ウォルマート、テック企業との連携で食品バリューチェーンを最適化へ
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米小売大手のウォルマートはこのほど、テック企業2社と新たに連携し、食品廃棄物のリサイクルと食品調達の効率化を進めている。(翻訳・編集=小松はるか)
デナリと提携し、食品廃棄物のリサイクルを向上させる
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ウォルマートはこのほど、食品廃棄物をなくすための新たな対策を発表した。全米最大手の有機物リサイクル業者デナリ(Denali)と連携し、全米の1000店舗以上のウォルマートと会員制スーパーのサムズクラブで、食品廃棄物のリサイクルをより効率化するために、食品から包装材(パッケージ)を分離するデナリのデパッケージング技術を実装する方針だ。
デナリのデパッケージング技術はプラスチックやボール紙などの包装材を食品から分離し、食品を動物の餌やコンポストにしたり、嫌気性消化装置を使ってエネルギーに変え、有機物をより清潔な形で循環させる。
デパッケージング技術を活用することで、手作業で包装材を外す工程をなくすことができる。食品廃棄物のリサイクル・再利用を簡単にし、小売業者の手間を省くことが可能になるのだ。ウォルマートはその新たなデパッケージング技術を、大規模に活用する最初の小売業者の1社だ。
デナリとの提携により、ウォルマートは従業員の業務効率を高めたい考えだ。初期の実証実験で、今回の事業はウォルマートやサムズクラブから回収される再利用可能な有機物を60%以上増やし、圧縮ごみを約12%削減した。
事業は現在、ダラスやヒューストン、インディアナポリス、フェニックス、フィラデルフィア、ワシントンDCのほか、コネチカット州やマサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州の複数都市を含む、全米の16以上の市場にある1400店を超えるウォルマートやサムズクラブで始まっており、2025年まで全国で展開される。
ウォルマートにとってこの取り組みは、2025年までに廃棄物ゼロを達成することを目指し、廃棄物管理の有効性・効率性を向上させる事業を通じて、業務廃棄物に対処する方法を示す実例の一つだ。
同社で施設サービスの責任者を務めるRJ・ゼインズ氏は、「人間が主導する形でテクノロジーを活用する企業として、ウォルマートは業務効率を高め、従業員体験を向上させ、廃棄物を減らすのに役立つイノベーションを推進することに力を入れています。デナリのデパッケージング技術は、年間数百万ポンド(数百〜数千トン)の食品廃棄物を価値ある製品に変えるのに役立ち、顧客へのサービスにさらに多くの時間を割けるようになります」と話す。
デナリは、デパッケージング技術を数千の食料雑貨店や食品製造業者、卸売業者、自治体に提供しており、それによってパートナー企業の食品廃棄物が埋立地へと運ばれるのを回避し、廃棄物をコンポストや有機肥料、家畜飼料、クリーンエネルギーなどの価値ある製品へとリサイクルしている。デナリのデパッケージング設備のネットワークがあれば、賞味期限切れの食品、リコールされた食品、生ごみ、腐った総菜やパン、農産物、さらに動物性食品や乾物、液体物など、最大97%の食品廃棄物を分別できる。
デナリは数年かけて複数の市場でプログラムを試験した後、2023年からアリゾナ州フェニックス市で全米規模のデパッケージング技術をサービス化して展開し始めた。フェニックス市では、イベントやスーパーボウルなどに関連する活動から発生した2000トンの食品廃棄物を再利用している。それ以来、デナリは埋立地に運ばれる食品廃棄物を処理して減らすためにフェニックス市や地元の小売業者を支援しており、年間45万トンを上回る食品廃棄物を有用な製品へとリサイクルしていると話す。
デナリのイリア・コストフ最高収益責任者(CRO)は、「当社のデパッケージング技術は、食品の製造業者、卸売業者、小売業者、さらにそれらの企業が事業を行う都市が、食品廃棄を減らす方法に革命を起こしています。サーキュラーエコノミーを実践しながら、ウォルマートやサムズクラブと協働して、食品廃棄物の大規模な削減に役立てることを誇りに思っています」と話した。
アグリタスクとの連携で、効率的な農作物調達を目指す
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デナリとの提携は、ウォルマートが農作物供給に関する情報・知見を提供するテック企業「アグリタスク(Agritask)」との戦略的パートナーシップを発表した直後に発表されたものだ。ウォルマートとアグリタスクは、ウォルマート・グローバル・テックのスパークベイト(Sparkubate)事業と連携し、調達管理者がチェリーやブラックベリーなどの旬の果物の収量に関する、より詳細な情報を得た上で決断できるよう、アグリタスクの技術ソリューションを試験している。目指すのは、供給を保証し、食品廃棄物を減らし、買い手に新鮮な食品を提供することだ。試験の結果が出るまでの間、ウォルマートは次の試験に向けて、アグリタスクが提供する対策や分析情報を大規模に活用する方法を検討する可能性もある。
試験では、ウォルマートのサプライヤーから届く旬のチェリーやブラックベリーに関する、リアルタイムかつ地域密着の分析情報を提供するために、アグリタスクのリモートセンシングとデータ分析ツールを米国やメキシコのさまざまな地域に配置する。チェリーやブラックベリーが選ばれたのは、成長や品質、輸送、保存可能期間に多大な影響を与える温度変化と水分量にとても敏感な作物だからだ。2社はリアルタイムモニタリングを活用することで、供給量をより適切に管理し、農産物の品質を向上させる環境条件とは逆の条件に速やかに対応できるようになるだろう。
アグリタスクが提供する分析情報には以下が含まれる。
・新たに発生したり、形成されるリスクに関する早期警告や、対象作物への潜在的な影響。例えば、チェリーの栽培に害を及ぼす予期せぬ寒気など。こうした情報があることで、ウォルマートは調達戦略を早急に適応させることができるようになる。
・収穫の時期、遅れ、早まりをリアルタイムで予想。これにより、ウォルマートは積極的に在庫量を管理し、代替の選択肢を検討することができる。
・栽培期間中には、収穫目標を達成できるよう最新情報を提供する。ウォルマートはサプライチェーンのロジスティックスを最適化し、顧客のために十分な製品を確保できるようになる。
ウォルマートで調達イノベーション・供給保証の責任者を務めるカイル・カーライル氏は、「データの不一致や環境の不確実性によって生じる、購買や農業計画の精度に関する課題への対処は難しいです。アグリタスクの技術は、生産量を予測する際に、調達管理者がたびたび直面する極めて重要な情報格差を埋める可能性を持っています」と話す。
「アグリタスクと協力することで、ウォルマートはより合理化された持続可能な調達方法を追求することができ、顧客の要求を満たす新鮮で高品質な製品を一貫して提供することができるのです」
アグリタスクのオフィール・アルドンCEOは、「アグリタスクの技術的解決策と、ウォルマートの世界的規模や持続可能なサプライチェーンを強化するという公約は、非常に相性が良いです。ウォルマートがアグリタスクの技術(イールド・インテリジェンス)を利用する小売業界で初めてのパートナーになったこと、企業とサプライヤーとが連携する方法を新しく生み出すために農業のサプライチェーンを最適化してきた15年間に構築してきたデータ駆動型イノベーションを採用することを嬉しく思います。私たちは共に、調達を根本から最適化し、拡張性を備え、気候変動に対応し、リスクに備えた解決策を実行する独自の役割を担っています」と話す。