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日本橋から新たな共創コミュニティをつくる 『日本橋サステナブルサミット2021』開催レポート

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一般社団法人日本橋室町エリアマネジメント

『日本橋サステナブルサミット2021』が11月25日、東京・日本橋で開催された。日本橋にオフィスを構える多彩な企業が集結し、地方創生やダイバーシティ&インクルージョン、脱炭素をテーマに、各社が進めるサステナビリティ・SDGsの取り組みや課題を発表。そこから新たな共創のコミュニティを生み出すことを目指した。当日はそれぞれの講演やセッションごとに交流会が設けられ、多様な企業や人が交じり合う様子も印象的だった。(笠井美春)

江戸時代から日本橋は五街道の起点に定められ、その周辺エリアは「人と物が行き交う街」、また「商人の街」として栄えてきた。幾多の災禍を乗り越えて現存する日本橋とともに、江戸から伝わる循環型社会の知恵、共助の精神が根づいている街でもある。

そんな日本橋エリアでは近年、三井不動産と日本橋室町エリアマネジメントが毎秋に「日本橋サステナブルWeek」を開催し、街全体で持続可能な社会への意識向上を図ってきた。その中で開催されたのが、今回の『日本橋サステナブルサミット2021』だ。

会場となったのはコレド室町テラス内の室町三井ホール&カンファレンス、および、野村コンファレンスプラザ日本橋。午前、午後と会場を分けたため、街の中を行き来しつつ各社の発表に耳を傾ける参加者も多く見られた。

開催にあたり、主催である日本橋室町エリアマネジメントの黒田誠事務局長は、「この機会を、ビジネス・文化・商人の街としてにぎわってきた日本橋が今後、持続可能な街、共創の街になるための一歩にできれば」と挨拶。サミット開催への感謝と抱負のメッセージとともに本サミットはスタートした。

肥後銀行がSDGs時代に果たす、地域を支える金融機関としての役割

登壇者:肥後銀行 代表取締役頭取 笹原慶久氏

冒頭の基調講演には、日本橋室町に東京支店を置く、熊本・肥後銀行の笹原慶久頭取が登壇した。銀行業界初となる「日本経営品質賞」を受賞し、他行に先駆けてSDGs専門組織を設置、グループでも環境省「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」銀賞を受賞している同行の取り組みが語られた。

講演の中で印象的だったのは同行のサステナビリティ全体構想の分かりやすさだ。SDGs17目標中、9つを重要目標に設定。さらにそれを4事例にまとめ、実践しやすい内容に落とし込むことで、一つひとつを自分ごと化。行員が一体となって取り組むことを叶えていた。

さらに注目したいのは、肥後銀行が近年スタートしたというサステナビリティ経営のコンサルティング事業だ。内容は、顧客企業のサステナビリティ経営の実現を銀行が具体的に指南し、研修などを通じて企業内に浸透させていくというもの。

「社会の発展を維持するためには、経営そのものがSDGsの考えを含有するものでなければならない。その考えを私たちの手で広げていきたい」。笹原氏はこれからの金融機関の社会的な役割についてそう述べるとともに、コンサルティング事業を来年にはカーボンニュートラル領域へと拡大すると発表。地域に根ざした金融機関の新たな事業の広がりを示唆した。

SDGs推進を地域経済の活性化に生かす

登壇者:肥後銀行 経営企画部 サステナビリティ推進室室長 大野隆氏
中国銀行 地方創生SDGs推進部 次長 武田憲和氏
ファシリテーター:サステナブル・ブランド国際会議 ESGプロデューサー 田中信康

田中氏、大野氏、武田氏

地方銀行の取り組みを例に金融機関の新たな役割や理念浸透における課題・対策などが語られたこのセッション。まず中国銀行の武田氏は、同行の産学連携推進への取り組みを紹介。SDGs推進に積極的な岡山大学と「おかやま未来共創アライアンス」協定を締結するなど、地域共創のハブとして、大学内の技術、知識と地域企業を繋いでいるという。

