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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

女性中心の経営を目指す米Frank&Eileen――B Corp認証で高得点の企業が描く未来

Frank&Eileen

米カリフォルニア発のシャツブランドFrank&Eileen(フランク・アンド・アイリーン)は2020年11月、サステナブルな「良い企業」の証である「B Corp」認証を米国のアパレル業界でパタゴニアにつぐ第2位の高得点で取得した。100%女性による経営を目指し女性主導のブランド構築を掲げるFrank&Eileenは、創業当初からのサステナブルな取り組みや女性支援を行っている。なぜ、あえてジェンダーの多様性ではなく、女性中心の経営を目指すのか、創業者のオードリー・マクローリン氏に聞いた。(島 恵美)

Audrey McLoghlin (オードリー・マクローリン)
Frank&Eileen創業者、CEO

2009年に女性用のボタンアップ(以前は男性のみ焦点を当てていたカテゴリー)のシャツを再発明しようとFrank&Eileenを設立。上質な素材に洗いをかけることで生まれる着心地の良さや、工学を学んでいたデザイナーならではの視点で人間の構造や動きを考察し生まれた独自の美シルエット、色柄のバリエーションの豊富さに定評があり、アイロンいらずで洗いざらしのまま着られる扱いやすさが新たな定番シャツとして話題に。Frank&Eileenのシャツはサザビーリーグが日本展開するスペシャリティストア、ロンハーマンでも取り扱われ人気がある。

コロナ禍を機にB Corpを取得

――御社は2020年11月にB Corp認証を取得したとのことですが、なぜコロナ禍のこの時期に取得したのですか。

ビジネスを発展させるにあたって、必要な資源がふたつあります。それは、時間と資金です。私たちがパンデミックの影響で突然のロックダウンに直面した際、時間という価値ある資源を潤沢に手に入れることができました。この時間という貴重な資源を使って何ができるのか、すぐさま戦略的に考えました。

まず2009年の創業からの10年間、私たちのビジネスがどのように成長したかを振り返りました。そのプロセスにおいて、過去10年間で行ってきたすべての「小さな決断」がB Corpとしての土台を築いてきたことに気が付いたのです。

「時間」という貴重な資源を活用する機会が与えられたことにより、時間のかかる認証プロセスに3月から着手し、11月にB Corp認証を取得することができました。

――結果、パタゴニアに次いで第2位という高スコアでB Corp認証を取得しました。

米国のアパレル業界において、誰もが認めるサステナビリティのリーダーであるパタゴニアに次いで、2番目に高いインパクトスコアを獲得することになるとは、想像もしていませんでした。また、米国における女性オーナーシップのファッションブランドのなかで最も高いスコアを獲得するなど、予想だにしていませんでした。

これらを達成できたことをとても誇らしく思います。そしてまた、サステナビリティの業界リーダーたちと共に、私たちの活動が認められたことを謙虚な気持ちで受け止めています。

私たちの取引先からもポジティブな反響を多く得ています。取引先は、創業以来変わらず10年以上お付き合いのある専門店のお客様がほとんどです。こうしたお客様から「女性オーナーかつ女性リーダーによるB Corp認証の商品を取り扱っている」ということにプライドを感じるというお言葉をいただいています。

Frank&Eileen

100%自社所有で長期的な成長に注力する

――B Corpの中心的なコンセプトに「ステークホルダー中心の経営」があり、一般的な株式会社にとっては認証取得のハードルの一つです。なぜ、御社は経営権を 100%自社所有とするのでしょうか。

100%自社所有とすることについては、私たちは「ザ・100クラブ」と呼んでいますが、アメリカのファッションブランドではとても珍しくなりつつあります。この長期的な経営戦略は、経営者が「利益と株主」ではなく、「商品とステークホルダー」に集中することを可能にします。

この経営戦略は、ブランドを育てることと、ビジネスを育てることに関して、今までの一般的な経営戦略とは根本的にまったく異なる経営哲学です。

第一に売上高の増加を維持することのみに集中しているわけではないので、長期的な目標や長期的なブランドの構築に注力することが可能になります。また、長期的な従業員の雇用に集中することも可能です。さらにサプライチェーンにおけるパートナー選びに念入りに時間をかけることも可能になります。

こういった哲学に共感できるパートナーをみつけ、10年以上もの間、同じサプライチェーンのパートナーシップを維持することにより、初期投資に対してより多くのリターンを享受することができます。

また、今回のパンデミック発生当初のような究極の不確定な環境下においては、リーダーが「ザ・100クラブ」に所属して、経営戦略が投資家たちによって課せられた短期的かつ数値的な目標を満たすためではなく、将来のビジョンのために用意されていると知ることは、従業員に安定と安心を与えるのです。

Frank&Eileen

女性オーナー/リーダーシップで長期的成長を目指す

――サステナビリティ課題のなかで御社は 特に女性中心の経営にフォーカスしています。なぜジェンダーの多様性ではなく、女性なのでしょうか。

教育と機会が与えられた女性たちが手にする可能性は計り知れません。それは疑いの余地のないことです。彼女たちは、より健全な家庭、会社、そして経済を創ることが可能になるのです。

