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サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

進化する民泊仲介プラットフォーム 地域とつながり、社会的取り組みを支援できる宿を紹介

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JoAnna Haugen
Image credit : socialbnb

観光業が進化を続け、旅行者は観光がもたらす光と影を認識するようになった。宿泊施設を仲介するプラットフォームの在り方にも変化が生まれている。

Airbnbの誕生物語はスタートアップ・ドリームそのものだ。同社は2007年、サンフランシスコのアパートの家賃を稼ぐのに必死になっていた共同創業者のブライアン・チェスキー氏とジョー・ゲビア氏が旅行者に部屋の一画を貸し、朝食を提供することから始まった。(翻訳・編集=小松はるか)

ささいなアイデアだったが、それはやがて220以上の国・地域で展開される数十億ドル規模の会社へと成長した。しかしAirbnbは、一時は空いている寝室を貸したり、旅行者がローカルホストに出会うためのものだったものの、いまや住民にとっては住宅問題、行政にとっては法的・財政的問題、誠実な旅行者にとっては物議をかもす問題になっている。

公平を期すと、宿泊施設に関する騒動を起こしているのはAirbnbだけではない。VRBOVacasaなどのプラットフォームもまたバケーションレンタル市場の急拡大によって生じる問題の一因となっている。しかし、パリからダラス、カタルーニャからニューヨークにいたるまでさまざまな地域において、圧倒的な数の宿泊先、そして波及する負の影響を緩和しようとしている。なかには、持続可能で社会に良い影響をもたらすことができる、個別の滞在を優先する宿泊プラットフォームの提供に力を入れる企業もある。

ホームステイ先や民泊先を紹介するホームステイ・ドットコム(Homestay.com)の責任者イヴォンヌ・フィンレー氏は、「(当サイトでの)ホームステイ先の予約は、取り引きの始まりと終わりにホストと宿泊者の両方が携わり、空き部屋を借りるのとは異なります」と話す。同プラットフォームは2013年に設立され、170以上の国で3万7000を超えるホームステイの機会を提供してきた。ホームステイ・ドットコムを利用する最も一般的な旅行者は、学生や留学生、ワークプレイスメント(就業体験)旅行をする人たちで、ゲストの体験が企業サービスの中心になっている。

「多くのホストが宿泊者のために時間を使っています。地域を案内したり、アドバイスを伝えたり、地域になじめるように手助けし、滞在後にも連絡を取り続けることがあります」(フィンレー氏)

こうしたゲスト向けの体験や個人的な関わり合いは、旅行者にさまざまな選択肢を提供しようと取り組む多くの民泊仲介プラットフォームにとって最優先事項であり、団体旅行やマスツーリズムモデルから脱却しようとする過去数年の旅行トレンドも反映している。

アレックス・ハウフスシルド氏  Image credit : socialbnb

ドイツに拠点を置くソーシャルビーアンドビー(socialbnb)は、民泊を通じて世界各地の社会的・環境的プロジェクトを経済的に支援できる宿泊プラットフォームを運営する。socialbnb共同創業者のアレックス・ハウフスシルド氏は、「人がある場所を訪ねる場合、そこに滞在することだけに興味があるのではありません。人やコミュニティ、そして日常に関わり、理解することに関心があるのです」と話す。これは、近年のトレンドや旅行者がますます地域に還元したいと考えるようになっている現状を示している。

socialbnbでは45カ国360の社会的・環境的なプロジェクトを紹介している。各プロジェクトと連携する宿泊施設を予約した旅行者は経済的な支援を行うことができる。同社のポジティブなインパクトについては2022年のインパクト報告書にも記載されている。例えば、socialbnbを通じた宿泊により、タンザニアのチャム・アイランド・コーラル・パークの保全と環境教育プログラムに3570ドル(約55.9万円)が集まった。また、ドイツの宿泊施設Wampendobler Paradiesに宿泊することで、絶滅危機にある羊を、種に適した持続可能でオーガニックな飼育をするために341.70ドル(約5.4万円)が集まった。インドネシアでは、世界最大のプラスチック廃棄物のリサイクル事業を行うプロジェクト・ウイングに793.90ドル(約12.4万円)の支援が集まっている。

