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脱炭素特集

脱炭素は地域から加速ーー政府が「脱炭素先行地域」を全国100カ所以上に創出

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年間の降水量が日本で最も多い屋久島は水力発電によって、島内のほぼ100%の電力をまかない、脱炭素に最も近い地域のひとつ

2050年カーボンニュートラル宣言に向けた政策が加速化している。政府はこのほど、全国の100カ所以上に「脱炭素先行地域」を設けて集中的に脱炭素への取り組みを進める「脱炭素ロードマップ」を発表した。先行地域は都市部の市街地から農村や漁村、離島までが想定され、地域資源を最大限活用し、2030年までに脱炭素の達成を目標とする。実施は地方自治体や地元企業、金融機関が中心となって行い、国の地方支分部局が縦割りを排して資金面も含めて支援する。これにより国は再生可能エネルギーを中心に地域での経済を循環する仕組みをつくり、雇用を創出し、成功モデルを全国に横展開する意向だ。 (環境ライター 箕輪弥生)

脱炭素と地方創生を同時に実現するためのカギは再エネ

「脱炭素は地域が主役になる」、政府がまとめた「脱炭素ロードマップ」ではそれが明確に示された。

「脱炭素ロードマップ」は国と地方が協働して地域における脱炭素社会の実現をはかろうとするもので、政府が行う「国・地方脱炭素実現会議」で昨年末からの議論やヒアリングを経て6月初旬にまとまった。

なぜ地方なのか、「脱炭素ロードマップ」では
1) 地域脱炭素は地域の成長戦略になる
2) 再エネなどの地域資源の最大源の活用により、地域の課題解決に貢献する
などがあげられている。

9割の市町村で、地域で利用するエネルギーの大半が輸入される化石資源に依存し、エネルギーコストが域外に流出している。地域資源である再エネのポテンシャルを有効利用することが、地域の経済収支の改善につながり、雇用や防災にもつながる。

さらに、脱炭素型の交通政策や家づくり、街づくり、そして食料や木材も含めて循環経済を推進することで地域内産業を活性化し、地域の魅力と質を向上させることが可能だ。

つまり、「地域脱炭素は、地域課題の解決そして地域としての魅力向上につながる地方創生に向けた取り組み」(小泉進次郎環境大臣)であり、「脱炭素と地方創生を同時に実現するためのカギを握るのが、再生可能エネルギー」(小泉環境大臣)ということだ。

地域脱炭素を実現するための取り組みとは

「国・地方脱炭素実現会議」地域脱炭素ロードマップ(案)

ロードマップでは今後の5年間を集中期間として、政策を総動員して地域脱炭素の取り組みを加速させ、少なくとも100カ所の脱炭素先行地域で2030年度までに脱炭素を実現させることを計画している。農山漁村、離島、都市部の街区において、多様な脱炭素の姿を示し、それを全国各地に広げていく。

ロードマップでは、重点施策として、自家消費型の太陽光発電など再エネ活用、住宅や建築物の省エネ、ゼロカーボン・ドライブ、資源循環などの重点施策をあげている。

小泉環境大臣は「地域内の再エネの最大限の活用と、住宅やビルの省エネの徹底などにより、民生部門の電力消費に伴うCO2排出を実質ゼロにする。さらに自動車の燃料や熱などのエネルギーからのCO2排出も、可能な限り削減していただく」と脱炭素先行地域の基本的な要件について第2回の「国・地方脱炭素実現会議」で述べた。

提案された具体的な取り組み内容例は幅広く、特に国内ではこれまであまり注目されていなかった太陽熱、地中熱、バイオマス、下水熱や熱電併給などの熱利用についても言及されていることも注目すべき点だ。

地域脱炭素を実現するための取り組み

「国・地方脱炭素実現会議」地域脱炭素ロードマップ(案)より

地域の自治体、金融機関、企業が地域脱炭素のエンジン

「国・地方脱炭素実現会議」地域脱炭素ロードマップ(案)

小泉環境大臣は国・地方脱炭素実現会議において地域脱炭素を実現するための主体について、「地域脱炭素の主役は、国ではなく地域。自治体、金融機関、中核企業などが核になって、多様な企業や公共セクターが参画して連携する体制が、地域脱炭素のエンジンになる」と説明した。

同会議では、地域脱炭素の取り組み事例として、長野県などで実施している省エネ住宅政策、京都市などで実施しているフードロス対策、横浜市で実施している東北地方の市町村との再エネに関する連携協定なども紹介された。

資金面については、「豊富な民間資金を引き出す呼び水として、国が継続的に複数年にわたって、包括的に個別対策を組み合わせた地域の脱炭素パッケージのような形で、資金を支援するメカニズムを検討したい。特に国の地方支分部局が中心となって、縦割りを排して水平連携しながら、ヒト・モノ・カネの面から積極的に支援をしていきたい」(小泉環境大臣)と話した。

この取り組みを進めるために、国では温暖化対策法改正法案を活用して、未利用地の再エネ活用の促進区域を設定する「ポジティブゾーニング」や洋上風力や地熱発電の加速化などの制度面の整備についても合わせて推進していく予定だ。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/