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サステナビリティ 新潮流に学ぶ

日本のSDGsモデル事例から、何をまなぶか?

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SB-J コラムニスト・古沢 広祐

【サステナビリティ 新潮流に学ぶ 第15回】第1回「ジャパンSDGsアワード」に12の受賞団体が選ばれました。モデル事例として、点から線に、そして面への展開が期待されています。同様の試みが、国連の呼びかけから、各国ベースで世界的に広がる潮流に期待がかけられています。

図の出典:外務省サイトより⇒ http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

現在、SDGsの取り組みに関しては、日本では首相官邸の下に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されています(2016年)。そして第1回「ジャパンSDGsアワード」として各部門で計12の受賞団体が選ばれました(2017年末)。具体的には、SDGs推進本部長賞(内閣総理大臣)賞に北海道下川町が選ばれ、副本部長賞としては(内閣官房長官)賞に、特定非営利活動法人しんせい・パルシステム生活協同連合会・金沢工業大学が、(外務大臣)賞に、サラヤ株式会社・住友化学株式会社が選ばれています。パートナーシップ賞(特別賞)としては6団体(吉本興業、伊藤園、江東区立八名川小学校、岡山大学、ジョイセフ、北九州市)が選ばれました。

推進本部長賞を受賞した下川町については、先に国内ESGニュースで紹介がありましたので、詳細はそちら(リンク)を参照ください。

多少つけ加えれば、日本の地域が抱えている諸問題を、エネルギー自給、雇用、社会・福祉支援など包括的に相互連携して、課題解決の成果をあげている点でしょう。その中核にはバイオマスの活用事業が取り組まれていました。(図1)

(出典:受賞団体の取組紹介より)

下川町は、小さな地方自治体の事例ですが、企業としては、副本部長賞を受賞したサラヤ株式会社と住友化学株式会社の取り組みがあります。住友化学の取り組みは比較的知られていますので、サラヤの取り組みを見てみましょう。

本業は、衛生用品と薬液供給機器等の開発・製造・販売です。評価された活動は、ウガンダとカンボジアにて、市民と医療施設の2方向から、手洗いを基本とする衛生の向上のための取組を推進したことです。「100万人の手洗いプロジェクト」として、商品の出荷額1%をウガンダにおけるユニセフの手洗い普及活動の支援に当て、衛生教育や衛生マニュアルを提供などに取り組んでいます。

さらに、 持続可能なパーム油類(RSPO認証油)の使用や、アブラヤシ生産地の生物多様性の保全に取り組むと同時に、消費者へのエシカル消費の啓発を実施しています。熱帯林の乱開発でパーム油(アブラヤシ)問題が注目されている今日、原料調達で生態系への配慮は必須となっています。

アワード選定の5つの評価軸は、普遍性、包括性、参画性、統合性、透明性と説明責任ですので、その内容を見ておきましょう。

(図2)簡易手洗い装置(ウガンダの学校)

普遍性:ウガンダにアルコール手指消毒剤を継続的に供給し、東アフリカの衛生向上と共に雇用も創出。
包摂性:「100万人の手洗いプロジェクト」をユニセフの支援を通じて実施。
参画型:生活用水が不足しがちなアフリカ諸国に対して、アフリカ製アルコール手指消毒剤を供給。
統合性:衛生への取組による多産から少子への移行、教育の機会確保、女性の社会進出というサイクルの実現。
透明性と説明責任:ウガンダやボルネオでの取組をサラヤの持続可能性レポート等で随時更新、公開。(図2)

サラヤの事例は本業をベースとしながらも、その延長に社会貢献として世界的な課題に取り組んで成果をあげていることです。SDGsに取り組む際、大きく2つの視点からの課題の抽出作業が重要です。それは、インサイド・アウト・アプローチとして、企業活動の内部からSDGsに結びつく問題や課題を抽出する作業と、アウトサイド・イン・アプローチとして、世界的な視点からの重用課題について何か取り組める課題がないかを抽出する作業です。

両方の視点から、取り組める目標課題を見いだすことで、新しく有意義な事業課題が生みだせれば、企業も、社会も、世界にとってもメリットが生み出されるわけで、サラヤはその好事例でしょう。とくに貧困に苦しみ取り残されがちな社会を包摂して、効果的な生活改善につながる活動展開が評価されています。先の下川町がローカルな取り組みとするならば、サラヤの事例はグローバルな展開の事例ということになるでしょう。

その他の受賞団体の事例も、それぞれに独自の展開をしており、様々な取り組みについて詳細を見る(リンク)ことでいろいろと参考になります。

こうした取り組みは、いわばモデル事例から、点を線に、そして面への展開が期待されている流れになります。これらの取り組みが、内外に発信されて広がっていくとともに、さらに、国連の呼びかけによって、各国内でも取り組みが誘発されていくことで、世界の変革につながっていくことが期待されます。

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古沢 広祐
古沢 広祐 (ふるさわ・こうゆう)

國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授。
大阪大学理学部(生物学科)卒業。京都大学大学院農学研究科博士課程(農林経済)研究指導認定、農学博士。
<研究分野・活動>:持続可能社会論、環境社会経済学、総合人間学。
地球環境問題に関連して永続可能な発展と社会経済的な転換について、生活様式(ライフスタイル)、持続可能な生産消費、世界の農業食料問題とグローバリゼーション、環境保全型有機農業、エコロジー運動、社会的経済・協同組合論、NGO・NPO論などについて研究。
著書に、『みんな幸せってどんな世界』ほんの木、『食べるってどんなこと?』平凡社、『地球文明ビジョン』日本放送出版協会、『共生時代の食と農』家の光協会など。
共著に『共存学1, 2, 3, 4』弘文堂、『共生社会Ⅰ、Ⅱ』農林統計協会、『ギガトン・ギャップ:気候変動と国際交渉』オルタナ、『持続可能な生活をデザインする』明石書店など。
(特活)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)理事、市民セクター政策機構理事など。
http://www.econorium.jp/fur/kaleido.html

https://www.facebook.com/koyu.furusawa

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