ゲストがsocialbnbプロジェクトや自らが支援する体験について学び、関わりを持つよう誘われることもよくある。これは旅を面白くし、宿泊によってプラスの影響が生まれることを実感させてくれる。

socialbnbが掲げるような透明性や審査プロセスは、多くの宿泊施設仲介サイトの理念の奥深くに組み込まれているものだ。これは、不透明さを貫く従来の予約プラットフォームとは異なるものだ。

例えば、フランスのGreenGoは、掲載する宿泊施設が環境・気候イニシアチブを優先していることを保証するために、広範な選定基準を設けている。同社は自らをBooking.comやAirbnbに代わる社会的責任を果たすプラットフォームだと称し、すべてのホストとコミュニケーションを取り、ホストは信頼の上に成り立っている関係を実証する認可書に署名しなければならない。同じく、オーストラリアのGreen Getawaysが掲載するのはサステナビリティの取り組みを積極的に取り入れ、公表する宿泊施設だ。さまざまな地域にある多くの施設にはリハビリテーションや環境管理のプログラムが含まれている。

ハウフスシルド氏は「まず、私たちは宿泊施設に的を絞りました。こうしたプロジェクトが何らかの形で所有しているリソースが宿泊施設だからです」と話す。例えば、socialbnbの誕生のきっかけとなったカンボジアの田舎の村には、地元に学校をつくるための資金調達の方法として、ホームステイ用の宿泊施設を建てる土地があった。

こうした社会的・環境的な予約プラットフォームは予約料の大半が旅先内にとどまり、旅行者のニーズが優先され、サービスを直接受けることができる。旅行者に宿泊先、特別な体験、意義のあるストーリーを提供することは目標達成のための手段でもある。例えば、socialbnbの場合、予約料金の85%を宿泊施設が関わるプロジェクトに直接寄付することができ、同社は15%を手数料として受け取る。

Earth Company Image credit : socialbnb

同じく、Fairbnbはフェアートレードやサーキュラーエコノミー、SDGsの理念から着想を得た協同組合だ。予約料金の50%がゲストの選んだ滞在先のコミュニティ事業に支払われる。残りは、地域コミュニティに観光収入が直接届くビジネスモデルに積極的に参加する合法的でサステナブルなホストに支払われる。

「これは観光産業の大きな問題です。観光収入はそれが支払われる地域にとどまりません。よくあることですが、多くの観光ビジネスは地元の人が行っていないため、観光収入が地域から出てしまいます」(ハウフスシルド氏)

このことはツーリズムが歴史的にどのように行われてきたかという実態を示している。Airbnbの創業者の2人は、空き部屋に滞在する人を想定してビジネスモデルを組み立ててきたのかもしれないが、今日、多くのAirbnbの利用者はホストと会うことも話すこともない。人間味を感じられない運営会社やグローバル企業は利益を生み出すビジネスモデルを採用しているが、旅先に利益を生み出すことはほとんどない。人々は家から遠く離れて旅をするにもかかわらず、その場所を特別にする人や文化、物語からは切り離されたままなのだ。

しかし、観光産業は進化し、観光産業がもたらすプラスとマイナスの影響に応じて人々の旅行の在り方も変化するなか、宿泊施設は意義のある方法で取り組むチャンスを手にしている。

ハウフスシルド氏は、「何人かの顧客と話した際、彼ら彼女らは『とても良かったです。自分が観光客だと感じることは全くなかったです。地域の一員であり、この人たちを訪ねている――どちらかというと友達のような感覚です』と言っていました。こうした気持ちになることがsocialbnbのコンセプトを非常に特別なものにしていると思います」と話す。