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サステナブル・ブランドの作り方

第13回:廃棄されたネットが生みだす新たな価値 (上)

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SB-J コラムニスト・足立 直樹

20年前に実現していたサーキュラーエコノミー

Photo : Will van Wingerden


こんにちは、サステナブルビジネス・プロデューサーの足立です。最近、サーキュラーエコノミーという言葉をよく聞きませんか。これはEUの新しい環境と経済の政策で、直訳すれば「循環する経済」です。しかしサーキュラーエコノミーは、日本で言うところの「循環型経済」とは本質的に異なります。

なぜなら、日本でいう循環型経済はリサイクルを増やして廃棄物をなるべく減らしましょう程度の意味で、欧州から言わせればそれではまだリニアーエコノミー(直線的なエコノミー)でしかないのです。

一方で欧州のサーキュラーエコノミーでは、たとえば使用済みの車が再び新しい車の原料となるように、実質的に新しい原材料を投入することはしなくて済むようなことを目指しているのです。あるモノが再び同じモノに生まれ変わるので、それはサーキュラーだというわけです。

そんなことが本当にできるのかと思われるかもしれませんが、実はもう20年も前にそれを実現した会社があります。世界最大のタイルカーペットメーカーのインターフェイスです。創業者であるレイ・アンダーソンは、化学繊維でつくった自社のカーペットが売れれば売れるほど資源消費と廃棄物が増えることに胸を痛めていました。自分が地球の略奪者であることに気がついたからです。1994年のことでした。

レイは、ポール・ホーケンが書いた『Ecology of Commerce』(ビジネスのエコロジー)という本に触発され、環境負荷ゼロを目指して、ビジネスモデルの変革を始めたのです。その中心的なアイディアが、古いタイルを回収し、新たな製品の原料としてリサイクルするということでした。古いカーペットが新しいカーペットの原料になるという、まさにサーキュラーエコノミーです。

ここでちょっと個人的な昔話をさせていただくと、その頃私は生態学(エコロジー)の研究者として、マレーシアで熱帯林の調査をしていました。アメリカに住む知人が、「こんな本が出ているけど知っているか」とお土産代わりに持ってきてくれたのがまさにその本でした。

早速読んでみると、なるほど生態系の仕組みはビジネスの世界にも応用できそうだなと驚いたことを今でも覚えています。なにしろ当時の私は生きものだけを相手にしていて、ビジネスの世界にはまったく無関係、無関心だったのです。考えてみれば、私が企業経営のお手伝いをするようになるきっかけとなった、私自身にも転機をもたらす本だったのかもしれません。

その後しばらくしてから、レイ・アンダーソンはこの本をきっかけに実際にビジネスそのものを変革したことを知り、より大きな衝撃と、ビジネスと地球の未来への希望を感じました。

レイ・アンダーソンはサステナビリティの世界では有名人です。きっとどこかで直接話を聞けるだろうと思っていたのですが、残念ながらそのような機会が来ることはなく、2011年に他界されてしまいました。そしてその後は、偉大なリーダーを失ったためか、インターフェイスの話もあまり聞くことがなくなり、残念に感じていました。

ところがです、先日バンコクでCSRの国際会議に出席した際に思いがけないことが起きました。インターフェイス・アジアの代表の方から、最近の取り組みとして、非常にインターフェイスらしいプロジェクトの話を聞くことができたのです。それは、自社の環境負荷だけではなく、いま社会が直面している大きな環境問題をなくすという壮大な試みでした。

続き「海の厄介者がもたらしたものは?」はこちらです。


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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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