サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

タイと日本の共通点から「リジェネレーション」を再考する

  • Twitter
  • Facebook

SB国際会議2024東京・丸の内

Day1 プレナリー

足立直樹・SB国際会議サステナビリティ・プロデューサー
シリクン ヌイ ローカイクン・SBタイ カントリー・ディレクター

仏教が広く伝わるタイや日本の人たちにとっての「リジェネレーション」とは――。サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内、初日のオープニングではサステナブル・ブランド タイの責任者を務めるシリクン ヌイ ローカイクン氏とサステナブル・ブランド国際会議サステナビリティ・プロデューサーの足立直樹氏による「アジアのリジェネレーション」と題した対談セッションが行われ、今年の会議のテーマである「リジェネレイティング・ローカル」について、タイと日本の文化・背景を踏まえて議論した。

足立氏はこれまでに数度、タイでのサステナブル・ブランド国際会議に参加してきた。2018年のカンファレンスは屋外で開催され、企業からの参加者のみならず地域の人も参加し、交流する形で行われたという。

ローカイクン氏はその思いについて「サステナビリティ(持続可能性)やリジェネレーション(再生)を本当に実現したいのであれば、地域経済がとても重要であり、地域コミュニティを巻き込んでいく必要があります。そのため、大きな会議室でカンファレンスを開催するよりもローカルで開催することが重要と考えました」と語った。

サステナブル・ブランドの海外支部として、日本よりも早い2014年に立ち上がったのが、ローカイクン氏が率いるサステナブル・ブランド タイ。2023年には、「食と未来」をテーマにサステナブル・ブランド国際会議を実施し、首都バンコクでの講演・セミナーのほか、地方のチャンタブリー県に移動して環境再生型農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)の現場を訪ねるワークショップなどを行ったという。

2023年のSB国際会議タイで、地方のチャンブリー県で行われたフィールドワークに参加するローカイクン氏

ローカイクン氏は、リジェネレーションの重要性を実感したのは新型コロナウイルス感染症の拡大がきっかけだったと振り返った。

「コロナ禍でローカルビジネスが影響を受けるのを目の当たりにし、グローバリゼーションだけではいけないと気づきました。より良い未来をつくるにはまず回復させることが必要です。これまでと同じことをしていてはいけません。サステナビリティは現状を維持するという考え方です。一方、リジェネレーションのキーワードは回復。失ったものを取り戻すということです。そしてリジェネレーションの実践においてまず重要なのは経済や壊れたシステムを治癒(heal)することです。だからこそリジェネレーションが重要だと思うのです」

では、大手企業がリジェネレーションに取り組む場合は、まず何に着手するべきか。

「大企業が変化を起こすのはとても難しいですが、それでも変化は必要です。自然資源には限界があり、どう自然資源を使うのかを考え直さなければなりません。企業が成長を望むのであれば、社会や自然も同時に成長できるようにすることが必要です。そのためにはパーパスを再考し、自社の事業が存在する意義を見つける必要があります。事業を続けるために、新しいビジネスモデルを適応し、自分自身を改革しなければなりません。すべての会社、一人一人が自分自身をリジェネレートすることが必要です。そうしなければ生き残ることはできません」

社会の回復や治癒の観点で日本が取り組んできたことを世界に伝えて

ローカイクン氏は、長らく自然と密接に生き、仏教が広く伝わるタイや日本の人にとっては「リジェネレーション」は決して新しい考え方ではないという。

「リジェネレーションは新しい言葉で、新しい測定方法ですが、新しい概念ではありません。日本の皆さんは上手くやれるでしょう。日本のような国はより深い考え方を持っているからです。里山という言葉がありますよね。森林を守り、自然と共存するという考え方があります。皆さんはそうした慣習に誇りを持ち、社会の回復や治癒という観点において日本が取り組んできたことを世界に伝えてください。そうすれば、世界の人たちも日本にそれを学びに来ると思います」

生物多様性の専門家である足立氏は、「2010年に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が日本で開かれたとき、自然と共生するという意味の“Living in harmony with nature"という言葉が使われました。最初は受け入れられませんでした。自然は支配するもの、利用するものと考えられていたからです。でも今では世界の目標になっています。もしかしたら、私たちアジアの共通の考え方であり、これからさらに提言できることなのかもしれません」と答えた。

最後に、ローカイクン氏は持参した魚をモチーフにした黒色の洗練されたショルダーバッグを見せながら、参加者にエールを送った。

「これはタイのローカルブランドのものです。私がこのバッグを持っているのは、おしゃれだからではありません。これはタイの小さな職人グループがつくったものです。彼らは事業を成長させ、村の人たちにお金を提供したいと思っています。ブランディングこそが彼らを支える役割を果たすと思うのです。私はこのタイを代表するバッグを持ち歩いています。それは誇りに思っているからです。皆さんもそうあるべきです。これは日本の一村一品運動の考え方です。タイのあらゆる人たちが一村一品運動を学びに日本に来ています。ローカル経済の起源は皆さんにあるのです」(小松遥香)