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時代に合ったまちづくりとは?――企業SDGsの取り組みとDX活用から考える〈前編〉

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

まちづくりに取り組む企業、団体、研究者らで構成する未来まちづくりフォーラム実行委員会は、2月14・15日に東京・丸の内において「未来まちづくりフォーラム」を開催する。まちづくりを、企業のSDGsへの取り組み、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用などの視点から議論する。フォーラム開催を前に、企業と自治体、関連セクターがどのように連携し成果を上げているのか、実行委員のメンバーに語ってもらった。2回に分けて紹介する=前編。

笹谷氏

笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム実行委員長(以下、笹谷):本フォーラムは発信を重視していて、自分は「発信型三方よし」と言っています。発信のないところには仲間が増えないし、イノベーションが起きません。フォーラムではSDGsを主軸に据えていきたいと思いますが、今は至る所で企業がSDGsの活動をしている、本物だけが残る混迷の時代になったと言えるでしょう。各企業がどのようにサバイバルしていくか、各団体がどのようにつなぎ支援できるか、それぞれの得意技を生かしていただき議論を深めたいと思います。

地域の社会課題解決にどのようにDXを取り入れるか

町野氏

町野弘明・一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク代表理事:いま、DXによる変革が求められています。地域の問題が多様化しているなか、社会課題解決をするためにどのようなテクノロジーを使ったらいいのかを考える必要があります。山本さんは地域漁業の課題解決にDXを取り入れているので、ぜひお話を聞かせてください。

山本氏(右)

山本圭一・NTTコミュニケーションズ ソリューション&マーケティング本部 事業推進部
地域協創推進部門 第二グループ グループリーダー:地域と一緒に水産業を通じまちおこしをしていますが、議論の中で必ずDXが出てきます。DXは言葉として何となくかっこいい。ですが、言葉の意味を知ること、自分の言葉で定義しようと言っています。またDXは「あったらいいな」ではなく「なくてはだめ」という技術でなければならない。この技術でないと漁業ができない、そうやって作っていくのがDXだと自分では考えています。また海洋観測の方法はたくさんあり、ひとつずつやるのは不可能。自分たちが課題解決しなくてはならないものとは何かを定義することがとても大事になります。

最近、陸上養殖に注目が集まっていますが、グローバルで見ると国内の解決方法は陳腐化し時代遅れになっていることがわかりました。課題を根本的に解決する技術がないのです。ですから、この5年間くらいで資源をどう生かすかにシフトしています。

並木氏

並木順之・NECネッツエスアイ 経営企画部 部長(以下、並木):当社も水産業を通じたSDGs貢献を進めています。長年陸上養殖に携わってきた会社と提携して、最新の陸上養殖技術と当社のICT/デジタル技術を融合することにより、安心・安全で高品質なサーモンの生産に取り組んでいます。順調にいけば2023年夏に初出荷できる見込みです。水産業にDXを活用することで安定した食料の提供が可能になり、社会に貢献できると考えています。

当社では、「先進テクノロジーを活かした楽しく豊かなまちづくり」などをマテリアリティとして掲げており、2022年5月に公表した中期経営計画では、DXと次世代ネットワークを成長ドライバーに、2030年までに持続可能で豊かに響きあう社会「Sustainable Symphonic Society」の実現を目指しています。

2022年9月に発行した統合報告書では、笹谷先生にご協力いただき、マテリアリティに対するESGやSDGsと事業の関係性を整理・体系化したマトリックス表を作成し公表しました。事業戦略との関係性を可視化することで本業でのSDGsへの貢献をさらに推進していきます。

例えば、自治体様における業務効率の向上や住民サービスの価値向上に貢献するため、自治体様向けソリューションを揃えた課題解決型DXショーケースを日本橋オフィスに設置しており、事業を通じてより良い未来のまちづくりに貢献していきたいと思っています。

笹谷:先ほどお話に出たマトリックス表ですが、そのマテリアリティがSDGsの何番目に相当するか見える化したもので、こうしてリストにすることを推奨しています。

並木:社内ではSDGs17目標までは意識していましたが、さらに169ターゲットに落とし込むことで、マテリアリティや事業戦略との関係性がより具体的になりました。これからは、各部門・各個人の業務とひもづけして展開することで、さらに社内に浸透させ、SDGsの実現に貢献していくことがわれわれのミッションだと考えています。

大塚氏

大塚光彦・熊谷組 経営戦略室 副室長 兼 コーポレートコミュニケーション部 部長(以下、大塚):当社でも、SDGs169のターゲットと事業を関連付けたESG・SDGsマトリクスを作成しています。2021年にコーポレートレポートへ掲載しました。2022年度は、より事業に寄せた内容へブラッシュアップしましたが、社内浸透は一朝一夕にはいかない状況です。

笹谷:組織は逃げられない構造を作らないと、なかなか自分事化しないところがあります。ターゲットとしてあなたの業務は何番なのか、と具体的に説明することが大切になってきます。

