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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
細田悦弘のサステナブル・ブランディング スクール

第3回 広報のためのサステナブル・ブランド戦略 入門 (3)

SB-J コラムニスト・細田 悦弘

大泉洋さん主演のTBS日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」が好評放映中です。主人公のラグビー部GMが孤軍奮闘しながら絞り出すアイデアやポリシーに、企業の「社会貢献」のあり方の真髄が読み取れ、心に響きます。

池井戸潤 原作「ノーサイド・ゲーム」

TBS系列・日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」は、大泉洋主演×池井戸潤原作によるラグビーが題材の人気ドラマです。

大泉さんが演じるのは、大手自動車メーカー「トキワ自動車」の中堅サラリーマン・君嶋隼人。君嶋は、早くから幹部候補と期待されていましたが、上司が主導する企業買収に異を唱えた結果、不本意ながら工場の総務部長への辞令を受けます。やるせない思いで異動先に赴いたところ、トキワ自動車ラグビーチーム「アストロズ」のゼネラルマネージャー(GM)を兼務するよう命じられます。かつては強豪チームだったアストロズですが、今となっては成績不振にあえいでいました。こうして知識も経験もない君嶋にチーム再建という重荷が課せられました。低迷するラグビー部と失意の君嶋が、再起をかけて戦います。

君嶋GMの熱いメッセージに学ぶ!「ボランティア」をやる意味

現状のアストロズの試合は、いつもスタンドはガラガラ。主人公の君嶋は「強いチーム」とともに、「愛されるチーム」づくりが必要不可欠であると決心します。アストロズのファンクラブを結成し、地域に愛されることを目指します。そのため、ボランティアに積極的にアストロズを関わらせることを提案しますが、選手からは不満が続出します。

開幕戦を控えたある日、君嶋GMは居酒屋に選手を集めます。選手たちは、「練習しなきゃいけないんだ。ボランティアなんかやってる場合じゃないんですよ」と訴えます。

そこで君嶋は、ボランティアに協力することを渋る部員に、「ボランティアをやる意味」を熱く説きます。

〈君嶋GMから選手たちへのメッセージ〉

「アストロズは成績が悪いだけでなく、観客動員も不振である」

「君たちにもっと大勢のファンの前で試合をしてほしい。そのためには地元にアストロズを認知してもらい、関心を持ってもらい、応援してもらわなければならない」

「私の目標はトキワスタジアムを満員にすることだ。その理由は、もちろんチケット収益を得るためだ。しかし、もう一つある。未来への投資だ」

「地元に愛されず、子供たちにラグビーが見向きもされなくなれば、日本のラグビーは終わる」

「会社の予算に依存するだけの社会人ラグビーなど消えてなくなる」

「子供たちに夢を!一人でも多くのラグビー好きの子供を増やさなければ。そのために地元と触れ合い、アストロズを覚えてもらい、できれば観戦に来てもらいたい」

「君たちにボランティアや学校訪問を頼んでいるのは、ラグビーを守るためだ。そうすることで、少しずつだがアストロズは地元のチームになる」

「みんながアストロズを応援して、我々の勝利を後押ししてくれる。そして我々は、その人たちのために戦うことができる。そういう大きな家族のような関係を作りたい」

「それは将来、君たちが与えたものの何倍も大きなものになって返ってくるはずだ」

「今や、グラウンドだけが君たちの戦場じゃないんだ!」

そして開幕戦を迎えます。どうせいつものように空席だらけと思ったら、地域の商店街、老人ホームのお年寄り、子供たちが大挙して応援に来てくれました。ファンクラブ会員も激増しました。

このような成果は、ラグビーチームの「勝利」を目先の試合だけに焦点を当てず、チームとラグビー競技が愛されることが、中長期の持続的な成功をもたらすという道筋を明らかにしています。早い時点から地域に入り込み信頼や愛着を得ることが、ファンづくりや将来のラグビー選手を育む基盤となります。もちろん、母体である「トキワ自動車」の名を上げ、企業ブランド向上につながります。

通常の社会貢献と戦略的社会貢献

ボランティアなど「社会貢献」というと、事業所周りの清掃や地域祭りへの参加といったお付き合い的な要素が強いようですが、企業市民(Corporate Citizenship)として、とても大事な活動です。これが、通常の社会貢献活動の概念です。

前回(第2回)、「事業活動」×「サステナビリティ要素(現代社会からの要請・期待)」×「自社らしさ」の3要素を掛け合わせた、「サステナブル・ブランディング」の独自のフレームワーク(3つの輪の図)をご紹介しました。「サステナブルブランディング・フレーム」においては、緑の輪(プレーンな緑)の部分に位置づけられます。

そして、戦略的な社会貢献は、事業の将来的発展に寄与する活動と捉えることができます。

たとえば地域密着型の事業を展開している企業の場合は、地域住民は、顧客でもあり、従業員でもあり、将来の従業員でもあり、取引先でもあり、さらには株主でもあるわけです。こうした観点から、多面的な住民で構成される「地域社会」のために行う活動が、企業の好感度や信頼度を高め、持続的成長・中長期の企業価値向上に結びつきます。この概念は、「戦略的コミュニティ活動」と位置付けることができます。

アストロズの君嶋GMの熱いメッセージは、この双方の「社会貢献」の真髄を見事に射貫いているといえましょう。

『ならではの』社会貢献

上記の社会貢献をさらにバージョンアップすれば、社会に喜ばれ、ブランド力に資する『ならではの』社会貢献活動となります。それは、『自社らしさ』を発揮することです。フレーム図の赤と緑の重なった「①」のゾーンが、自社らしい社会貢献活動です。これは、「自社らしさ」×「サステナビリティ要素(現代社会からの要請・期待)」を意味します。

『自社らしさ』を活かしたプログラムが開発できれば、実は最も経営効率のよい社会貢献となります。つまり、単なる他社マネや横並びで、見よう見まねの不慣れな取り組みをすると、思わぬリスクに晒されることもあり得ます。海の者が不用意に山に登れば、高山病になるかもしれませんし、山の者がいきなり海へ飛び込めば、溺れるかもしれません。解決能力が未熟な分野での取り組みは、かえってリスクとなります。逆に、『売るほどある』商品・サービス、それにまつわる「餅は餅屋」の専門性・知見・ノウハウが投入されれば、最も経営資源が有効に、安全に活用されることになります。そして、ブランドイメージに寄与します。

広報部門においては、企業理念やミッションとの整合性を担保し、得意技や伝家の宝刀による社会貢献を行い、結果として、コーポレートブランドや企業価値の向上につなげていくという骨太なストーリーで語りたいものです。

☆編集部からお知らせです。
来月、細田さんの初心者向け講座「目からウロコのCSR超基礎」が開催されます。
「CSR/CSV/ESG/SDGs」を体系的に理解したいけれど、とっつきにくいとお考えの方は、以下より詳細をご覧下さい。
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=15057

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細田 悦弘
細田 悦弘 (ほそだ・えつひろ)

中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 キヤノンマーケティングジャパン(株)入社後、営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において、豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

中央大学ビジネススクール 戦略経営アカデミー講師、一般社団法人日本能率協会 主任講師、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、経営品質協議会認定セルフアセッサー、 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト。社内外のブランド・CSRのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:CSR、ブランディング、コミュニケーション、メディア史
◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~ ) など。

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