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エプソン販売

経営の4要素「人・モノ・金・情報」からひも解く、エプソンのSDGs戦略

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モノづくり企業の枠を越え、さまざまなアプローチで社会課題に取り組むエプソングループ。そうした企業活動は、どのような意志をもって遂行され、そして世の中にどんなインパクトを与えているのか。6回シリーズの最終回である今回は、日本におけるSDGs経営指南の第一人者であり、同社ともまちづくり活動などを通して親交の深い笹谷秀光氏が、経営の4要素である「人・モノ・金・情報」をテーマに、エプソン販売スマートチャージMD部の子田吉之部長にずばり切り込んだ。

Interviewee 
子田吉之:エプソン販売 販売推進本部 スマートチャージMD部 部長
Interviewer
笹谷秀光:未来まちづくりフォーラム実行委員長 千葉商科大学教授 CSR/SDGsコンサルタント

【人】ペーパーラボ事業が、社員のサステナビリティへの意識を成長させた

笹谷:エプソンは、会社としての取り組み以前に、社員一人ひとりの「社会課題に対する感度」が高いと思うのですが、その辺りはどうお考えですか?

子田:やはり「地球を友に」という創業時の経営理念が根付いているのが大きいでしょうね。「諏訪湖を汚さないように」という創業者の言葉通り、便利なだけではなく環境もセットにという考え方はDNAに刻み込まれていると思います。

笹谷:御社は長期ビジョン『Epson 25 Renewed』において、「持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と打ち出しています。共創はいま流行語のようになっていて、言葉が独り歩きしている会社も多いのですが、御社は経営者のみならず、社員一人ひとりがその言葉の意味を腹に落とし、相手としっかり会話できている。どのような人材教育をされてきたのですか?

子田:「ペーパーラボ(乾式オフィス製紙機)」の存在が大きいですね。われわれはモノづくりの会社ですから、以前まではどうしても“1時間で何千枚印刷できますよ”という性能自慢に陥りがちでした。ですが、「ペーパーラボ」を通して、その技術がいかに社会課題を解決していくかという「環境価値」の存在を知ったことで、何をお客様に伝えるべきかということを理解できるようになったのです。

笹谷:そうして生まれるのがナラティブ、物語性ということですね。一つの製品を通して、経済性、社会性、環境性を含めた総合的なストーリーを語れることを社員一人ひとりが理解しているのですね。私も色々なイベントで御社の現場の方々とお会いしましたが、機能や値段の話ではなく「これはどういう風に社会に役に立つのか」ということを生き生きと話されている。だから多く人の共感を呼ぶのでしょうね。

【モノ】モノからコト、そしてサービスへと変化

笹谷:「ペーパーラボ」しかり、ボトル式のインクジェットプリンターしかり、御社では製品づくりのイノベーションが、次から次へと起こっています。その秘訣は何でしょうか?

子田:化学反応的に色々出てきたのかなという気はしますね。ただしその根底には、「今まではモノのベネフィットしか考えていなかったけれど、それだけじゃ駄目だよね、社会課題に対してどう貢献できるかも必要だよね」という意識の変化があるのも事実。そういう意味では、最初の言葉に戻りますが、「経営理念が根付いていたから」というふうにも言えると思います。

笹谷:モノがコトになってきているんですね。そしてついにはサービスにまでたどり着いたようですね。

子田:「ペーパーレスサクセスプラン」のことですね。日本の商習慣だとオフィス複合機はリースで買って、月々の保守費用を払って、減価償却をしていくという手続きが必要なのですが、そういうのは取っ払いましょうと。「複合機はお貸し出ししますので利用料だけお支払い下さい。面倒な減価償却も不要です」という、モノではなくコトのメリットをご提供できるのかなと思って始めたものです。

笹谷:私が特に凄いなと着目しているのが、御社のマテリアリティとSDGsの項目を対比させたマトリクス表の存在です。マトリクスづくり自体は他の企業もやっていますがSDGsの項目を小数点レベルのターゲットにまで当てはめたのは御社が第1号です。この当てはめが社内で共有されることで、結果的にモノ作りに関して、またモノを売ることに関しても、社会との接点を明確化したのではないですか?

