「よきモノづくり」を通じて、ネイチャーポジティブ実現を目指す花王の取り組み
パームヤシの実
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花王は、「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の4つの事業分野で、生活者に向けたコンシューマープロダクツ事業を展開しています。また、「ケミカル」事業では、産業界のニーズにきめ細かく対応した製品を幅広く展開しています。これら花王の事業は自然資本に大きく依存しており、生物多様性、地球温暖化、省資源などの環境側面や、人権などの社会的側面に十分配慮したESG経営を進めています。
花王では「よきモノづくり」を通して環境への影響低減に努めてきました。生分解性原料への変更や洗剤の小型化、つめかえ商品の開発によるプラスチックの削減などがその例です。グローバルで環境課題や社会課題が顕在化する中、2021年に企業理念(花王ウェイ)を改訂し「豊かな共生世界の実現」を花王のパーパスとしました。これはまさしく自然との共生も示したものであり、2023年には「生物多様性の基本方針」を改訂し、生物多様性の保全にとどまらず再生への取り組みを通して、ネイチャーポジティブの実現を目指す決意を表明しました。
<生物多様性の基本方針>
https://www.kao.com/jp/sustainability/klp/policy/biodiversity-policy/
花王ウェイ(企業理念)
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自然関連の情報開示への取り組み
花王は、自然関連の情報開示に関して積極的に取り組んでいます。2022年4月よりTNFDフォーラム(TNFD: 自然関連財務情報開示タスクフォース)に参加するとともに、TNFDが2023年9月に公表した情報開示提言への賛同を表明し、「TNFD Adopter」に登録しています。
さらに、2022年からはLEAPプロセス※に則り、花王のバリューチェーン全体を生物多様性の視点で調査を行い、マテリアリティとして、パーム油・パーム核油に関連する因子(森林破壊、泥炭地開発)、廃棄物の排出(特に、プラスチック容器)、水資源(取水と排水)等を特定してきました。これらの項目に対し、「自然共生シナリオ」と「成り行きシナリオ」を作成、想定されるリスクに対する財務インパクトを見積もった結果をサステナビリティレポートで公開しています。「自然共生シナリオ」では、気候・生態系を回復するとともに必要な技術革新が進み、生活者が環境に配慮した製品を選ぶといった、花王がめざす姿を描きました。
※LEAPプロセス:TNFDが推奨する、企業と自然の接点を特定し、自然への依存や影響、リスクと機会などの課題の評価と対応のための分析手法。Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の頭文字を取ったもの。
<花王サステナビリティレポート2024>
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sustainability2024-42.pdf
パームに関する取り組み
花王製品の多くには界面活性剤が配合されており、その原料であるパーム油は事業活動を行う上でとても重要な原料の一つです。原産地の熱帯の森林を守りながら持続可能な調達に取り組んでいます。農園までのトレーサビリティの100%確保とRSPO認証油の100%購入を目標に、花王はRSPOに加盟し、認証油の調達を積極的に進めてきました。2016年からトレーサビリティ確認済みのパームオイルミルに対して第三者機関によるリスクマッピングを実施し、パームオイルミルの50km圏内について保護林、火災跡、泥炭地の有無等を確認することにより将来の森林破壊の可能性を判断しています。
また、森林破壊の本質的な解決には、小規模農園の生産性向上を含むサステナビリティレベルの向上が必要と考え、インドネシアの独立小規模パーム農園に対するプログラム「SMILE」(SMallholder Inclusion for better Livelihood & Empowerment program)を開始しました。農家に対し、生産性向上に向けた技術指導、RSPO認証取得に向けた教育のほか、花王独自の技術により、農薬の使用量を削減する効果が期待される農薬展着剤「アジュバント」を無償支給することで、環境負荷の最小化に貢献します。これらの活動は、花王のサイト上で公開しています。
<持続可能なパーム油調達に向けた花王の活動>
https://www.kao.com/jp/sustainability/we/procurement/palm-dashboard/
限られた資源であるパーム油・パーム核油を大切に使う研究も進めてきています。従来は、洗浄剤原料としては使えず、用途が限定されていたパーム油・パーム核油の固体状の油脂部分から、分子設計の工夫により新洗浄剤「バイオIOS」を開発することに成功しました。バイオIOSは、少量でも高い洗浄力があり、それ自体は衣類に残りにくいため、すすぎ水量の削減などに貢献、花王の衣料用洗剤に使用されています。貴重な資源である油脂と水の利用といった点からも、洗浄の世界で革新をもたらす洗浄剤です。
生物多様性保全・回復活動
和歌山工場敷地内のクロマツ防潮林
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国内外の各製造拠点では、生物多様性に関わる取り組みとして緑地の保全活動を進めています。例えば、主力工場の一つである和歌山工場では、約80年に及び敷地内のクロマツの防潮林(国の史跡水軒堤防の一部)の保全に取り組んできました。緑地に生息している生物の実態調査、観察などから、そのエリア特性に適した緑地管理手法を取り入れています。またクロマツ林も含めた工場内の緑地では、長年に渡り樹木が大きく成長し、設備や動線などの安全確保のため、思い切った間伐が必要になってきています。
生じた間伐材もただ自然分解するだけでは“もったいない”として、有効活用する活動「里山的緑地管理」を始めました。緑地への積極的関与から、工場の安全操業への貢献、地域社会との交流促進、社員のリフレッシュ等、多くの効果を生み出していきたいと考えています。これらの活動は、生物多様性の保全が図られている区域として評価され、2023年に公益財団法人都市緑化機構が実施している「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)」の 「緑の殿堂」に認定されたり、環境省の推進する「自然共生サイト」の認定を受けることができました。