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サステナビリティ 新潮流に学ぶ

第28回: 世界が直面する課題とは?~G20に向けた市民社会(C20)の提言~

SB-J コラムニスト・古沢 広祐
C20からG20へ、政策提言を阿部俊子外務副大臣(右端)に手渡す (4月22日、筆者撮影)

リーマンショック(2008年)を契機に、主要国首脳会議(G7)の存在感がうすれ、G20(先進国に新興国を加えた主要20か国)が世界をリードする時代となりました。日本で初会合となるG20大阪サミット(6月28・29日)を前に、C20サミット(市民組織の国際ネットワーク)国際会議が東京で開催されました(4月21~23日)。

政府会合だけに任せない

G20は政府間の会議なのですが、市民社会やビジネスセクターなど様々なセクターの声をG20に届けるために7つの関係組織(エンゲージメント・グループ)が結成され、各組織が提言や声明をまとめて開催国の首脳との対話が行われてきました。

こうした動きは、地球サミット(国連環境開発会議、1992年)を契機に世界問題を各国政府だけの議論でなく、広範な関係組織(NGOなど主要グループ)の関与を進めてきた潮流の現れです(連載コラム第2回参照)。

世界が直面する諸課題は、もはや政府だけは解決しがたい時代となってきたのです。G20でも、エンゲージメント・グループとして、経済団体(B20)、市民社会(C20)、労働組合(L20)、科学者(S20)、シンクタンク(T20)、都市(U20)、女性(W20)、ユース(Y20)ができており、近年G20で議論される主要分野について各グループが提言を出してきました。

今回のC20サミットは、世界40か国の市民社会組織(CSO)の代表が集まり、9つの全体会、17の分科会がもたれて幅広い議論がくり広げられました(約850名参加)。

G20に向けた「市民の政策提言書」は、声明、東京民主主義フォーラム宣言、10の政策提言(1. 腐敗防止、2. 教育、3. 環境・気候・エネルギー、4. ジェンダー、5. 国際保健、6. インフラ、7. 国際財政構造、8. 労働・ビジネスと人権、9. 地域から世界へ、10. 貿易・投資の課題)とデジタル経済に関する提言からなります。ワーキンググループが、世界各国・地域の600を超えるCSO関係者と議論を重ねて、広範な政策提言書をまとめたのでした(全64頁)。
参考:C20日本サイト

すでに関係組織としては、S20が海洋プラスチック・気候変動問題について(3月6日)、B20がSDGs(持続可能な開発目標)とソサイエティ5.0について(3月14・15日)、W20がジェンダー平等などについて(3月23・24日)、それぞれ提言を出していますが、C20からの提言書は広範な問題についてラディカルな提起として注目されるものです。

SDGs「ゴール16」の実現が鍵をにぎる

その内容は細かく紹介できませんが、ここではとくに注目すべき提言をトピック的に取り上げましょう。

世界が直面する個別の課題は山積み状態なのですが、根源的な問題解決の糸口としては、SDGsゴール16(平和・公正)こそが重要だと指摘しています。

すなわち、「平和で包摂的な社会の実現・公正で民主的な司法と制度の構築」こそ出発点だというのが基本的認識です。この当たり前のことが、世界では決定的に欠けている、未達成どころか制限され後退している(図1、CIVICUS Monitor)というのが、市民社会組織が懸念する注目点なのです。

図1 市民社会が後退している世界地図  出所:分科会での資料、CIVICUS Monitor

「みんなが幸せになる世界」の実現に向けて世界が合意した国連のSDGsですが、テロ事件や政情不安、難民増加、自国優先と差別意識、貧富格差、言論抑圧、財政逼迫など、課題が山積しています。

G20では、表向きは国際協調やイノベーションによる経済成長と繁栄といった事柄が、これまでも語られてきたのですが、具体的な成果は不透明のまま一進一退といった状況です。