子田:おっしゃるとおりです。このマトリクスのおかげで、どの製品がどの社会課題につながっているのか、そして会社が社会課題に対してどんなことをしているのかを、お客様に対してちゃんと答えられるようになったと思います。

笹谷:こういうものはつくっただけでは社内に浸透しません。子田さんのようなリーダーが旗を振って、社内で勉強会を開いたりという努力によるものだと思います。

【金】コア技術を通して「価値」という利益を提供

笹谷:勉強熱心な社員によって学習する組織をつくり、チャレンジングな製品を次々と世に送り出しています。それらの経済効果も見え始めているのではないですか?

子田:残念ながらまだ見えてはいません。これから市場に広めていく段階なので、利益はまだまだというところです。ですが「ペーパーラボ」や、服の布地に直接印刷するデジタル捺染プリンターという先進的な製品を通して、わが社のインクジェットというコア技術を広げていくことは、10年後、20年後に生き残るためにはやらざるを得ないことなので、先行投資だと思っています。

笹谷:そういうのを「拡業」といって、コアの技術を応用展開する手堅い戦略なのですが、大事なのは「速度」です。日経新聞にも御社が3Dプリンター市場に参入したという記事が1面に載っていました。御社は拡業のスピードがすごく速いですね。

子田:確かにここ数年は速いです。元々インクに関する微細なコア技術を「省・小・精」と銘打ち、それを丹念に磨き上げてきたのがエプソンの強み。その強みをどう生かしていくかという議論もずっとしてきたので、それがいま花開いているのかもしれません。

笹谷:いまは会社の利益だけでなく、従業員、株主、取引先、関係自治体、そしてお客様、全ての関係者に対して価値を生み出すことが必要で、それが巡り巡って自社の利益につながる「マルチステークホルダー資本主義」の世の中になってきています。そうした価値提供の循環も経営上のお金の流れの一つといえますが、その自律的な好循環が、いま御社には起こりつつあると思いますね。

子田:そうですね。数年前から年賀状の発行枚数が下がり、それに伴って個人向けプリンターの販売台数も下がっていく危機感をずっと抱いていましたが、このコロナ禍で見直され、在宅需要という形で伸びているんです。さらには、最近、街中に個室型のリモートワークスペースが増えていますが、そこにプリンターを置けないかという商談も増えています。もちろん外的要因も大きいのですが、よい流れになってきているのかなと思いますね。

【情報】時間をかけて相手に響く情報を発信

笹谷:そして最後にお聞きしたいのは「情報」に関して。御社では情報の受信と発信に関して、どのように取り組んでいますか?

子田:これもやはり、5年前に「ペーパーラボ」を発表したことで大きく変わりましたね。これによってサステナビリティに関する情報が一気に入ってくるようになりましたから。そして北九州での『KAMIKURU』の取り組みを通しても、さまざまなルートから情報やお問い合わせがくるようになりました。それに伴い、発信する方法も商品技術単独から理念を絡めたやり方に変わってきたという感じです。

笹谷:今年のサステナブル・ブランド国際会議では、基調講演にセイコーエプソンの小川恭範社長が登壇されました。また私が実行委員長を務める「未来まちづくりフォーラム」では、自治体とのコラボレーションというテーマで子田さんにご登壇いただきました。講演という形での発信手段については、どんな印象をお持ちですか?

