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第2次トランプ政権下で、米国民が期待するのはパーパスを貫く企業のリーダーシップ

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Carol Cone
Image credit : Florian Pintar

2024年の米大統領選後、当社、米コンサルティング企業キャロル・コーン・オン・パーパスが行った最新調査を見てみると、一つだけ非常に明白なことがある。米国民は、2期目のトランプ政権下でも、重大な社会課題の解決に企業がリーダーシップを発揮することを期待しているということだ。

キャロル・コーン・オン・パーパスが2024年11月14〜18日に米調査会社ハリス・ポールと実施した調査は説得力のある内容だ。対象となった米国成人2092人のうち約半数の46%が、次期政権下で社会課題に取り組むにあたり、企業がより重要な役割を担うことを求めている。(翻訳・編集=小松はるか)

これはリベラル派だけの考えではない。内訳を見ると、民主党支持者が61%と最多だが、無党派層では45%、共和党支持者の3分の1が同意している。社会課題に関しては、企業が解決に取り組むことを期待する傾向が強く、人口構成では、民主党支持者(61%)、Z世代(58%)、ヒスパニック系(52%)、アフリカ系アメリカ人(51%)、都市住民(51%)の割合が高かった。

では、米国民は次の時代、企業にどんなことを具体的に期待しているのか――。われわれがそう尋ねると、企業への指令は明確だった。回答者の83%が「組織は従業員にとって最も重要な課題に重点を置くべき」と回答した。これは驚くことではない。従業員は企業の最も重要なステークホルダーだ。また組織の経済的エンジンであり、パーパスを日々実践する存在だ。

取り組みを期待する社会課題とは

回答者の82%は、企業に医療・雇用といった国全体が直面している主要課題に重点的に取り組むことを期待している。同じく82%が、企業に、地域社会に影響を及ぼす手頃な価格の住宅、質の高い教育といった地域課題に関心を持ち、資源を投じてほしいと考えている。また81%が、企業には地方の雇用や住宅、教育の課題への対策を特に強化する義務があると思うと回答した。

調査では、回答者に23の社会的課題(保守・リベラル寄りの課題)に優先順位をつけるよう求めた。社会課題には大きく分けて、健康・ウェルビーイング、家族・社会的支援、環境・サステナビリティ、教育・デジタルリテラシーなどの分野がある。

最も印象的だったのは、政治的な隔たりを超える明確な優先分野があることだ。実際、この政治的に緊迫した時代でも健康・ウェルビーイング、家族に関わる課題は私たちをつなぐ共通のものだ。

「健康・ウェルビーイング」は政党の垣根を超える最優先分野で、72%が心の健康のサポート、飢餓救済、病気の治癒・治療、高齢者のケア、健康的な食事といった課題を、最優先事項に位置付けた。こうした課題は、どの政党を支持するかにかかわらず、多くの人が共感する人間の基本的ニーズだ。

続いて、保育へのアクセス、軍人・退役軍人、父親・家族、社会的弱者の支援など「家族・社会的支援」に関する課題は、回答者の45%が挙げており、2番目に優先度が高い分野だった。

3番目は、私が「環境的な隔たり」と呼んでいるものだ。回答者の42%が環境とサステナビリティの問題を優先事項に挙げたが、環境保全、オーシャン・クリーンアップ、プラスチック削減、環境保全技術のイノベーションなどの環境問題への支持は、民主党支持者が56%、共和党支持者が29%で27%の隔たりがあった。

このことが多くの企業を不安定な立場に押しやっている。増加する気候非常事態や拡大するサステナビリティ規制に直面しながらも、企業はステークホルダーからの敏感な支持を維持し、断固たる行動(強力な行動)をとらなければならない。

4番目の最優先課題は質の高い教育とデジタルリテラシーだ。回答者の40%がこれらの問題に取り組むことを支持しており、支持する党派間の格差も少なかった。共和党支持者(44%)が民主党支持者(35%)を9%上回った。

今後について、私は楽観的でありプラグマティック(実際的)だ。これまでの35年以上のキャリアにおいて、とりわけ政府の重要なプログラムや部門が削減されることが予想されるなか、企業の社会的責任を果たすことを通じてパーパスを実践する企業が、これほどまでに重要だったことはない。今後、企業は取り組みにおいて戦略的かつ本物であることが求められる。簡単なことではないが、以下のことから始めてみてほしい。

1. コーポレート・バリュー(企業の中核をなす価値観)をもっと生かす
日々実践されているバリューを活用するということだ。バリューを生かして企業運営や従業員行動、社会的投資のための指針を示す。どれが最も重要かを決め、それに深く取り組む。バリューの理解・実践について、従業員と再考する時期ではないか、バリューが多すぎないか、単純化する必要があるのではないか、を自問する。

2. 社会的インパクトに関する公約と企業のコンピテンシー(行動特性)・成長計画を一致させる
バリューを実践することは、社会・環境的公約の長期的な見通しを示すことだ。私たちが対話してきた企業は、既存の取り組みに使っている言葉に注意を払いながら、政治的サイクル(周期)に左右されることなく主要な公約を貫くだろう。

3. 従業員にとって重要な問題に注力する
継続的に話を聞くための双方向のコミュニケーションを生み出し、計画の調整の必要性・領域を理解し、進捗を共有する。

4. 取り組みの的を絞る
大きな影響をもたらすためにより深く取り組むことだ。効果を生み出すために、従業員と企業の成長に最も重要なことに取り組むことで、社会的インパクトをもたらすリソース(資金、人、製品・サービス)を集中させる。整合しない取り組みは慎重に終わらせる。

5. 成果が良くても、そうでなくても、透明性を持って伝える(「プルーフ・ポイント:説得力のある証拠を伴った主張」を重視する)
ステークホルダーはあなたの会社のサステナビリティの取り組みについて知りたいと思っているが、現実以上によく見せることは必要ない。最も正直な語り手である従業員や事業に携わる人たちに、あなたの会社がもたらしているインパクトについて話してもらおう。

6. 言葉を大切にする
ESGやDEIといった避雷針のような言葉(攻撃や非難を受ける言葉)は、企業の社会や環境、ダイバーシティ・インクルージョン、帰属意識への深い関与を見えにくくする。用語は変えてもかまわないが、本物かつ成長志向の取り組みを続け、語り手や場所によって慎重に使い分ける。

信頼性とパーパスを持って導き、有意義なインパクトを生み出すためにリソースや影響力を投じる企業は、次期政権の任期中も生き残り、成長を遂げ、レジリエントであり続けるだろう。私たちの調査は、米国民がトランプ政権への準備ができていることを示している。実行するのは企業だ。

パーパスは党派に左右されるものではない。パーパスを掲げることは、より良い世界に貢献しながら、ステークホルダーのために価値を創造することだ。問題は、企業が社会課題に取り組むべきかどうかではない。中核となるパーパスやコーポレート・バリューに忠実であり続けながら、いかに最も効果的に取り組むかだ。

それこそが目の前にある課題でありチャンスだ。それを果たすために立ち上がろう。