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WWF(世界自然保護基金)とトヨタ自動車は7月20日、持続可能な社会の実現に向けて、5年間のパートナーシップを開始したことを発表した。2015年10月に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」達成に向けた取り組みの一環となる。トヨタは2016年に100万米ドル(約1億円)を「生きているアジアの森プロジェクト」に助成する。(オルタナ副編集長・吉田広子)
トヨタは自動車業界として世界初、日本企業としては初のWWFグローバル・コーポレート・パートナーシップとなった。
現時点で世界に約30社のパートナーがいるが、「応募してもらってもなかなか通らないくらい厳しい審査がある。自動車産業は環境負荷が高く、連携することに反対意見もあったが、トヨタの本気を感じて締結するに至った」(WWFジャパン筒井隆司事務局長)という。
生物多様性保全に1億円
今回のパートナーシップでは、生物多様性の保全と気候変動対策が主な柱になる。気候変動対策では、「CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けて、「サイエンス・ベースド・ターゲット」(科学と整合した目標設定)に参加登録した。
今回のパートナーシップでは、生物多様性の保全と気候変動対策が主な柱になる。気候変動対策では、「CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けて、「サイエンス・ベースド・ターゲット」(科学と整合した目標設定)に参加登録した。
生物多様性の取り組みとして、トヨタは「生きているアジアの森プロジェクト」を支援する。活動地域はWWFが優先保全地域に指定しているインドネシア・ボルネオ島(カリマンタン)とスマトラ島で、3年後にはメコン地域にも拡大する予定だ。
これらの地域は、木材や紙原料、パーム油、天然ゴムなどの生産地であり、森林が激減している。スマトラでは30年間で約半減、ボルネオでは25年間で約3分の1にまで減少した。もちろん日本も消費国の一つだ。
同プロジェクトでは、絶滅危惧種の調査や密猟防止のためのパトロール、森林再生のほか、環境教育など包括的な取り組みを実施する。2016年の支援金は約1億円。大規模なプロジェクトだが、どのように効果を測定していくのか。
WWFジャパン筒井事務局長は、「できるだけ数値化して情報共有に努めていく。例えば、自然林のサイズを図って減少が進んでいないことを確認したり、密猟の数や特殊なカメラを使って生き物の生息調査をしたりする」と話す。
天然ゴムの調達基準の策定目指す
タイヤの主要原料となる天然ゴムの持続可能性も問題視され、ゴム園の開発で森林や生態系の破壊が進んでいる。2050年には自動車の保有台数が2010年の2倍超に増加するとされ、天然ゴムの需要はさらに拡大すると予測される。
WWFは天然ゴムの持続可能性に関する国際基準を策定するために、マルチステークホルダーとの協議を推進し、日本の利害関係者との対話と調整を行っていくという。すでに仏ミシュランと長期的な協力関係を締結している。筒井事務局長は「将来的に持続可能なタイヤの比率を高めていきたい」と意気込む。
トヨタ自動車の根本恵司環境部長は「今年1月に『グリーン調達ガイドライン』を改訂し、環境項目を拡充した。天然ゴムの調達については、すべてをトレース(追跡)できてはいない。一義的にはタイヤ・ゴムメーカーの問題だが、サプライチェーン全体で持続可能な調達を目指していきたい」と語った。
吉田 広子(よしだ・ひろこ)
株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。