子田:悪く言えば今までは“コマーシャル”だったんですよね。うちが言いたいことだけ言って終わりという。でも講演という形で自分たちがやっていることの裏側まで包み隠さず話すことによって、それに対するリアクションという形で、対話が成り立つようになりました。例えば最近、販売店さんから、5年前に出した環境に関する資料について「もう一回説明してほしい」と言われることが増えているんです。5年前はまったく響かなかったことが、対話を積み重ねることで、確実に浸透してきたなと手応えを感じています。

笹谷:世の中的にもSDGsが浸透して、語りかけたことが相手に響く状況になってきたのでしょうね。御社が今まで仕込んできたことを発信できる絶好のタイミングになってきていると思います。

子田:私もそう思います。ただし、電気自動車などはすでに「自分ごと」化されてきていると思いますが、オフィス環境についてはまだまだという感じです。そういうところにまで目が向くのは、これからなのかなと思いますね。

笹谷:消費者もいまやSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の「つかう責任」を非常に感じています。そこに対して、つくる責任を負うメーカーは説明責任を果たさなければなりません。そうした、消費者が何を考えてどのように理解しているのかを考える経営を消費者庁は「消費者志向経営」と言っていますが、御社は十分実践されていると思います。これからもますます力を入れて取り組んでいかれると期待しています。

対談を終えて

SDGsを使った経営がますます求められています。なぜかと言うと、SDGsは「人・モノ・金・情報」という経営の4要素を全てカバーしているからです。

例えば「人」は働き方改革や人権問題、「モノ」は作る責任・使う責任、「金」は適正な経済成長による貧困撲滅、「情報」については、いまやSDGsを使わないで発信してもなかなか訴求しにくい現実があります。

過去5回の記事を読み返し、今回じっくり子田さんにお話を伺ってみて思ったのは、「エプソンはこの4つすべてをしっかり実践している」ということ。

では、それによってどんな効果が企業にもたらされるかというと、私は2つあると思います。

まず「レピュテーション(評判)」効果。同社は長期ビジョンでカーボンマイナスをしっかり打ち出しているし、自社のマテリアリティ(重要課題)とSDGs項目の紐付けもマトリクスで全部整理が終わっている。だからすごい会社だと、投資家およびマルチステークホルダーから注目を浴び、社会全体の評価も上がるというわけです。

2つ目が、「社員のモチベーション向上」効果。これが発揮されるためには社員自身の感度の高さが求められるのですが、エプソンの場合は非常にそれが高い。具体的には、「今、これが困っているのです」という会話を聞き逃さない、それが提案力と営業力にもつながるんです。

つまり、外にも良くて内にも良いのがSDGs経営。代々の経営者によって引き継がれている理念が、しっかりと実装されていると感じます。

今後の展開によっては、世界に打って出る可能性があると私は感じています。もちろんセイコーエプソンの製品自体はすでに世界進出していますが、エプソン販売のモノの売り方も、SDGs営業のベストプラクティスとして世界に応用展開できるとふんでいます。

そう言えるのは、モノを作っている現場と売っている現場がシンクロしているから。これができているメーカーは強い。

これからもセイコーエプソンならびにエプソン販売は、持続可能な社会づくりにとって「なくてはならない企業」と言われ続けるでしょう。

笹谷秀光(ささや・ひでみつ)
未来まちづくりフォーラム実行委員長 千葉商科大学教授 CSR/SDGs コンサルタント
1976年東京大学法学部卒業。77年農林省(現農林水産省)入省。2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て08年退官。同年に伊藤園入社。取締役等を経て19年4月退職。2020年4月より現職。日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、人サステナビリティ日本フォーラム理事、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員、未来まちづくりフォーラム実行委員長(2019~)。主な著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019)、『3ステップで学ぶ自治体SDGs』全3巻(ぎょうせい・2020)。企業や自治体等でESG/SDGsに関するコンサルタント、アドバイザー、講演・講師として、幅広く活躍中。笹谷秀光公式サイト https://csrsdg.com/ 

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エプソン販売ではエプソングループの長期ビジョン「Epson 25 Renewed」にもとづき、環境負荷の低減に注力し、お客様の課題解決に繋がるソリューションの提案をしています。そして、事業を通じてお客様やパートナーの皆さまと共に「持続可能でこころ豊かな社会の実現」を目指しています。

すべては「お客様の笑顔」のために。

製品というモノに、お客様の願いや、想いを含むコトを添えて提案する。私たちは、そんな姿勢を大切にし、永続性のある価値を創出する企業でありたいと考えています。

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