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世界最大の年金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月3日、日本株の3つのESG(環境・社会・ガバナンス)指数を選定し、これに連動したパッシブ運用を開始した。今後、ESG投資を拡大するものの、「3兆円投入」との一部報道は否定した。(オルタナ編集部=吉田広子)
GPIFは3日までに、ESG全般の「総合型」指数として「FTSE Blossom Japan Index」、「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」の2つ、女性活躍に着目した「テーマ型」指数として「MSCI 日本株女性活躍指数」(通称WIN)を選定した。環境のテーマ型指数については、継続審査中だ。
GPIFは当初、国内株全体の3%程度(約1兆円)で運用を開始した。今後、拡大する意向を示しているものの、「3兆円」と具体的な額については広報責任者が否定した。
GPIFは2016年7月から9月にかけてESG投資のための株価指数を公募。国内外の指数会社、運用会社など計14社から27指数の応募があり、その結果、3つを選定した。広報責任者によると、「組み入れ企業は、重複を除くと360社に上る」という。
ESG指数の選定にあたっては、(1)ESG評価の高い銘柄を選別する「ポジティブ・スクリーニング」、(2)公開情報をもとに企業のESGを評価し、その評価手法や評価結果も開示、(3)ESG評価会社および指数会社のガバナンス体制・利益相反管理――の3点を重視したという。
今回採用したESG指数に基づく運用は、パッシブ運用に分類される。パッシブ運用とは、日経平均株価やTOPIXといった代表的な指標との連動を目指す運用手法。反対に、アクティブ運用では個別に銘柄を選び、目安となる指数を上回る運用成績を目指す。
GPIFの高橋則広理事長は、「今回選定したESG指数の活用が日本企業のESG評価が高まるインセンティブとなり、長期的な企業価値の向上につながるよう期待している。ESGを重視する海外の長期投資家がこの点に着目すれば、日本株の投資収益が改善する可能性も高まる」とコメントしている。
さらに、「日本企業のESG評価向上がESG評価を重視する海外資金の流入につながれば、日本株のパフォーマンス向上が期待される。その恩恵を最大限享受できるのがGPIFであり、年金の被保険者である」「中長期的に投資の効果を確認しながら、将来的には他のESG指数の活用やアクティブ運用など含めてESG投資を拡大していく」と表明した。
吉田 広子(よしだ・ひろこ)
株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。