• 公開日:2018.04.18
アイデアソンで高齢化社会を切り拓く活発な意見(Part1後編)

真剣な眼差しで考えを出し合い、整理する参加者たち

アイデアソンとは「アイデア」と「マラソン」を掛け合わせた言葉で、新しいアイデアを創発することを目的としたディスカッションの形式だ。サステナブル・ブランド国際会議2018東京で開催されたセッション「ネスレ スペシャルトラック CSVアイデアソン」では4-5人のテーブルごとにわかれた参加者たちが、リラックスしながらも熱のこもった話し合いを繰り広げ、社会課題の洗い出しと課題解決の柔軟なアイデアを出し合った。(SB-J編集局)

Part1のテーマは「人生100年時代のGood Life―高齢化社会に向けての取組み」だ。アイデアソンではディスカッションの結果をグループごとに発表するが、今回はすべてのグループ発表を清水 淳子さんがグラフィックレコーディングの手法で記録し、一枚のイラストに描きまとめた。参加者一人ひとりが生活や専門分野の中で持った課題意識と、社会に対する思いが、生き生きと描かれている。

清水淳子さんによるグラフィックレコーディング。リアルタイムで描き込む早さと完成度に、参加者たちからは感嘆の声が上がった

最初に発表を行ったグループは「そもそも高齢者の幸せとは何か」という問いを投げかけた。人口減少という現実もあり、人とのコミュニケーション機会が減ることが大きな課題となる。これは高齢者にとってだけではなく、社会の皆が直面する課題でもあり、「特別な取り組みではなく、普段の生活の中で近い場所にいる人同士が出会い、つながりを作る『仕組み』が必要だ」と発表者は力説した。

具体的な仕組みとして、他のグループからは「デイケアセンターをもっと楽しく、能動的に行きたい場所にする」というアイデアが出た。実例として、カジノ型デイサービスを実施している地域もあるが、賛否両論だという。

「シニア世代でも仕事をすることがコミュニケーションになる。健康寿命をどう伸ばすか、どう働く場所を提供するかが重要だ」「定年や引退の概念から脱却し、人生を年齢で区切らないボーダレスな人生設計に対応した、参加型の社会が必要」と発表するグループからは、「雇用を広げるために履歴書から年齢の記載を無くしてしまえばいいのでは」との声も。

一方、「アクティブなシニア世代が働き続けられることは必要だが、寝たきりなどでパッシブなシニア世代はどうすればいいのか」という問題提起もあった。

学生が代表して発表したグループは「記憶力の低下や筋力の低下といったフィジカルな問題は、テクノロジーで解決する。それに伴って高齢者層の生産性は自然と向上する」と予測。前向きな将来観に、深く頷く参加者も多かったが、「健康寿命が本当にテクノロジーで大きく変わるのか」という疑問の声も上がった。

グループ発表の中で、ある社団法人関係者からは「遺贈を利用し、寄付されたお金をシニア世代のために使う」というアイデアも飛び出した。若者が高齢者を支える社会から脱却し、高齢者のお金を同年齢層のために使うという考え方で、「今の『支え型社会』のままではいずれ立ち行かなくなる。これが実現すればしばらくは社会が上手く回る」と語った。

完成した清水さんのイラストからは、課題に直面しつつもより良い社会を模索する参加者たちの多彩な意見と、ポジティブな姿勢が伺える。セッションを主催したネスレ日本の冨田 英樹氏は「これからは高齢者も多くの役割を持ち、多様化していく時代だということが、皆さんのディスカッションやアイデアから浮き彫りになった」と締めくくった。

完成した「ネスレ スペシャルトラックCSVアイデアソンpart1」のグラフィックレコーディング

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