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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
細田悦弘のサステナブル・ブランディング スクール

広報のためのサステナブル・ブランド戦略 入門(2)

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

先月開催されたトヨタ自動車の株主総会における豊田章男社長のメッセージが、サステナブル・ブランド戦略において、示唆に富む内容でした。ビジネス×サステナビリティ要素×自社らしさ=選ばれ続ける会社。今回は、これを可視化した「サステナブル・ブランディング」の戦略フレームをご紹介します。

「モビリティ」と「トヨタらしさ」が、サステナブル・ブランドへ

トヨタ自動車の豊田章男社長は、昨年5月の決算説明会で、トヨタを「自動車をつくる会社」から「モビリティ・カンパニー」にモデルチェンジすると宣言し、我々が目指す「モビリティ・カンパニー」とは、世界中の人々の『移動』に関わるあらゆるサービスを提供する会社であると表明しました。

これを受け、先月13日に開催された定時株主総会の終わりに、議長を務めた豊田社長は次のようなメッセージを発信しました:「モビリティ・カンパニー」 へのフルモデルチェンジは、私の在任期間中にできることではないが、『トヨタらしさ』を取り戻すこと、『企業文化の再構築』は、私の代でやりきる覚悟である。

商品・サービスが、より企業ブランドで選ばれる時代。企業広報の観点からは、トップには、自社が提供する価値や思想を熱く語る伝達者としての役割がますます期待されています。そして、サステナビリティへの意識が一段と高まる今日において、企業の社会に対する責任の「顔」として、トップが語る哲学や信条が、その会社の良心として力強く社会に発信されます。

豊田章男社長が発した、「社員みんなが、佐吉翁の豊田綱領、創業の精神、社会の公器としての自覚を持つべき」という言葉には重みがあります。これこそが、ESG投資の観点からは重要な非財務的要素であり、これからもトヨタブランドの芯や背骨となるものでしょう。

「サステナブル・ブランディング」フレーム ~★(レッド・スター)を目指そう!

トヨタ自動車は、「自動車づくり」から「モビリティ」へのビジネスモデルの転換によって、自動車を巡る環境問題、高齢者ドライバー等の社会課題に対応し、それを『トヨタらしさ』で実現するという文脈は、「サステナブル・ブランディング」のフレームに当てはまります。

企業ブランディングに、サステナビリティ要素で現代的意味づけを行い、時代が求める価値を『自社らしく』提供し、社内外のあらゆるステークホルダーと良好な関係性を構築していく。これが、私の提唱する「サステナブル・ブランディング」のコンセプトです。

サステナブル・ブランディングは、「ビジネスと社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す」戦略メソッドです。事業戦略にサステナビリティ要素(環境・社会面等、現代社会からの要請・期待)を融合し、自社の強みや持ち味を活かした資源を投入し、戦略的に取り組む。それにより、社会からの信頼とリスペクトを獲得しながら、コーポレートブランドが高まり、企業価値向上につながります。本メソッドは、「時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業」であるための気付きや経営戦略の切り口として役立ちます。

それでは、「事業活動×サステナビリティ要素×自社らしさ」の3要素を掛け合わせた、「サステナブル・ブランディング」の独自のフレームワーク(3つの輪の図)をご紹介します。

これまでの「事業戦略」に「時代の要請や期待」を組込み、時代にふさわしいビジネスとして磨きをかけ、その上で、「自社らしさ」が触媒になることで「差異化」が実現し、競争優位につながります。この3つの輪が重なった、真ん中の「★(レッド・スター)」こそが、時代が求める競争優位の源泉といえます。最終的に競争力となるのは、他社との「違い」をつくることです。脈々と培ってきた経営に、今の時代の3つのキードライバーを注ぎ、磨きをかけることが「サステナブル・ブランディング」のねらいとなります。

このフレーム図は、それぞれの「輪の重なり」がポイントとなります。すなわち、「①・②・③・★」です。

① 赤と緑の重なり:「自社らしさ」×「サステナビリティ要素(現代社会からの期待)」 … 自社らしい社会貢献活動
② 青と緑の重なり:「事業活動」×「サステナビリティ要素(現代社会からの期待)」 … CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)
③ 赤と青の重なり:「事業活動」×「自社らしさ」… 自社の持ち味を活かしたマーケティング活動、ブランディング活動
★3つの輪の重なり:「事業活動」×「サステナビリティ要素(現代社会からの期待)」×「自社らしさ」 … サステナブル・ブランディング

ビジネス×サステナビリティ要素×自社らしさ=選ばれ続ける会社。この成功方程式を可視化したものが、「サステナブル・ブランディング」の戦略フレーム(3つの輪の図)です。

時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業であるために、★(レッドスター)を目指しましょう!

次回からは、このフレームをもとに、活動の切り口や事例、知っておきたい関連知識等をご紹介していきます。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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