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  • 公開日:2014.03.29
  • 最終更新日: 2025.03.21
36号 世界のソーシャル・ビジネス(米国) 在宅ママの組織力が地域を支える
    • 寺町 幸枝

    年に一度地域で開かれる「設立記念日」のパーティーで。南カリフォルニアの場合、総勢500人ほどが集る

    1983年、主婦メアリー・ジェイムスとその仲間たちが「在宅ママ」のためにカリフォルニアで組織したのが「MOMS Club(マムズ・クラブ)」だ。全米に1500以上、海外に9支部を展開し、会員数は10万人を超える。(ロサンゼルス=寺町幸枝)

    MOMSは「ママがママたちのために支援を申し出る会」という意味。非営利団体インターナショナル・マムズ・クラブが運営し、シミバレーに本拠地を置く。全米の母親をネットワークすることで、母親同士で助け合えるコミュニティーをつくり、慈善活動などを通して社会を豊かにしていくことが目的だ。

    会員は専業主婦が中心だが、在宅で仕事をする母親やフルタイム勤務の母親も入会することができる。一会員、一支部の所属を原則とし、郵便番号を基に所属クラブを決める。

    毎年各支部は「サービスプロジェクト」として、少なくとも1つ、子どもたちのためになる活動を行うことが義務付けられている。

    例えば、地元のガールズ&ボイーズクラブに学校用品を寄付したり、小児向けセラピー施設に寄付を行ったりする。こうした活動は、家に閉じこもりがちな在宅ママたちに社会との接点を提供し、向上心を保ちながら子育てを行うことができる環境を整える。

    マムズ・クラブの魅力は、運営団体による極め細やかな指導とサポートにもある。本部直結のスタッフ(多くはボランティア)は、各地域のクラブの中心となっている会員の代表者と密な連絡を取り合い、クラブの運営から会員獲得に際してのアドバイス、会員同士の問題などの解決に助言を与える。

    さらに年に1、2回、パーティーやミーティングなどを通じて、本部のコーディネーターと顔を合わせる機会も用意されている。こうした密なコミュニケーションは、在宅ママの組織力を強化し、災害などの有事に役立てられている。

    例えば昨年5月、米国オクラホマ州ムーア市を襲った巨大な竜巻は、多数の死傷者を出す大惨事となった。

    翌日の早朝には、マムズ・クラブ会員用ウェブサイトにメンバーたちの生存状況がアップデートされた。その後すぐに義捐金集めが開始され、ボランティア活動も行われた。24時間以内に、全米のマムズ・クラブを中心とした支援体制ができあがったのだ。

    マムズ・クラブのロゴ

    災害時は母親同士で共助

    インターナショナル・マムズ・クラブの重要な活動の一つが、1994年のロサンゼルス大地震をきっかけに設立された「マザー・トゥー・マザー・ファンド」(M2Mファンド)の運営である。

    オクラホマの竜巻や2012年に東海岸を襲ったハリケーンサンディーなど災害発生時に、緊急を要する会員への支援の一環として、M2Mファンドは存在している。

    例えば、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件では4人の会員が夫を失った。その女性たちには当面の生活資金として一人5千ドル(約50万円)を支給した。

    その後、各ローカル支部で、この4人の女性たちをサポートするための支援金集めが行われ、最終的に各約1万ドル(約100万円)が追加で支払われている。

    こうした支援金のサポートはあくまでも「悲惨な」状況に見舞われた会員に限るとはいえ、マムズ・クラブの会員にとって、援助を願い出る先が用意されていることは、精神的に大きな支えになっている。

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    written by

    寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)

    Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。

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