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第33回:佃製作所に学ぶ!持続的な競争優位の源泉

SB-J コラムニスト・細田 悦弘

「さすが佃製作所!」「やっぱり佃品質」「下町ロケットは裏切らない」。TBS系列で放映された人気ドラマ・日曜劇場「下町ロケット」の佃製作所へのファンの声です。ここに、中小企業といえども大企業を凌駕する、持続的な競争優位の源泉があります。

佃製作所の真の強み(=コア・コンピタンス)とは

「下町ロケット」は、第145回直木三十五賞を受賞した池井戸潤氏の小説を、TBSの人気ドラマ枠「日曜劇場」で映像化した連ドラです。

宇宙科学開発機構の研究員だった主人公・佃航平が、父の経営していた中小企業「佃製作所」の社長となり、次々と危機に見舞われながら、社員たちと共に奮闘する姿が描かれています。横暴とも思えるやり方で迫ってくる大企業に、中小企業が夢とプライドにかけて立ち向かい、ビジネスのあるべき姿を実現するといったシーンが視聴者の胸を熱くします。

佃製作所は、大企業に比べ企業規模の小ささや人材不足から、原材料調達、販売・マーケティング、財務(資金調達)面などでハンディがあるかもしれません。

しかしながら、今日では持続的な競争優位を保っています。佃製作所の真の強み(=コア・コンピタンス)は、バルブシステム製作に関する高い技術力と生産体制もさることながら、社長の経営者としての信念と強いリーダーシップ、そして「経営理念」が浸透した組織風土といえます。

「ロケット品質・佃プライド/技術・誠実・世界品質」

ドラマの中で語られた、佃製作所の製品の素晴らしさの表現に「バリひとつ無い」という言葉があります。バリとは、素材を加工する際に発生する突起です。まさに、ものづくりの現場において、世界でもトップクラスといわれる日本の技術者たちの矜持を表す言葉であり、こだわりの「ロケット品質」です。

そして、「正義は、我にあり!」という、阿部寛さん演じる佃社長が熱く発した信念と誇りに満ちたセリフです。この一言が「佃プライド」を象徴しています。1ミクロンでも前に進もうという佃製作所の社員たちの姿勢は、社長の信念や経営理念が浸透・共有された組織風土の結晶といえます。

経営資源というと、一般に「ヒト、モノ、カネ、情報」を指し、人材、工場設備、店舗のように、目に見える資産だけでなく、「経営理念」の社内での浸透度、社員や取引先を大事にする社風、社員の帰属意識(ロイヤルティ)やモチベーションなどの「見えざる資産」が、今の時代だからこそ威力を発揮します。理念を深く理解し、共鳴する社員は、「この会社で働いて良かった」「仕事を通じて社会の役に立てる」と思うようになります。

「経営理念」とは

経営理念とは、簡単に言えば「考え方」といえます。だから、どの会社にもあるはずです。では、なぜ佃製作所がこれほど光るのか?それは、その考え方が「信念」にまで昇華しており、社員にきちんと伝播・共感されているからです。

理念とは「強い想い」のことです。「理」は根本の考えであり、「念」は深く強く念じることが字義にあります。会社を経営する上での経営トップの強い想いが、「信念」にまで高まった哲学のことを「経営理念」といいます。その会社の「価値観」、「判断基準」、「道徳観」、「倫理観」を表すものです。いわば、「自分の会社は、何のために存在するのか」の表明となります。

したがって、今日のように、変化の激しい時代に本当に対応したければ、まず何のために自社は存在しているのかを、創業の精神に立ち返って吟味することが大切です。その上で、今後何のために会社を存続させたいのか、どんな会社へと変貌させたいのかを踏まえ、創業の精神を現代版に翻訳し、その趣旨が明瞭にわかる経営理念やコーポレート・メッセージを開発すべきでしょう。

「誠実」を掲げる真意

経営者の高い志が、熱い理念を生み、その理念が社員にやる気を起させる社風を創る。優れた理念は、それを読むだけで、何のためにその会社が創業されたのか、また何のためにその事業がなされているのがわかり、魅力的な言葉となっています。

何の変哲もないシンプルな言葉ですが、経営理念は会社にとっての命ともいえるものです。社員はもとより、お客様、株主、取引先、地域社会といった、自社を支えてくれている人たちへの珠玉のメッセージとなっています。

ですから、佃製作所が額縁に掲げる「誠実」こそは、ステークホルダーとの信頼関係づくりの鉄則であり、企業の持続可能な発展の王道といえます。現代においては、信用・信頼は「見えない資産」であり、企業競争力といえます。経営理念は、「いい会社(ステークホルダーから信頼され、支持される会社)」になるための根源的な考え方です。経営理念が社内で浸透(インターナル・ブランディング)すれば、企業行動全般で「自社らしさ」が発露し、社員の一挙手一投足にブランド力が醸し出されます。こうした組織風土こそが、持続的な競争優位の源泉といえます。

理念やあるべき姿を、時代にふさわしく実現する戦略メソッドが「CSRブランディング」です。

☆編集部から参考情報です。
来月、細田さんの「CSRブランディング研修」が開催されます。ご関心のある方は、以下より詳細をご覧下さい。

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細田 悦弘
細田 悦弘 (ほそだ・えつひろ)

中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 キヤノンマーケティングジャパン(株)入社後、営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において、豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

中央大学ビジネススクール 戦略経営アカデミー講師、一般社団法人日本能率協会 主任講師、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、経営品質協議会認定セルフアセッサー、 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト。社内外のブランド・CSRのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:CSR、ブランディング、コミュニケーション、メディア史
◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~ ) など。

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