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個人投資家、投資ファンドや年金制度に積極的な気候変動対策を望む 世界10カ国調査

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Image credit: fauxels

カナダの調査会社グローブスキャンなどが、日本を含む10カ国・地域の約5000人の個人投資家を対象に行った調査によると、個人投資家は、投資ファンドが社会・環境に関するサステナビリティへの取り組みに、より一層積極的に関わることを支持している。(翻訳・編集=小松はるか)

調査レポート『人と地球は健全な投資先――気候変動、自然、経済的不平等に対する株主の見方』は、グローブスキャンが英シンクタンクのインフルエンスマップと共同で実施した。回答者らは、投資ファンドが政府に対して気候変動対策を促すことを特に強く支持している。次に期待されているのは、クリーンエネルギーを推進する企業に資金提供することだ。

2023年の夏に行われた調査は、10カ国・地域(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、シンガポール、米国、英国)に暮らし、株や債券を保有・投資をしている、または企業年金や政府の年金・退職給付制度に加入している約5000人のプロではない個人投資家を対象にしたものだ。気候変動や自然・野生動物の保護、経済的不平等の解決などの社会・環境問題が、個人投資家にとってどれほど重要かを測定した。

調査は、株を所有している(「株式や債券を自ら保有し、投資している」「ETF(上場投資信託)や投資信託を自ら保有し、投資している」「企業や政府の年金・退職制度に加入している」)と答えた個人投資家を対象に実施した。結果的に、10市場の個人投資家はそれぞれ等しく高い割合で、投資ファンドが気候変動分野にさらに積極的に取り組むことを支持していることが分かった。

・個人投資家の44%が政府に対して気候変動に取り組むよう働きかける投資ファンドを「強く支持する」、43%が「やや支持する」と回答した。

・10人中4人以上(42%)がよりクリーンなエネルギーを推進する企業に資金を提供する投資ファンドを「強く支持する」、47%は「やや支持する」と回答した。

・投資する企業に対して気候変動対策をとるよう積極的に促す投資ファンドを「強く支持する」と回答したのは39%、「やや支持する」と答えたのは48%。

・個人投資家の38%が気候変動に大きく関与している企業への投資を避ける投資ファンドを「強く支持する」とし、43%が「やや支持する」と答えた。

・投資ファンドが自然や野生動物に投資がもたらす影響について情報を提供することを38%が「強く支持する」、49%が「やや支持する」と回答。同じく、投資が経済的不平等にもたらす影響に関する情報について提供することを37%が「強く支持する」、50%が「やや支持する」と答えた。気候変動への影響に関する情報を提供することを30%が「強く支持する」、56%が「やや支持する」と回答した。

グローブスキャンのクリス・クルターCEOは、「世界中で非常に多くの資産を保有する個人投資家の望みや価値観、期待に対して十分な関心が寄せられていない。今回の調査は、アセットマネージャーに対し、投資家層への対応をより強化し、投資戦略をさらに低炭素でネイチャーポジティブ、インクルーシブなものへと転換するチャンスを示している」と話す。

「化石燃料産業に投融資をしない銀行同盟(Fossil Free Banking Alliance)」のような取り組みは、個人投資家が自身の価値観に、より近いファンドを選べるよう手助けするために生まれたものだ。一方、従業員は雇用者が管理する退職年金基金にあまり提案をしない傾向にある。

残念ながら、米国では多くの企業の401(k)プラン(米国の税制適格年金制度の一つ)は、バンガードなどの資産運用会社に委任される傾向にある。同社は気候変動への取り組みの不十分さから長らく環境活動家の監視下にあり、同社が対象にする退職年金基金は、CO2排出量の多い産業や、アマゾンやインドネシアの熱帯雨林で森林破壊に加担している企業に投じられている。CO2を多く排出する企業への投資は、短期投資のリターンを危険にさらす可能性があるだけでなく、若い社員の退職後の生活に多大なリスクをもたらす。

さらに、英シンクタンクのグローバル・キャノピーの調査によると、グラスゴー金融同盟(GFANZ)や国連が推進するRace to Zeroキャンペーンなどに参画している良心的な年金基金や年金提供者でさえも、森林破壊に対応する総合的な方針や誓約を公表していない。森林リスクが最も高い4商品による森林破壊は世界の温室効果ガス排出量の11%を占めており、これに取り組まずして効果的な気候変動対策は不可能だ。

インフルエンスマップのプログラム・マネージャーであるダーン・ヴァン・アッカー氏は、「グローブスキャンの調査は、資産運用会社や年金運用会社による意欲的な気候変動対策に対する個人投資家の要求を示している。これは、我々が把握している、世界最大手の資産運用会社45社が、グリーンな企業に対する投資額のおよそ3倍を化石燃料企業に投じているという事実と全く対照的だ。一方、被投資会社を意欲的に管理する運用会社の割合は、2021年以降ほぼ半減している」と話す。

「こうした資産運用会社は、持続可能な金融政策に対して多大な影響力を持ちながらも、持続可能な金融政策を支援することに取り組んでいない。米国でもEUでも同じだ。事実、我々が評価した資金運用会社の86%は、サステナブルファイナンス政策に戦略的に反対する業界団体のメンバーだ。これらのファンドマネージャーが個人投資家の期待に応えようとするなら、宣言と気候変動に関する野心的な行動とを一致させる時がきている」