SDGsの取り組みの重要性もG20で語られてきましたが、その達成には毎年5~7兆米ドルもの巨額な資金を要することが大きな壁となっています。その点に関して、実はSDGsゴール16に関連する課題の一つ「腐敗の防止」への取り組みこそが重要だと市民組織は主張します。

試算では政治汚職やインフラ投資・整備での汚職・腐敗問題は世界全体で数兆米ドル規模になると推定しているのです。情報アクセス権の拡大や内部告発の保護・権利などが急務だとして提言しています。

同じく租税制度に関する公正さの確立は、さらに重要な課題だと指摘しています。パナマ文書やパラダイス文書などで近年注目されたタックスヘイブン(租税逃れ)問題に関して、回避されている租税金額は、21~32兆米ドルもの巨額に達していると推定されるからです(図2、Tax Justice Network)。

図2  世界の金融資産の総額、1割近くがタックスヘイブン
出所:分科会での資料、SOMO (Centre for Research on Multinational Corporations)

さらに最近注目され出したGAFA(巨大IT企業)に関するデジタル課税、プライバシー保護、透明性と社会的責任なども重要な課題です。G20に対しては、小手先の調整策にとどまらずに、金融フローの透明性の確立、多国籍企業の課税・ガバナンス改革、潜在化する金融危機・債務問題など、抜本的な対応策を求めているのです。

いずれにしても、各国政府の狭い国益的な利害を超えた市民組織だからこそ鋭い問題提起ができるわけで、対処療法ではない根本問題に切り込むラディカルな姿勢が注目されます。G20に向けた国際世論のこうした革新的な声(政策提案)には、大いに期待したいところです。

とりわけSDGsの17の大目標では、あまり注目されにくかった「ゴール16」(平和・公正)ですが、G20の諸会合(各地で8つの関係閣僚会合が予定)でその重要性が議論されるかどうかについては、着目したいポイントです。

メインで予定されるG20大阪サミット(6/28・29)には、多くのマスコミや世論が注目するでしょう。ぜひ国際的な市民社会(C20)の提言も参考に取り入れて、課題解決に向けたG20の議論が実りあるものになることを期待します。


*SDGsに関しては、以下の「サステナビリティ 新潮流に学ぶ」連載コラムを参照
・第1回:サステナビリティのルーツを探る
・第2回:サステナビリティのルーツを探る(2)SDGs採択の背景
・第6回:揺らぐ世界の底流に見えるもの(1)国連の新たな役割
・第7回:揺らぐ世界の底流に見えるもの(2)排他から包摂へ(国連2030アジェンダの核心)
・第15回:日本のSDGsモデル事例から、何をまなぶか?

*関連書籍、拙著『みんな幸せってどんな世界 共存学のすすめ』で全体状況を解説しています。

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古沢 広祐
古沢 広祐 (ふるさわ・こうゆう)

國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授。
大阪大学理学部(生物学科)卒業。京都大学大学院農学研究科博士課程(農林経済)研究指導認定、農学博士。
<研究分野・活動>:持続可能社会論、環境社会経済学、総合人間学。
地球環境問題に関連して永続可能な発展と社会経済的な転換について、生活様式(ライフスタイル)、持続可能な生産消費、世界の農業食料問題とグローバリゼーション、環境保全型有機農業、エコロジー運動、社会的経済・協同組合論、NGO・NPO論などについて研究。
著書に、『みんな幸せってどんな世界』ほんの木、『食べるってどんなこと?』平凡社、『地球文明ビジョン』日本放送出版協会、『共生時代の食と農』家の光協会など。
共著に『共存学1, 2, 3, 4』弘文堂、『共生社会Ⅰ、Ⅱ』農林統計協会、『ギガトン・ギャップ:気候変動と国際交渉』オルタナ、『持続可能な生活をデザインする』明石書店など。
(特活)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)理事、市民セクター政策機構理事など。
http://www.econorium.jp/fur/kaleido.html

https://www.facebook.com/koyu.furusawa

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