![]() 「ウンフェアパックト」の店内。バルク・ビンに納められた食品の色が美しい(写真:Berit Ladewig)
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世界の海洋の表面には、25万トン(※)ものプラスチック廃棄物が浮遊していると言われる。その多くを占めるのが、プラスチックの手提げ袋やパック包装だ。食品の個別包装を止め、量り売りにすれば、それを少しでも減らすことができる。ドイツ北部のキール市にある「ウンフェアパックト」(Unverpackt)は、そんな「バルク・ショッピング」を導入した食料品店だ。(デュッセルドルフ=田中聖香)
店名はずばり、「包装しない」の意味。「バルク、サステイナブル、良質」をスローガンに、国内初のバルク・ショップとして2014年2月に開店した。
店主のマリー・デラペリエールさんは、3人の子をもつ母親。主婦としての経験から、買い物のたびにプラスチック包装やビニール袋がたまるだけでなく、「お徳用パック」を買うと食べ残しが出やすいことにも気付いていた。
「量り売りなら、プラスチック廃棄物と食料廃棄物の両方を減らせる」と思い立ち、大手企業のプロジェクトマネジャーの職を辞めて起業した。
![]() 店主のマリー・デラペリエールさん(写真:BeritLadewig)
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食品・日用品が400品目
買い物の仕組みはいたって簡単だ。来店する人は、買物カゴや手提げ袋に加え、個別の食品を持ち帰るためのプラスチック容器を何個も持参する。入店時に容器をレジで計量し、重量を記録したシールを容器に貼り付ける。店内の食品は品目ごとに「バルク・ビン」と呼ばれるディスペンサーや、ガラス容器などに収められており、買物客はここから必要量だけを持参した容器に自分で詰める。
レジでは先のシールをもとに、容器の重さを自動的に差し引いて精算する。扱い品目は生鮮野菜、卵、パン、乾物などのほか、ワインやオリーブオイルなどの流体、チョコレートやグミなどのお菓子、洗剤やシャンプーなどの日用品まで400品目に上る。
「国内初のバルク・ショップを旗揚げしたことで、大海に一石を投じたと感じています。自分の店だけでなく、バルク・ショッピングというテーマが社会的に大きな反響を呼んだことがうれしい」とデラペリエールさん。
当初は情報を集めながら手探りでビジネスプランを練ったが、開店から1年半後の今、運営もようやく軌道に乗った。初年度の売上高は約10万ユーロ(約1300万円)。毎日50人が来店し、3人の従業員がフルタイムで働く。カフェも併設され、商店というよりコミュニティの雰囲気だ。
デラペリエールさんは店の運営のほか、自分の経験を生かして講演やコンサルティングも行う。
年に数回開く2日間のワークショップは、仕入れ、関連法規への対応、物流、IT面など店舗運営のノウハウを伝えるもので、毎回定員いっぱいの人気だ。今後は大学や官公庁と共同でプロジェクトを企画し、食品業界や包装業界にも働きかけて、コンセプトを充実させていきたいと話す。
ゴミや不要物を再利用する「リサイクリング」ではなく、ゴミそのものを発生させない「プリサイクリング」が、この店で確かに実践されている。
※科学医療リサーチ組織PLOSの発表
田中 聖香(たなか・みか)