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欧米企業はなぜサプライヤー公開するのか

SB-J コラムニスト・下田屋 毅

サプライヤー開示のトレンドは今後、大手ブランドを中心に徐々に増加していくことが予想される


欧米のブランド企業でサプライヤー工場のリストを公開する動きが出てきている。これら企業は、なぜサプライヤーの公開を行うのだろうか。

実は1990年代後半、アパレル・ブランド企業では、発展途上国のサプライヤーでの強制労働、児童労働が発覚した。NGO・市民団体がこれを問題視し、2000年頃からこれらブランド企業に、製品を製造するすべての工場名と住所を公開するよう求めてきた経緯がある。

当初は、これらブランド企業は自主的であろうと、政府の規制であろうとサプライヤーの開示に強く反対していた。

しかし、欧米においてNGO・市民社会などの継続した活動や、地方自治体の購買方針の変更などもあり、サプライチェーンの透明性に対する要請やプレッシャーが高まってきた。そして、ブランド企業がサプライヤー工場を開示することが、デメリットよりもメリットがあることが分かってきたこともあり、現在のように公開するようになってきた。

サプライチェーンの透明化のメリット・デメリット

これらのメリットとしては、ブランド企業の透明性を示すことができる点が挙げられる。サプライヤーとの関係性や配慮に自信をもっていることを示すことができるのだ。

もちろんメディアやNGOがこれらリストのサプライヤー工場に赴き、法令順守の状況や労働環境などを確認することができてしまうこともあり、これらをデメリットとして捉える考え方もあるかもしれない。しかしブランド企業が現段階でサプライチェーンのすべての工場を完璧にチェックすることは難しいとされている。そこでメディアやNGO、労働機関にサプライヤーを公開することで、透明性を高め、責任の所在をはっきりさせるとともに、問題があればそれらをすぐに是正する姿勢を取っているのである。

デメリットとしてはこれらブランド企業の競合他社が、リストに掲載されているサプライヤーへ行き、製品調達を依頼できることがある。しかし、ブランド企業によっては公開しているサプライヤーとは関係が深く、工場の生産量のほぼすべてを調達している場合もあり、入り込むのは難しい場合が多い。

これらのブランド企業は、サプライヤーの公開においてもリーダーシップを発揮し、他企業へも良い影響を与えることを考えているが、これが大手ブランドとしての競争力に上積みとなり、企業責任の取り組みを進めることでさらにブランド力を向上させることができる。

現段階では、ブランド企業の情報開示は直接のサプライヤーである一次サプライヤーに限定されているが、公開はしていなくとも、実際にはブランド企業は一次サプライヤーだけでなく取引量の多い二次サプライヤーや、カントリーリスクが高い国のサプライヤーをより考慮して管理を行っている。

これらサプライヤー開示のトレンドは今後、最終製品を販売する大手ブランドを中心に徐々に増加していくことが予想される。そしてブランド企業が情報開示を行いサプライチェーンの透明性を高めることで、ブランド企業もより敏感に配慮することが必要となる。もしメディア、NGO、労働機関が、労働者の権利侵害が行われている工場を発見した場合には、ブランド企業が公開したリストからも特定することができ、それらサプライヤーの違反行為を、最終製品を販売するブランド企業の責任として改善を促すこともできるということである。

このように最近は、サプライヤー工場の違反行為が発見されてしまうことがリスクではなく、見つからないことのリスクを重視しているわけである。自社のサプライヤー管理を透明性を持って、イニシアティブなどを活用して取り組みを進めることは前提条件だが、違反行為が発見されたら、迅速に現状確認を行うとともに、真摯に改善に取り組みを行うことが現在のトレンドになってきている。

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下田屋 毅
下田屋 毅 (しもたや・たけし)

サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン代表理事。欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当CSR/サステナビリティ)。

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