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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
細田悦弘のサステナブル・ブランディング スクール

第21回 コンシャスな消費者が振り向く!サステナブル・ブランド

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

世界の消費トレンドの一つとして、「コンシャス・コンシューマー」が増えています。環境や社会に対してよい影響を与えたいと考え行動する、コンシャスなライフスタイルを志向する人には、サステナブル・ブランドが似合います。

コンシャスなライフスタイルとは

国際的な市場調査会社であるユーロモニター社が2019年に発表した「世界の消費者トレンドTOP10」では、消費トレンドのひとつとして「コンシャス・コンシューマー(Conscious Consumer:課題意識の高い消費者)」をあげています。自分の消費行動がもたらす結果まで考え、なるべく負のインパクトを環境や社会に与えない選択肢を求める人を意味します。環境や社会に対してよい影響を与えたいと考え行動する人は、コロナ禍を経て、ますます世界的に増えているようです。人気セレブやSNSも影響しています。

「コンシャス」という言葉には、意識が高い、思慮深いという意味を含有します。コンシャスな消費とは、人や自然環境、社会を意識した生活や消費行動を指します。コンシャスなライフスタイルを取り入れている人は、自分や周囲の人、社会に良い影響があるかを考えて生活をし、商品サービス、企業やブランドを意識的に選び、購入する暮らし方を志向します。

UBS証券の「Japan ESG Consumer PulseCheck調査」においても、予想以上にコンシャス消費への意識が高いことが示されました。コロナ禍を経て、サステナビリティやESG・SDGsへの関心が一層高まる中、「環境に配慮した商品」や「社会的責任を果たしている企業」に対して多くの消費者がプレミアム(より高い価格)を支払うとの結果が得られたことが注目に値します。とかく低価格志向の根強く価格競争に巻き込まれる企業が多い中、環境や社会性の付加価値が高い評価を得たことは特筆すべきです。企業はESGに積極的に取り組んで発信すれば、価格プレミアムを手中にでき、レッドオーシャン(血みどろの価格競争)から脱出できる可能性を示唆しています。

その代表例ともいえるプレーヤーが、ファーストリテイリングです。傘下のユニクロが昨秋発売した「リサイクルダウンジャケット」が注目されました。店舗で回収したダウンジャケットの素材を利用した商品で、人気を博しました。

資本主義は生産→販売→消費といった基本サイクルのもと、その過程で環境破壊と廃棄が増大し、周囲にマイナス影響をもたらす「外部不経済」を拡大させてきました。とかく大量の廃棄物が懸念されるアパレル産業において、使用する素材やエネルギー、廃棄物を減らしつつ、顧客の支持を増やす経営にシフトしていかない限り、持続可能な経営は不可能です。「リサイクルダウンジャケット」は、買い求めやすい価格であり、有名デザイナーを起用したファッション性といった商品競争力はあるにせよ、コンシャスな消費者の琴線に触れたことは確かでしょう。

トップがサステナビリティの重要性を強く打ち出していることも重要です。ファーストリテイリングは、英アビバ・インベスターズなどの資産運用会社が人権NGOと協力して実施している「企業人権ベンチマーク」(CHRB)の最新の2020年版調査において、26点満点で19.5の高評価を受けています。人権面においてもリスクが取沙汰されるアパレル業界ですが、「ユニクロ」などの主要ブランドに関して、サプライチェーンの透明化に向け、アジア全域で取引する主要縫製工場のリストを公開してきています。2022年3月をめどに、公開対象の工場を全ブランドに広げようとしています。こうした取り組みは、投資家だけでなく、あらゆるステークホルダーによる企業評価にますます反映されていくでしょう。

Z世代とコンシャス・コンシューマリズム

コンシャスがトレンドとなる中、特に未来の消費を担う「Z世代」といわれる若年層は、デジタルネイティブでSNSでの結び付きが強く、環境や社会性の付加価値に対する意識も際立って高く表れているようです。とりわけ昨今は、「持続可能な開発目標(SDGs)」が企業とZ世代との共通言語となっています。中学受験学習塾の日能研がSDGsのテキストを発行していることもよく知られています。小学生にも知ってもらい、さらに自分で考え、取り組んでほしいという願いをこめて、小学高学年生であれば一人でも読み進められるように、難しい漢字にはルビがふられています。もちろん有名私立中学では、SDGsを授業に取り入れたり、入試問題としても出題しています。

現代企業にとって、ESG・SDGsに取り組むことは投資家による評価に留まらず、コンシャス・コンシューマリズム(意識の高い消費者行動)を長期的に高める可能性があり、ひいては「就活学生」への共感を獲得し、採用ブランドを高める効果も期待できるのです。

「意識の高い企業」のブランディング

企業は株主や顧客のみならず、社員、サプライヤーといった広くステークホールダーに支持をされてこそ存続できます。すなわち、顧客ロイヤルティのみならず、ステークホルダー・ロイヤルティを獲得できる企業であることが重要です。「意識の高い企業(コンシャス・カンパニー)」のブランディングこそが、サステナブル・ブランディングといえましょう。環境や社会に対してよい影響を与えたいと考え行動するコンシャスなライフスタイルをとる人には、サステナブル・ブランドが似合います。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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