大塚:ご指摘の通り、社員一人ひとりの隣にSDGsはあると認識できるような仕組みづくりを検討しています。当社は建設会社としてDXを推進し、DXを活用したインフラ整備に貢献しています。建設機器にICTを取り入れ、自動運転で生産性を向上しました。有人操作による余計な動きを取り除き20%を省力化できました。またインフラ整備に関しては、ここ数年で、高速道路の老朽化への対応が社会課題となっていますが、劣化したRC床版を耐久性の強いプレキャスト製の床版に取り換える作業が進められています。

通常30~40センチ間隔に設置した床版の隙間にコンクリートを打設するのですが、当社はこの間隔を2センチまで縮め、この技術により現場でのコンクリート打設が不要となりました。従来に比べ作業工程の52%、人員を50%削減できました。これらにより生産性を4.2倍向上、CO2排出量を30%削減できることがわかりました。

カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー双方に貢献する環境技術として、製材時に発生し、廃棄物となる木の皮、バーク材を利用したバイオマス燃料を開発しました。木を余すことなく使用することで、国内林業の活性化につながると考えています。地方自治体と地元の火力燃料発電所と連携協力して、地産地消のエネルギー循環システムを全国に提案したいと考えています。

カーボンニュートラルをアクションに結び付けることが大事

釣流氏(中央)

釣流 まゆみ・セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 経営推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサー(以下、釣流):当社は食品を提供していますが、世界的な食料不足に対する危機感から、現在、そして未来に安定供給をどのように確保するかを考えています。創業から100年経ち、1店舗から全国に2万店舗まで拡大し、お客様のお困りごとに応えてきましたが、逆にCO2排出量は小売業としては最も多く排出しており、社会的な負を出してしまったとも言えます。

事業を通じてSDGsの目標達成に挑戦していますが、この3年で環境に対する取り組みが加速したように感じています。カーボンニュートラルをどうアクションに結び付けるかがとても大事です。私達のCO2排出量は90%が電気使用によるものとわかり、地域の方々とご一緒にいかに使用電力量を減らし、CO2排出量を下げるかを考えています。電気を使用しないためには、イノベーションが必要になります。

最新の店舗では、2013年比でCO2排出量50%減、電気使用量約40%減を達成しました。資金を投入した取り組みだけではなく、日常の省エネ活動を積み上げた結果です。地域の自治体にご協力いただきながら、まちづくり、カーボンニュートラルを進めさせていただいています。委員の皆様のお知恵をお借りしたいと本フォーラムに参加しました。

笹谷:まちを歩いていたらシックな茶色の店舗がありました。調べたら景観条例に準拠しているセブンイレブンでした。何げなくやっているのがすごくいいと思います。まちづくりにはそうした協力が必要になってきます。

小林氏(左)

小林俊賀・日本製紙 バイオマスマテリアル事業推進本部 バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター:当社はヴィジョンからのバックキャスティングでさまざまな課題に取り組んでいます。商業資源の活用と創造を中核に、木質資源の特性を生かした3つの循環①持続可能な森林資源の循環、②技術力で多種多様に利用する木質資源の循環、③積極的な製品リサイクルを強化しています。植えることで資源を再循環したり、植林でCO2排出量を補填したり、木を余すことなく使うことなどをしています。使い終わった紙の循環では、日本航空(JAL)と協業し飛行機の中で使われた紙コップを段ボールやトイレットペーパーに再生しています。

また地方自治体や地域の事業者とSDGs型の商品開発に注力しています。セルロースナノファイバーはサステナブルな素材として環境省の第五次環境基本計画でイノベーティブな新素材として取り上げられました。持続可能な森林からの調達をアピールしながら取り組んでいきたいと思います。

笹谷:日本製紙の取り組みは、SDGs目標7(エネルギー)、目標13(気候変動)、目標15(陸の豊かさ) に相当する取り組みです。この3つの目標は非常に重要な要素で、日本のポテンシャルは高いと思っています。
(後編に続く)

<第5回未来まちづくりフォーラム 開催概要>
https://www.sustainablebrands.jp/event/sb2023/special-miramachi.html
◆開催テーマ:日本SDGsモデルの最前線 -混迷の時代、羅針盤SDGsで協創力を発揮-
◆会期:2023年2月14日(火)、15日(水)10:00-18:45
◆会場:東京国際フォーラム (東京・千代田区丸の内3-5-1)& オンライン
◆参加費 一般:5500円(税込/事前登録制)※未来まちづくりフォーラムのみ参加の場合、自治体関係者:無料 (事前登録制)
◆主催:未来まちづくりフォーラム実行委員会
◆協賛:NECネッツエスアイ株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社オカムラ、株式会社熊谷組、株式会社JTB、損害保険ジャパン株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、日本製紙株式会社、日本製紙クレシア株式会社
◆特別協力:サステナブル・ブランド国際会議(株式会社 博展)
◆後援:内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省(前回実績、関係府省に申請中)
全国知事会、全国市長会、全国町村会、一般社団法人CSV開発機構、全国地ビール醸造者協議会(JBA)、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク、
エコッツェリア協会(一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会)、一般社団法人チームまちづくり
◆同時開催:サステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内