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フランス

フランスで「エコ・リノベーション」が急拡大

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(C)Agence Parisienne du Climat

フランスで、古いマンションを低エネルギー消費の建物に改修する「エコ・リノベーション」が急速に進んでいる。パリ15区にある1967年建造の高層マンションでは、この改修によって一戸あたりのエネルギー消費量が67%削減する。このほか現在、パリ市の後押しによって700の民間マンションの管理組合で改修計画が進んでいる。

ユネスコ本部に近いパリ15区では、1960-70年代に高層住宅が増えた。その一つのゲスクラン通りにある民間マンションが、低エネルギー消費建物に生まれ変わるモデルケースとして注目を浴びている。

パリでエコ・リノベーションを主導するのはパリ市の支援で生まれたNPO「パリ気候事務所(APC)」。パリでは建物がエネルギー消費の35%、温室効果ガス排出の12%を占めている。

改修が急務だが、管理組合内部の話し合いと決議がなければ始まらず、発案から工事終了まで4-5年必要だ。また多額の費用がかかるため、予算や施工業者の選択に慎重にならざるを得ない。そこでAPCは、管理組合の相談に無料で応じ、改修のプロセス、業者の選び方、助成金の申請、資金調達などについて助言し、計画実現まで指導している。

これを受け700の管理組合が改修に向けて動き始めた。建物には住居だけでなくテナントも入っているので、4万7千世帯と120社がエコ・リノベーションに向かっていることになる。700のうち100の組合が改修を決議し、工事計画に取り組んでいる。

15区のマンションには105世帯が入居。エネルギー消費だけで管理費が年間65万ユーロ(約787万円)にも上っていたが、改修後は54%削減できる。エコ・リノベーションを決める管理組合の総会には組合員の9割が出席し、満場一致で賛成した。一戸あたりの負担は2万ユーロ(約242万円)。低収入者には国の援助がある。

実際の工事では、外壁を25センチ厚くして断熱にし、窓を替え、暖房の熱が逃げないようにすると同時に、室内に湿気がこもらないよう内部の空調設備を改良した。建物の様式を尊重しつつ、より美しい外装することも重視した。今秋改修が終了する予定だ。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。