女性たちは世界を変えています。しかしながら、リーダーシップにおける真の意味での公平な状態に到達するためには、さらに多くの女性リーダーが必要なのです。

以下のハーバード・ビジネス・レビューに掲載の調査結果からもわかる通り、業界を問わず、女性リーダーが増えることがとても重要な理由はたくさんあります。

1. 危機に直面した場合においては女性リーダーの方がリーダーとして優れている
2. 女性リーダーの方が、男性リーダーに比べて、より高いリーダーシップスキルのスコアを獲得している
3. 従業員のエンゲージメントレベルはリーダーが女性の場合の方が著しく高い
4. Fortune 500社のCEOのうち4.9%が女性、S&P 500社のCEOでは僅か2%が女性である

Frank&Eileen創業前の元エンジニアとしての経験でいうと、上記1と3の理由から、女性によるリーダーシップはより効率的だと考えています。

しかしながら、ファッション業界に関していうと、ニューヨークのFIT(Fashion Institute of Technology:ファッション工科大学)のような有名ファッションスクールに通う学生の85%は女性であるにも関わらず、残念ながらこの数字はファッションブランドのオーナーシップもしくはリーダーシップに反映されていません。実際のところ、100%女性のオーナーシップおよびリーダーシップを保有しているファッションブランドは非常に少ないのです。

そのようななかで、Frank&Eileenは正真正銘の女性オーナーシップと女性リーダーシップを誇るブランドです。私たちはこの100%女性オーナー/リーダーシップであることにこだわり、EILEEN FISHER、SPANX、LUNYAといった他の素晴らしい100%女性オーナーシップのブランドと力を合わせてその特別な証(「100% woman-owned & woman-led」という認証)を世に広めることをミッションとしています。

Frank&Eileen

女性が成功するためには「女性リーダーのサポート」が大切

――逆に 100%経営権、女性中心とすることでデメリットはないのでしょうか

一言で答えるとNOです。

会社を成長させるには、ふたつの選択肢しかありません。第一の選択肢は短期間に成長させること。もうひとつの選択肢は収益を出しながら成長させること。

もしも第一の選択肢を選ぶのであれば、一部のオーナーシップと引き換えに、ベンチャーキャピタル、もしくはプライベートエクイティ投資など、外部からの投資を受け入れるしか道はありません。

もしも後者を選ぶのであれば、100%オーナーシップを維持したまま、持続可能なペースで商品とステークホルダーに集中して成長させることが可能です。この場合、オーナーシップと引き換えに外部の資金を投入して短期間で成長させる前者の選択肢に比べ、より時間をかけて成長させることになります。

女性リーダーシップの唯一のデメリットとしては、(社会全体で)女性リーダーの全体数が少ないという点が挙げられます。男性の場合ですと、他の男性リーダーが別の男性の成功を助けることが可能です。これは米国では「ボーイズ・クラブ」と呼ばれています。何十年ものあいだ、男性があらゆる業界で成功するために用いられてきた効果的なシステムと言えるでしょう。女性が成功するためにも、同じように女性リーダーが他の女性たちをサポートすることが非常に重要です。

次の課題は世界中の女性リーダーたちの育成と支援

――今後女性のエンパワーメントに向けてどのような取り組みをされる予定ですか。

ビジネスの基礎を築くことに専念した最初の10年を迎えた節目で、次の10年でどのような会社になりたいか、そしてまた私たちが望む社会的変化を起こすためにどのようなことができるのか、自分たちに問いかけました。

私たちは100%女性によるリーダーシップチームを築くことに成功していました。こうした経験を生かし、ポジティブな変化を起こすために必要な世界中の女性リーダーたちの育成と支援について何かできることがあると感じています。

2020年12月には、未来の女性リーダーたちを育成するために、「今後10年間で1000万ドル(約10億円)の寄付を約束する」というGiving Pledgeプログラムを立ち上げました。

Giving Pledgeではノーベル平和賞最年少受賞者であるマララ・ユスフザイさんが立ち上げた世界中の少女たちの教育支援を行う「マララ財団」への寄付を開始しました。継続的な支援により、未来の女性リーダーたちを育成する支援活動を続けたいと思っています。

また、私が個人的に情熱を感じている取り組みでもある女性の起業サポートも将来的に行いたいと思っています。Giving Pledgeの次のパートナーシップについては現在精査中です。

今後はサステナビリティにおけるイニシアティブを発揮して、私たちのブランドならではのサステナビリティをクリエイティブに発信・提供していく予定です。

Frank&Eileen

島 恵美 (しま・えみ)
ESGビジネスライター。IT企業でサステナビリティ担当を15年経験。企業の内側から環境・社会(CSR)・コーポレートガバナンスの社内変革・体制構築を一通り経験。企業の立場から実効性のあるESGについて考えています。モットーは「明日、ビジネスに役立つヒント」をお届けすること。2017年から2年間パリで生活。2児を子育て中のワーキングマザー。

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