを紹介した。

官民一体の取り組み―IoTも活用

小谷村は長野県北部に位置する、54の集落から構成される村だ。日本有数の豪雪地帯で、人口は1965年から減少を続け、現在の人口は約3000人。日本創生会議によれば「消滅自治体」に数えられている。高齢化も深刻で、2055年には村民の3人に1人が75歳以上になると予測される。

同村は2016年6月から、地域コミュニティの維持と、すべての村民が住み慣れた地域で暮らし続けられることを目的とした「おたり54(ごし)プロジェクト」を展開する。独居でも安心して暮らせる見守り体制を整えたバリアフリーのトレーラーハウスの設置や、村内で活動する事業者との連携による高齢者の生活サポートなどのサービスを提供している。政府の「小さな拠点」づくりを小谷村に落とし込み、持続的な取り組み体制を維持するために官民一体となった「ローカル・マネージメント法人」を立ち上げた。

細澤プロジェクトリーダーは「54プロでは『いるとこ・やること』を創出することで村民の誇りや楽しさ、生き甲斐を提供する。地域課題の解決方法はそれぞれの地域で手法が変化する。様々なアイデアを参考にすることが必要」と話した。

ネスレ日本はコーヒーマシン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ i[アイ]」を利用したサービス「ネスカフェ コネクト」を展開する。「バリスタ i[アイ]」は音声によって高齢者でも簡単に操作でき、設定したLINEへメッセージを送ったり受け取ったりすることができ、見守り機能を持つ。IoTによって高齢者と遠隔地の家族をつなぐだけではなく、高齢者とヘルパーや福祉施設をつなぐことも可能で、実証実験には、小谷村が参加している。

高齢者が役割を持つ多様化社会へ、多彩な発表

テーブルごとのディスカッションでは、アイデアや意見を書き込んだポストイットをワークシートに貼り付け整理する。活発な議論でシートが埋まった

アイデアソンPart1に参加したのは学生、NPO/NGO、企業、自治体など様々な分野の23人。3~4人のグループにわかれ、ディスカッションを行い発表した。ファシリテーターの森氏は冒頭、「22世紀に日本の人口は5000万人程度と予測されている。22世紀は遠いように感じますが、今年12歳になる子どものうち1/3は2100年にも生存していると言われ、それほど遠い未来ではない」と述べた。人口減少、高齢化によってどんな課題があり、どんな解決法が考えられるのか。

発表はグラフィックレコーダ―の清水淳子さんがリアルタイムでイラストに描き起こした。あるグループの発表では「そもそも高齢者の幸せとは何か。人それぞれ違う。都市部ではコミュニティが希薄になりやすい。デイケアセンターなどを、高齢者が進んで行きたい場所に変える工夫が必要」と課題を分析した。

高齢でもアクティブな人材に永く働いてもらう社会づくりが重要だと考えるグループが多く、年齢で区切る今の社会に対して「ライフステージはボーダーレスになるべきだ」との意見もあった。現在の「支え型」の社会では持続できず「肩を組む」社会への変化が必要だという声も上がった。「高齢者」「引退後」という区切りで考えることから脱却し、街や社会のコミュニティを密にすることが求められていると言えるだろう。

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