第18回:アディダスのスニーカーがバカ売れしたわけ(上)
なぜプラスチックは急に世界的な問題になったのか?
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こんにちは、サステナブルビジネス・プロデューサーの足立です。またまた久しぶりの記事となってしまい、もう今年も最後です。なので今回は、今年話題になった問題を取り上げたいと思います。
サステナビリティの分野では、SDGsやESGが相変わらず話題ですが、この一年で日本でも急に問題として意識されるようになったのはプラスチックではないでしょうか?
いつの間にか世界中でプラスチック製品、特に一度しか使わないようなプラスチック包装容器の使用を廃止する動きが高まり、今やプラスチック製のストローを使うのはとてつもなく悪いことになってしまいました。
環境省もあわててレジ袋を2020年から有料化すると言い出しましたが、実はこれは多くの国でもはやあたり前のこと。フランスやインドではすでに2016年から「禁止」になっているのです。
そして6月にカナダで開催されたG7では、日本とアメリカだけが海洋プラスチック憲章に署名せず、国内外の温度差を露呈させる結果となってしまいました。なんで今さらこんなにプラスチックが急にクローズアップされるのかと不思議に思う方もいらっしゃるのではないかと思います。
もちろんプラスチックなどの廃棄物は以前から大きな環境問題の一つでした。
欧州においては廃棄物問題と資源枯渇問題の両方に対応するために、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)が正式な経済成長戦略の一つとなり、2015年12月には「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」が採択されています。
この戦略のもと、これまでの緩いリサイクルではなく、物質の完全なリサイクルを行うべく、ビジネスのやり方まで変えようという動きがすでに始まっているのです。プラスチック問題について特に欧州の動きが早いのは、当然この政策と関係があります。
もう一つは、近年プラスチックの使用量が特に途上国において急増しており、廃棄されるプラスチックも同様に途上国で特に増えていることが注目されるようになったことが挙げられます。
このままでいけば問題はさらに深刻化し、2050年にはなんと、海の中の魚の重量をプラスチック廃棄物の重量が超えてしまうという驚くべき予測まであります。
そしておそらく、もっとも人々の心を動かしたのは、海の中に溢れるプラスチック廃棄物を食べて死んだクジラや海鳥の写真、そしてプラスチックが身体にからまってしまった動物たちの悲惨な姿でしょう。こうした写真や映像がインターネット上で次々にシェアされ、このままではいけないと、人々の気持ちに火をつけたのです。
特に有名なのはウミガメの鼻腔に詰まったストローを科学者が取り出す映像で、3300万回以上も視聴されています。痛そうにしているウミガメは本当に気の毒で、とても見ていられません。こうした映像を見た人々が、ストローなんて要らないと言うのは容易に理解できます。
そんなわけで、今や多くのレストランチェーン、ホテルチェーン、そして航空会社までもがプラスチック製のストローやマドラーの使用を止めることを宣言しています。最近では、日本のレストランやホテルも追随していますね。
しかしもちろん、それだけでは問題は解決しません。なぜならストローは、海に流れ着くプラスチックのごくごく一部でしかないからです。
もっと大量の廃棄物をどうするのか。そもそもプラスチックをこのように使用し続けていいのか? もちろんプラスチックの使用がどうしても必要な場面もあるでしょうから、それらが海洋に流れ出さないようにしっかりと回収したり、また原料としても再生プラスチックだけを使うことを宣言する企業も増えています。
アディダスもそんな企業の一つで、製品の原料の約50%がプラスチック(ポリエステル)であることから、2024年までに未使用のプラスチックを原料にすることを止めると宣言しました。
しかし、今回お話しをしたいのは、その取り組みではありません。アディダスが海洋保全活動を行うNGOパーレイ(Parley for the Oceans)とコラボレーションして作ったスニーカーUltraBOOSTのことです。
adidas x Parley – From threat into thread(日本語字幕もあります)