肥後銀行の大野氏も、やはりパートナーシップ、連携によるサステナビリティ推進に力を注いでいると実例も交えて語った。さらに基調講演でも紹介されたコンサルティングの新規事業は、社会貢献という面で行員のやりがい創出にも貢献していることなどが紹介された。

この発表に対し、ファシリテーターの田中氏は「ファイナンスと社会的課題の解決が相反していた時代からの変化を感じる」と発言。その変化において必要なのは、行員の理解浸透の促進と、強いリーダーシップだと武田氏。また、社会的課題が先進する地方だからこそ、金融機関が実直にその課題を吸い上げ、地域振興機関として解決支援をしていきたいと大野氏も今後の展望を語った。

午後からは野村コンファレンスプラザ日本橋に場所を移し、セッションが続いた。

スタートアップも老舗も サステナビリティに挑む日本橋企業

登壇者:PGV 代表取締役社長 松原秀樹氏
ダイキアクシス 取締役 常務執行役員 CIO 大亀裕貴氏
にんべん 代表取締役社長 髙津伊兵衛氏

髙津氏、大亀氏、松原氏

先陣を切ったPGVは大阪大学発の産学連携スタートアップ企業。従来入院が必要となる脳波検査を自宅で簡単に行うことができるパッチ式脳波計と脳波AI解析クラウドの開発と研究、実用化を実施。脳波を使って認知症の早期発見を目指すなど、人々の健康と福祉分野に貢献をしている。

ダイキアクシスは水環境の課題を解決すべく、日本および世界、新興国でも活動。インフラが整っていない新興国においては同社の浄化槽が課題解決の有効策に。世界各国のパートナーとともにSDGsへの貢献を目指していきたいと語った。

1699年創業のにんべんは、鰹節優良カビの選定技術やフレッシュパックの保存技術などを、これまで無償で業界に共有をしてきた。すべては、日本の伝統食文化を次世代に残すため。これからも時代に合った商品を開発しつつ、だしの文化で、人々の健康を守り続けていきたいと老舗ならではのメッセージを残した。

3社の発表において共通して語られたのは、それぞれの共創を促進していきたいという思いだ。結果として、トーク後は交流スペースで多くの人々が名刺交換などを行い、共創の可能性を探りあう様子が見られた。

D&I実現が生み出すソーシャルインパクト

登壇者:新生銀行 グループ人事部セクションヘッド兼ダイバーシティ推進室長 西村陽子氏
中外製薬 サステナビリティ推進部社会貢献グループ グループマネジャー 加藤正人氏
ファシリテーター:サステナブル・ブランド国際会議 D&Iプロデューサー 山岡仁美

山岡氏、加藤氏、西村氏

2社のD&I実現においての取り組みが語られたこのセッション。新生銀行が特に注力したのは女性活躍推進だった。女性活躍推進委員会を設置し、要職には人事ではなく現場の長を置くことで自分ごと化を図った。また、女性管理職を増やすことと同時に取り組んだのが女性リーダー育成と支援体制の強化。相互を巻き込みあう環境づくりの重要性が語られた。

一方で中外製薬が注力するのは社会貢献活動の推進だ。中でも共生社会の実現を目的として障がい者スポーツを積極的に支援。主にパラアスリートの講演会、スポーツイベントの実施などをしてきたが、これにより社内でもパラスポーツへの理解が浸透。イベントボランティアへ手が挙がり、さらにスポーツを一緒に楽しむことで双方のバリア(障壁)が柔和。多様性を尊重する社内文化の醸成へとつながったと加藤氏は語った。

これらを「D&Iを全く違うアプローチで実現しようとした企業の例」としたファシリテーター山岡氏は、ここからウェルビーイングやワークインライフへの考えを登壇者とともに議論。会場からも質問を受け付けるなど、まさに参加者全員をインクルーシブするセッションとなった。

