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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
欧州サステナビリティ最前線

世界における持続可能な綿花・サステナブル・コットンの潮流

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SB-J コラムニスト・下田屋 毅

世界的な綿花に関わる環境や社会問題を解決するにあたり、「コットン2040(Cotton2040)」というイニシアチブがある。この「コットン2040」は、英国NGOであるフォーラム・フォー・ザ・フューチャーが中心となり進めている世界的なマルチステークホルダーによるイニシアチブで、ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)、テキスタイル・エクスチェンジ、フェアトレード、コットンメイドインアフリカ、コットン・オーストラリアなど、綿花に関わる世界の主要団体との協働を行っている。そして今後数十年間にもたらされる地球規模での課題に対応するために、地球全体での綿生産に関わるシステムや、綿・アパレル業界の従来の生産やビジネスを含む仕組みを大きく変化させることを目的に開始されているのである。

現在世界では、綿花の生産に大量の農薬や石油系の化学肥料が使用されている。綿花生産には世界の耕地の2.5%が使用され、そこに世界で生産された農薬や化学肥料の10%が使用されている。そして農地で不適切にまた過度に農薬や化学肥料が使用されると、それが水源を著しく汚染することにつながるとともに、土壌の肥沃度を低下させ、さらに農家で働く労働者の健康、また生物多様性にも著しく有害な影響を及ぼしているのである。そしてそれら農薬、化学肥料の使用が、大きく気候変動に影響を与える温室効果ガスの排出を助長しているとされている。また、社会問題も同じく発生しており、2016年に米国労働省は、中国、インド、パキスタン、ブラジルの6つの生産国を含む18カ国の綿花の生産のプロセスには児童労働や強制労働が存在すると報告している。

このような綿花の栽培の課題として、「小規模農家の低所得」「不安定な収入」「強制労働と児童労働」「土壌の枯渇」「価格の変動」「不確実な市場」があり、さらに気候変動は世界中の農業生産に影響を与え始めていて、この混乱は加速している。降雨パターン、水の利用可能性、気温上昇の変化、これらが一部の地域で綿花の生産に大きな課題を生じさせている。また今後、人口増加により食料・燃料の需要が増えることで、農地の需要は、繊維生産よりも優先されるということも予測されている。このように綿花はリスクに対して非常に脆弱で、脅威にさらされているのだ。

またこれら綿花の栽培に関することは、ほとんど海外で発生している環境・社会問題で、企業のサプライチェーンの最上流で発生していることである。日本の企業また消費者は、これら農家の環境・社会問題まで認識していない状況であり取り組みがあまりなされていない。しかし、その綿花生産が3億5000万人以上の生計を支え、その中には80か国以上で5000万~1億人の農家がいるのである。

そのような状況で、世界的なイニシアチブである「コットン2040」は、2015年からサステナブル・コットン(持続可能な綿)という持続可能な方法で製造された綿の認知度と普及をさらに行い、ブランドや小売業者に対してもその調達を行うことを世界的に促している。サステナブル・コットンは、重要な天然繊維を継続して提供し、これらのサプライチェーンの最上流に位置する農家の生活を支え、持続可能で健康な環境を促進する可能性がある。

このコットン2040は、コットンのバリューチェーンに体系的な変化をもたらす可能性が最も高い協働の優先分野を特定している。
優先分野は、

「サステナブル・コットンに対する需要を作りだすこと」
「コットンのトレーサビリティを容易にすること」
「比較可能性の向上」


である。「コットン2040」は、日本での活動を推進するにあたり、サプライチェーン上の課題解決を行うNGOであるASSCと協働している。ASSCは「コットン2040」の世界的な動向を伝えるとともに、日本の綿花関係の組織や企業とともにサステナブル・コットンを使用していくシステムを作り出すという世界共通の目標を共有し、将来的なの供給を確保していく。

この「コットン2040」とASSCの協働により、日本においては2020年にイニシアチブを立ち上げて、日本の企業・消費者にサステナブル・コットンの普及をさらに促し、間接・直接的に綿花農家や国内外のサプライチェーン上の工場の環境・社会課題へ貢献し、世界的な目標を達成していくことを考えている。

その一環として2018年6月にはコットン・アップ・ガイド(www.cottonupguide.org)というサステナブル・コットンの概要を説明するサイトを立ち上げている。そこには世界の綿花に関わる環境・社会課題や現在のサステナブル・コットンの基準の比較表などが掲載されており、現時点での綿花に関する情報が集約されているものだ。2019年12月現在、コットン・アップ・ガイドの和訳の準備を進めている。この和訳版については、2020年初頭に綿に関わる企業・組織のロゴとともに公開を予定している。
(関心のある企業、組織の方はお問い合わせください : info@g-assc.org)

2020年から始まる世界的なコットンのイニシアチブのコットン2020との連携を行う日本イニシアチブに関連する企業は是非参加の検討をお願いできればと思う。

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下田屋 毅
下田屋 毅 (しもたや・たけし)

サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。

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