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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
細田悦弘のサステナブル・ブランディング スクール

第17回 サステナビリティ時代が生み出す「ゼブラ企業」

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

ゼブラ企業をご存知でしょうか。ユニコーン企業が注目されていますが、コロナ禍を経て、企業の「社会性」が強く求められている今日、ゼブラ企業を後押しする気運が高まっているようです。

「ゼブラ企業」って?

サステナビリティ重視の潮流とコロナ禍が相まって、企業の成長と社会課題解決の両立を目指す「ゼブラ企業」が存在感を高めています。経済性と社会性、一見相反する2つの目標を追う姿は白黒模様のシマウマにたとえられます。既存産業を破壊してでも急成長を追う「ユニコーン」へのアンチテーゼから生まれたといわれています。

ユニコーン企業とは、「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー」といった4つの条件を満たした企業のことを指します。ユニコーンは神話に出てくる伝説の生き物であることから、こうした条件を満たす大成功した希少性の高いスタートアップをユニコーン企業と呼ぶようになりました。想像上の生き物らしく、飛びぬけた力を有し、市場の独占をもいとわず、激しい競争の世界に身を置きます。したがって、株主利益や企業規模などの量を基軸としており、ともすると成長のためなら社会的・倫理的側面が軽視される傾向も見受けられます。

これとは対照的に、ゼブラ企業は持続可能な発展やステークホルダーとの共存を重視します。

高い成長率を約束するユニコーンを目指さなくても、着実に事業を通じて社会課題解決に取り組む、地に足のついたリアルな存在です。持続化可能な発展を求め、社会(ステークホルダー)との共生を心がけ、経済性と社会性の両立という事業の質を重視します。

ユニコーン企業を否定するわけではなく、コロナ禍を経てますます企業の「社会性」が強く求められている今日、時代の価値観がゼブラ企業を育もうとする気運には注目する必要がありそうです。「ゼブラ企業」という考え方を提唱したゼブラズ・ユナイトは、米国を拠点に教育やジャーナリズム等の事業に関わる4人の女性起業家が2017年に立ち上げました。いま、共感する多くの起業家や投資家たちが、この考え方を広めるようとする動きがあります。新型コロナウイルス感染症拡大後の社会においては、大型の資金調達や新規株式公開(IPO)だけがスタートアップではなく、持続可能な社会をつくり出す企業の登場も大いに期待されています。

ゼブラ企業とサステナビリティ

ユニコーン企業は、急成長や短期的なハイリターンを求める傾向にありますが、ゼブラ企業の経営スタイルは、ミッションを実現するために他企業とも協調し、持続的成長を目指します。スタートアップというと、資金調達を繰り返し、上場や売却を目指すイメージが強いですが、ゼブラ企業は、短期的な目線ではなく、中長期的に社会にとって価値提供できる企業を目指す新しいスタイルのスタートアップの形態といえます。もちろんユニコーン企業がたくさん出現することは経済的側面では望ましいことですが、ゼブラ企業はサステナビリティ重視の時代的価値観に適合するコンセプトであり、今後ますます存在感を増していくことでしょう。

ゼブラ企業とサステナブル・ブランディング

サステナブル・ブランディングは、「事業活動と社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す」戦略メソッドです。事業に社会課題解決を融合し、自社の強みや持ち味を生かした資源を投入し、戦略的に取り組みます。

この図が、「事業活動×社会課題解決×自社らしさ」の3要素を掛け合わせた「サステナブル・ブランディング」のフレームワーク(3つの輪の図)です。

「事業戦略」に「社会課題解決」を組み込んだ青と緑の輪が重なったポジションが、「ゼブラ企業」です。事業活動に、戦略的に「社会性」を織り込むことによって、それがレバレッジとなります。こうしたアプローチにより、現下の社会の要請や期待を先取りし、それをいち早く、新しい価値創出や新しい市場開拓に結びつけ、イノベーションが促され、企業競争力につなげていきます。「社会課題がビジネスにつながる」という、クリエティティブで戦略的な視点、「ビジネスを社会課題解決につなげる」という志の高い気概を併せ持つことが大切です。「企業と社会の価値共創」「企業と社会の相乗発展」のメカニズムを築くことによって、企業の持続的成長とより良い社会の両立の実現に結びつきます。

ゼブラ企業であることが、サステナビリティ時代にふさわしいビジネスに磨きをかけ、その上で「自社らしさ」(赤い輪)が触媒になることで「差異化」が実現します。この3つの輪が重なった、真ん中の「★」がサステナブル・ブランディングであり、時代が求める競争優位の源泉です。サステナブル・ブランディングは、時代と適合した、時代と調和した、時代を味方につけたブランディングです。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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