サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

認証パーム油で「採用・雇用」の新基準義務化へ

  • Twitter
  • Facebook

「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)の新たな原則と基準(P&C)が11月に策定される。東京で2日に開かれた「パーム油グリーン購入研究会」で、労働・人権問題に取り組む国際NGO・VERITEのダリル・デルガド氏が語ったところによると、「採用・雇用」のプロセスにもデューデリジェンスが義務付けされる予定だ。このプロセスが正式に採用されると、日本企業のパーム油調達に今後大きな影響がでてくるとみられる。(オルタナ編集部=吉田広子)

グリーン購入ネットワーク(GPN/東京・中央)は10月2日、会員企業を対象に「パーム油グリーン購入研究会」を開催し、パーム油の問題と解決策などについて議論した。

アブラヤシから生産されるパーム油は、生産効率性が高く、世界で最も多く消費されている植物油脂だ。インスタント麺やスナック菓子といった食品、洗剤、化粧品などに幅広く利用されている。

だが、パーム油の生産には問題が山積みだ。特に労働者の人権侵害は深刻で、パスポートを取り上げられたり、法外な金額の借金を背負わされたり、強制労働、児童労働が横行したりしている。人身売買の温床になっている場合もある。

VERITEのダリル氏は、「遠い国の問題のように聞こえるかもしれないが、日本企業もパーム油を使っている。サプライチェーンの問題は当然、ブランドにも責任がある」と指摘。「大事なのはまず、パーム油の生産地を特定すること。産地が分かると、その地域における典型的な問題が明らかになる」と話した。

2018年11月にRSPOの新基準が策定される予定だが、労働タスクフォースに参加しているダリル氏は「採用・雇用のプロセスにもデューデリジェンスが義務付けられるようになる」と説明する。

続けて「給与の支払い方法も重要なポイントだ」と指摘する。例えば、クオータ制(ノルマ制)なのか、時給制なのか、最低賃金が保証されているか――などだ。

ダリル氏によると、クオータ制の場合、子どもを含めて一家総動員で労働に従事することが多いという。逆に、時給制で最低賃金が保証されていれば、労働者は安心して働くことができ、家族で働くプレッシャーがなくなる。

競合他社を超えた連携を

ダリル氏は、パートナー企業である食品メーカーの事例も紹介した。最も大きなリスクの要因を特定しようとしたところ、当時は外部のサプライヤーに依存しており、精油所もパーム油の生産に関してコントロールできていない状況だった。このリスクを特定後、改善に向けて精油所をどのように支援していけるかなどを話し合った。

ダリル氏は「自社だけで行動するのではなく、他社とも協働してほしい。ほとんどの企業は同じサプライヤーから購入していることが多い。業界全体が動くことで、サプライヤーにとっても改善するインセンティブが生まれる」と話した。

熱帯林行動ネットワークが事務局を担うNGOネットワーク「プランテーション・ウォッチ」は、パーム油の調達リスク診断10項目をウェブサイトで公開している。項目は次の通りだ。


【現時点での取り組み状況のリスク診断10項目】

□チェック項目1: 植物油を使った製品を扱っているが、その中にパーム油が含まれているかどうか把握していない。

□チェック項目2: パーム油製品を扱っていることは知っているが、サプライチェーンの状況は把握していない。

□チェック項目3: 原料に関する情報は、生産国のサプライヤーや政府から得ている。

□チェック項目4: サプライヤーが環境や人権に配慮した原料調達を進めることを期待している。

□チェック項目5: 投資家や株式市場において、パーム油に対してどのような関心が持たれているか、よく知らない。

□チェック項目6: パーム油を購入しているが、RSPOを知らない。

□チェック項目7: パーム油製品を扱っているが、パーム油に関する世界の動向は、あまり把握していない。

□チェック項目8: パーム油についての明確な調達方針は持っていない。

□チェック項目9: RSPOに基づくパーム油調達方針を既に持っている。

□チェック項目10: ブックアンドクレーム(B&C)でパーム油を購入しているので問題は無い。

吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。

「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。