脱炭素に不可欠なグローバル企業の「六方よし」

登壇者:BASFジャパン 経営推進本部サステナビリティ推進室シニアマネジャー入江剛氏
ボストン コンサルティング グループ(BCG) プロジェクトリーダー 伊原彩乃氏
三井不動産 サステナビリティ推進部 企画グループ グループ長 杉野茂樹氏
ファシリテーター:サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー 足立直樹

左上から時計まわりに、伊原氏、杉野氏、入江氏、足立氏

最後のセッションは、再び、室町三井ホール&カンファレンスに場所を移して開催。ファシリテーターの足立氏は、冒頭で「グローバルに活躍する3社それぞれの立場から、カーボンニュートラルをどう進めていくべきか、そこに生まれる新たな市場をどう考えるかを議論していきたい」とこのセッションへの期待を述べた。

世界的な総合化学メーカーBASFの入江氏は、世界各地の同社工場がサーキュラーエコノミー(循環型経済)を体現していることを紹介した。化学製品を作っているからこそ、サステナビリティに貢献するイノベーションをしていかなくてはならないと入江氏。自社工場の排出をゼロにするという目標を立て、再生可能エネルギーの活用をさらに推進していく予定だ。

また、三井不動産の杉野氏は、脱炭素の実現には、自社だけでなく、サプライチェーンを含めた取り組みが必要だと語った。さらに日本橋室町三井タワーに東京ガスと連携して設置した「日本橋エネルギーセンター」が脱炭素社会の実現に貢献していることについても触れた。

これに対し、さまざまなグローバル企業の課題に向き合ってきたボストン コンサルティング グループの伊原氏は、多くの企業で脱炭素への取り組みが前進しない3つの理由を明示した。1つは、この取り組みが影響する範囲の広さと複雑さ、2つ目は各国の取り組みの不透明さ、そして3つ目が目標達成への時間の長さだ。さらに伊原氏は「パーパス(存在意義)に意識的にカーボンニュートラル要素を組み込むこと、経営トップが圧倒的なコミットメントを示すこと」が、成功のポイントであると述べた。

その後、会場からの質問をふまえた活発な意見交換があり、カーボンニュートラルについて、「パートナーシップの必要性」や「今できることに注目し、いつかやるときのための作戦を練ることの大切さ」などがそこでは語られた。また、最後にはファシリテーターの足立氏から、セッションのタイトルである「脱炭素に不可欠なグローバル企業の六方よし」について、六方とは「売り手、買い手、世間」そして「地球、未来」に加えて「何がよし」なのかをぜひ考えてみてほしいとの思いが、会場へと投げかけられた。ちなみに足立氏の回答は「パートナーよし」。来場者はこの問い対し、それぞれの考えを巡らせつつ会場を後にしていたようだ。

プログラムごとに交流会を持つスタイルで行われた今回の日本橋サステナブルサミット。すべてのプログラムが終了した後にも、多くの人がコミュニティスペースで語らう姿があった。古く室町時代から、日本には「袖振り合うも多生の縁」ということわざがあるが、いま日本橋にこうしてオフィスがあること、そしてこの日ここに集まったこともまた偶然ではないかもしれない。その言葉をかみしめつつ、ここからまた新たな共創が生まれることに期待せずにはいられなかった。

≪日本橋サステナブルサミット概要≫
日 程:2021年11月25日(木)
場 所:室町三井ホール&カンファレンス、野村コンファレンスプラザ日本橋、COREDO室町テラス 大屋根広場
テーマ:地方創生・SDGs金融、Diversity & Inclusion、環境、脱炭素社会

一般社団法人日本橋室町エリアマネジメント

一般社団法人日本橋室町エリアマネジメントは、日本橋室町地域及びその他の周辺地域において、日本橋らしい景観を維持しながら、江戸桜通り地下歩道をはじめとした公共空間等を活用して賑わいに資する機会の創出・支援に関する事業を行うことによって世界からも注目される街を目指し、日本橋室町地域ひいては東京の活性化に寄与することを目的とします。