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西アフリカ

アフリカの農家に天気予報を携帯へ発信、収入8割増

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携帯電話で天気予報をチェックする農民 (C)Ignitia

スウェーデンのハイテク企業、イグニシアが、西アフリカ5か国の農民8万人以上に、天気予報を携帯電話で提供している。これにより農家は降雨日が分かるので、農作業の日程を調整できる。情報提供料金は農家1軒の売上高の1-2%で済むという。従来より精度の高い、確率84%の予報により、農家の収入は以前の8割増しになった。

イグニシアは2010年に、物理学と気象学の研究者でチームを組み、熱帯地方の天気予報プログラムの開発に着手した。熱帯地方の天候のパターンはそれほど多くないが、突然嵐が来ることがあり、1週間の詳しい予報をするのは難しい。

既存の天気予報モデルによる確率は39%と低かった。イグニシアは2013年にガーナの農民3400人に試験的に毎日、毎月、毎季節の予報を提供し、好結果を得た。そこで2014年からガーナの電話会社と提携し、1日おきに契約者の携帯電話に天気予報を送っている。

GPSで携帯電話の位置を確認し、その場所に合わせた予報を送る。スマホを持っていない農家でも受信できるよう、電話番号でテキストをやり取りできるショートメッセージサービス(SMS)で発信する。1日の料金は0,04ドル(約4円)でプリペイドカードで支払う。農家の売上高の1-2%で2015年は8万人が契約した。

2016年は、契約者がマリ、ナイジェリア、セネガル、ブルキナファソまで広がった。予報の確率は84%と高い。天気を予測することができれば種まきや収穫の計画を立てることができる。また、天候被害による収穫減が避けられる。予報により、ガーナの農家の収入は8割増しになった。

プロジェクト・マネージャーのリジー・メリルさんは「西アフリカ用に開発しましたが、北回帰線と南回帰線の中にある全地域で適用できます。今後は、アジアや南アメリカにも広げていきたい」と話す。

次の研究は、より精度の高い嵐の予測だ。アフリカの熱帯地方では、規模は小さいが嵐が頻繁に起き、豪雨を伴うこともある。イグニシアは人工知能を使って、当該地方の過去14年間の嵐の記録をもとに、これから来る嵐を予測する。それにより、自然災害の被害をより減らすことができるという。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。