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サステナブル・ブランドの作り方

第13回:廃棄されたネットが生みだす新たな価値 (下)

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SB-J コラムニスト・足立 直樹

海の厄介者がもたらしたものは?

Photo : Will van Wingerden


前半「20年前に実現していたサーキュラーエコノミー」はこちらから

海に捨てられたり、流れついたプラスチックが、いま世界的に非常に大きな問題になっていることをご存知でしょうか。海洋プラスチックと呼ばれるこのゴミは、なんと毎年880万トンにも達し、それが原因で10万匹以上のウミガメや海洋哺乳類、そして100万匹以上の海洋生物が被害を受けていると推定されています。

海洋プラスチックと言っても、その中味はペットボトル、レジ袋、製品に含まれるマイクロビーズなどさまざまです。ゴーストネットと呼ばれる、流されたり、捨てられたりした漁網は特に大きな問題です。漁網は耐久性のあるナイロンで作られることが多いので、いつまでたっても腐ることはなく、大型の魚や哺乳類、海鳥などにからみ、死をもたらしてしまうのです。

しかしよく考えてみれば、この厄介なゴミはナイロンです。だったらこれを回収すれば、カーペットの原料にできるとインターフェイスは考えたのです。そしてフィリピンのいくつかの漁村のコミュニティで、ロンドン動物学会(ZSL)と協力して、ネット・ワークス(Net-Works)というプロジェクトを開始しました。

なぜフィリピンの漁村なのでしょうか。それは、そこには廃棄された漁網がたくさんあって問題になっていると同時に、回収された漁網を買取ることでコミュニティに新たな収入源をもたらすことができるからです。

詳しくはこの映像をご覧ください。

CSVやSDGsという言葉こそ使っていませんが、社会の問題を解決しながら、地元コミュニティにも、インターフェイスにも新しい価値をもたらしたのです。慈善事業ではなく、ソーシャル・ビジネスを作ったのです。

インターフェイスは、ここで集められたナイロンを原料にしてネット・エフェクトと名付けた新しいコレクションを作りました。それは海をモチーフにしており、まるで海の水面をそのまま床に映し出したような、大変に美しいカーペットです。海辺に打ち寄せるさざ波を、そして大洋に広がる無限の水面の模様を、海の中に廃棄されて厄介者だった漁網が創り出したのです。

ネット・エフェクトというこの商品名にはおそらく、漁網(フィッシングネット)が作り出す影響(エフェクト)という意味に加えて、自分たちはビジネスがもたらす環境影響をなくすだけでなく、環境に正味(ネット)で良い影響をもたらすことができるようになったという、インターフェイスの思いが込められているように思います。

20年前にサーキュラーエコノミーを実現したインターフェイスは、さらにその先を歩み始めたようです。


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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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