「CSRブランディング最前線」を講演する細田主席(12月10日、東京ビックサイト)
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東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2016――環境とエネルギーの未来展」が10日に終了した。サステナブルブランド・ジャパンのブースでは8日から3日間、SBJコラムニストらが登壇するスペシャル・セッションを開催した。(オルタナ編集部=吉田広子)
最終日の10日は、キヤノンマーケティングジャパンCSR本部CSR企画推進部主席の細田悦弘氏が「CSRブランディング最前線」について講演した。
細田氏は、「50年ほど前から企業に対する不信感が出てきた。CSRをないがしろにすると、事業が立ち行かなくなる」として、激変する経営環境のなかで社会からの要請に応えるCSRの重要性を説いた。
「経済価値と社会価値は両立する。社会課題は企業にとってビジネスチャンスになる。商品やサービスに『with CSR』を取り入れることで新たな顧客を創造できる」(細田氏)
細田氏が提唱するのが、「事業活動」「CSR」「企業ブランド(自社らしさ)」の3要素を掛け合わせた「CSRブランディング」だ。事業戦略にCSRを組み込み、自社らしさを加えることで、競争優位につながるという。
備蓄用カップヌードルや高齢者向け転倒予防靴下、大学の100円朝食といった事例を挙げながら、CSRブランディングをどのように実現するかを紹介した。
左から、サステナブル・ブランド事例についてディスカッションする森編集長、松崎本部長、稲継部長(12月10日、東京ビックサイト)
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「サステナブル・ブランド事例セッション」では、ブリヂストンと竹中工務店が自社の取り組みを発表した。
ブリヂストンの企業理念は、「最高の品質で社会に貢献」。同社は2020年までに原材料調達から製品廃棄までの過程で排出されるCO2の35%減を目指している。使用時の排出量が大きいことから、タイヤの「転がり抵抗」を低減した次世代低燃費タイヤの開発にも力を入れる。
同社CSR・環境戦略企画部長兼オリンピック・パラリンピック室主任部員の稲継明宏氏は、「環境対応はコストではなく、ビジネス機会ととらえている。2030-50年に向けて、循環型の競争優位性を確立していきたい」と話した。
竹中工務店が開発した木を使った耐震補強技術「T-FoRest」は、「第13回エコプロダクツ大賞」国土交通大臣賞を受賞した。同社は環境配慮型建築を目指し、積極的に「木造化」に取り組んでいる。1時間の耐火性能を持ち、4階建てまでの木造ビルを可能にする構造部材「燃エンウッド」も販売している。
竹中工務店木造・木質建築推進本部本部長の松崎裕之氏は、「森林が活性化するだけではなく、林業が復活し、地方創生にもつながるような『森林グランドサイクル』を目指している。木のイノベーションでサステナブルな森とまちの未来を実現したい」と意気込んだ。
吉田 広子(よしだ・ひろこ)
株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。